Bounty Dog 【アグダード戦争】165-166

165

 リングはヒュウラを背負って、また壁を登った。今度の壁は屋敷の外壁なので、100階建てのビル並みに延々と登る必要は無い。が、ラドクリフ邸も個人の屋敷なのに5棟もあって各建物全て10階建てで、縦にも大きな屋敷だった。しかも天井も各階が割と高く作られていて、実際はビルに換算すると20階分程の高さがあった。
 足首が未だ痛い猫の亜人には、20階建ての家の頂上に登るのも結構辛い作業と化している。加えて、ヒュウラをおんぶしているので余計に足に負荷が掛かっていた。最上階にあるテラスの1つに辿り着くなり、壁登りに漸く解放された猫はウニャウニャ弱々しく鳴いて、ヒュウラをおんぶしたまま座り込んだ。
 半泣きになってぼやく。
「ニャー。足。足首から下、痛い。もげそう」
「痛い」
 ヒュウラも自分の足が痛いので反応した。金と赤の目で背中越しにリングの顔を見つめる。無言だったが己の事も心配してくれていると察したリングは、敵に気付かれないように小さくだが”大丈夫”と伝える明るい鳴き声を上げると、
 人間のような見た目をしている亜人種の猫と狼に向かって、真っ赤なレーザー光線が放たれてきた。

 此処にも何処かに生き物の侵入を感知するセンサーパネルが仕掛けられているらしい。真面に受けると身に穴が開く死の光線を、リングはヒュウラを背負ったまま、身を転がらせて回避した。レーザー光線は容赦なく、何発も何発も放たれる。
 ゴロゴロ床を回転しながら、猫はテラスの奥に向かって移動する。途中で突然床が消えると、猫は狼を背負ったまま、悲鳴を上げて穴に落ちた。

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