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グサリと刺さる「人生の短さについて」(セネカ著)を読んで

ただ忙しく過ごして考える余裕がない人、ついついスマホやネットサーフィンなどダラダラと時間を浪費してしまう人。そんな人(私含む)が読むとグサリと刺さる言葉が多かった1冊です。Kindl Unlimited会員でしたら無料で読めます。

人生を短くしているのは自分の生き方のせい

あっという間に年をとってしまった、時間が過ぎてしまったと思うことがあるかもしれません。そんな方にはセネカの言葉が刺さります。

人生は短くなどありません。与えられた時間の大半を、私たちが無駄遣いしているにすぎないのです。

セネカ. 人生の短さについて (P.7)

辛辣ぅ〜!!

でも振り返ってみるとダラダラと時間を浪費していることに気付かされます。続けてセネカは以下のように述べています。

人生は十分に長い。上手に使えさえすれば、偉業を成し遂げられるほどたっぷりと与えられているのです。

セネカ. 人生の短さについて (P.7)

そして今の生活を見直さない限り、時間はいくらあっても人生は短くなるのだとも訴えています。

人生は、たとえ千年あっても、実際ははるかに短くなるでしょう。時間などいくらあったところで、間違った生き方をすればすぐに使い果たしてしまうものなのです。理性の力を使えば引き延ばせるはずの持ち時間も、指の間からたちまちこぼれ落ちていかざるをえません。

セネカ. 人生の短さについて (p.29).

セネカが生きていた時代だと「飲み食い」や「性欲」に身を委ねることが人生を浪費する生き方だったようです。今の時代だとそれに加えて、SNSやネットサーフィンなどなども入るのでしょうね。

他人に自分の人生を使われていないか

周りからの頼まれごとや雑務、はたまた依存されてしまい自分の人生を他人に利用されていないでしょうか。セネカはそんなことにも容赦なくツッコミます。

けれども自分で自分のために闘う人は、一人として見当たらない。だれもが他人のためにエネルギーを無駄にしているのです。

人生の短さについて P.12

助けてくれとあなたを呼び出す人間に、あなたは自分を持ち去れられているのですよ。

人生の短さについて P.35

個人的には以下の言葉がさらに刺さりました。

自分が尽くしたことに対して、相手からありがたがられて当然だなどと考えるのは、おかしいのです。なぜなら、あなたが尽くしたのは、その人と一緒にいたいからではなく、自分自身と向き合いたくないからだったのではありませんか

P.15

例えば自分のやりたいことが明確ではなく、他人の手伝いをしながら自分のやりがいにしよう…みたいな。それでいて感謝されないと感情的になってしまう…みたいな。自分と向き合いたくないから他人に尽くすという鋭い洞察を突きつけられたのです。

先のことばかり考えて今を疎かにしていないか

確かに不確定な世の中だからこそ将来の心配をしてしまうのは分かります。しかしながら、まだ来てもいない未来のことばかりを考え過ぎて「今」この瞬間の人生を疎かにしていないでしょうか。

セネカは「未来」よりも「今」の大切さを訴えています。

よく、「五十歳を過ぎたら仕事をやめよう」とか「六十歳になったら公務から解放されるだろう」などと言う人がいますが、長生きするという保証が、いったいどこにあるのでしょう?いったいだれが思いどおりに余生を過ごさせてもらえるでしょう?

P.20

先日、70歳を過ぎた女性がこんなことを言っていました。

「旦那が仕事を辞めたら二人で旅行に行ったり、温泉に入ったりする余生を考えていた。でも旦那は病気になり2日おきに人工透析を受けなくてはいけなくなり、旅行どころではなくなってしまった。」

この方のお話を聞くとセネカの「今」の大切さを主張が身に染みます。

確かに明るに未来を生きたい。しかし、そのために「今」を犠牲にしていないでしょうか。そんな自分を見つめ直すきっかけとなるセネカの言葉を引用します。

そういう人間は、将来、よりよく生きられるようになるにはどうすればいいかと、寸暇を惜しんで考えているうちに、結局、生きるための準備だけで人生を使い果たしてしまうのです

セネカ. 人生の短さについて (p.43).

生きるのを最も妨げているのは、明日をよすがとしながら今日を台無しにしている、この期待というものなのですよ。

セネカ. 人生の短さについて (p.43).

忙しさはいいことか・忙しさが言い訳になっていないか

のめり込むものがなかった私にとって、忙しそうに働きスケジュールが詰まっている人に憧れていました。しかし、本当に忙しいことはいいことなのでしょうか。もしかしたら「忙しく使われている」だけかもしれません。

多忙に過ごしている人間は、頭の中身が成長しないまま、何の覚悟も準備も整わぬうちに、老齢に不意打ちを食らわされます。なぜなら、彼らにとって年老いるのは思いもよらぬことだからです。

セネカ. 人生の短さについて (Japanese Edition) (p.47). Kindle 版.

しかし、雑事に忙殺される人間はその過去を失っています。なぜなら、過去を見つめ直す暇がないからです。たとえあったとしても、恥ずべき所業を回想するのですから、楽しいわけがありません。

セネカ. 人生の短さについて (Japanese Edition) (p.49). Kindle 版.

かけがえのない毎日を大切にする

ではどうすれば人生を有意義に過ごせるのでしょうか。セネカの主張は至ってシンプルです。

ところが、自分の全時間を自分の必要のためだけに捧げ、毎日を人生最後の日のごとく大切にしているあの男は、未来を待ち焦がれることも、恐れることもありません。

セネカ. 人生の短さについて (p.37).

さらに具体的な指針として哲学に時間を割くことを薦めています。さすが哲学者(なのか…?)

万人のうち哲学に時間を割く人間だけが、悠々自適する、真に生きている人間なのです。なぜなら、おのれの人生をしっかりと守るだけではなく、そこにあらゆる時代を追加し、自分より前に過ぎ去った全ての年月を蓄えとするからです。

セネカ. 人生の短さについて (Japanese Edition) (p.72). Kindle 版.

SNSなど漠然と人生を浪費しやすい現代だからこそ、改めて人生の短さについて考え、自分の人生を再設計するきっかけになる1冊でした。

次に読む本

  • 哲学と宗教全史(出口治明 著)
    セネカが「哲学」の大切さを訴えていたため、哲学に馴染みのない私にとって入門となるかなと思った1冊。しかし分厚いらしい…

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