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【連載】大山峻護のポジティブ対談 第2回 山崎拓巳さん


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大山峻護のポジティブ対談
~コロナ禍を乗り越える為のメッセージ〜
第2回 山崎拓巳さん


思考を止めず、ちゃんと恐れて、
明るい未来をバズらせろ!


この対談は『ビジネスエリートがやっているファイトネス』の著者・大山峻護が各界で元気に輝きを放ち活躍しているこれはと思う人達をゲストに迎え、コロナ禍の今だからこそ必要なポジティブメソッドをみなさんにお届けするもの。第2回は累計160万部のベストセラー作家で夢-実現プロデューサーとしても活動する山崎拓巳さんです。情報を集め思考を深めることで、目の前の恐れを克服していく……。そんなお話です。


■情報に踊らされず自分の中で議論することが大事

大山峻護(以下大山) 山崎(拓巳)さんはこのコロナ禍をどう感じましたか?

山崎拓巳(以下山崎) 当初から「緊急事態だな。パンデミックになるな」とは予想していたところがありました。というのも世に流れていたニュースには報道規制が入っていたとは思うのですが、そんな中、感染が拡大していく中国の情報が得やすかったのが実はTikTokでして、そこからいろいろと情報を得ていました。もちろん全部の情報が信じられると思ってはいませんでしたが、かなりひどいなという情報は伝わってくるというか。
なので落ち込むというよりは、逆に情報を手に入れて頭がさえわたるという感じでしたね。

大山 頭がさえわたるですか!?

山崎 恐れてばかりいると思考は止まると思うんです。だから冷静に情報を集めて、今どう動くべきか判断することが大事だと思っています。これは、阪神・淡路大震災の時も、東日本大震災の時も同じでしたね。

大山 情報を取るのがまず大事ということですが、今のコロナ禍では多くの人がテレビから情報を得て、「大変だ、大変だ」と思考停止になってしまっているところがあると思うんですよね。その点はいかがでしょうか?

山崎 情報の少ない人というのはテレビの情報だけで怯えてしまところがあります。ただ、テレビにはスポンサーがいますし、そこには情報の意図というものがあり、必ずしもジャーナリズムだけとは限らないんですね。もちろん僕が発信する情報もそうですし、大山さんの発信する情報もそうですよね。
だからこそ、情報そのものの意図を精査し、偏った先入観だけで情報を取りに行くのではなく、幅広く仮説を立てることが大事になってくるんです。

大山 仮説ですか?

山崎 はい、仮説です。例えばコロナで言えば「そんなに恐れることじゃないんだよ」みたいな仮説です。つまり、自分の中でディベートしていくためのAとBを作っていく必要があると思うんです。

これは元オリンピック選手の為末大さんが言っていたことですが、為末さんは「今はコアトレーニングだ、体幹だという話を聞くと、あえて『根性だ』というほうを研究してみる」というんです。これは単にマジョリティ(多数派)に対するアンチ(対局)という話ではなく、マジョリティをより深めるためのアンチなんですね。

こうやって自分の中に意図的にアンチを作って議論を戦わせていくと、より深い考察になっていきます。情報を取っていく時も、それをやっていくことがすごく大切かなと思いますね。

大山 コロナ禍では特にその考え方は大事ですね。

山崎 そうですね。コロナの流行当初は日本はゆっくり対応していましたよね。でも僕は「最悪の事態が起きるんじゃないか?」という仮説で情報を集めていました。すると今度は「コロナがヤバい」となり始めたので、今度は「実はコロナは大丈夫だ」という情報を集めて、自分の中でそれらをぶつけていきながら、自分の考察を深めていくということをやっていましたね。

大山 なるほど! そうすることで思考は停止しないですし、いたずらにネガティブな方向へ引っ張られずにいられますね。

■人生のハンドルを握れ

山崎 振り子の原理で言えば、振り子の一番先はプラスとマイナスで大きく振れますが、始点に行けば行くほどプラスとマイナスの差がないですよね。それが「差とり(悟り)だ」なんて言葉遊びができるわけですけど、このようにより達観していくとプラスもマイナスもないんだという世界に入っていくことができます。

しかし、振り子の先にいる人たちはいつまでも右に左に大きく振れている。ここにいる人たちの何が思考をプラスにさせて、何がマイナスにさせるかというと、それは彼らが「起きていることが人生だ」と思ってしまっていることなのだと思うんです。
ただ、それだと僕たちに人生の主導権はない。でも、目の前で「起きていること」に対して思考を深めていけば、「起きていること」にどんな意味あいを与え、どんな行動をとるかが「人生」だと変わっていきます

大山 なるほど。自分で人生のハンドルを握っていくということですよね。

山崎 また「起きていることが人生だ」と思っている人は、自分に起きていることと、人に起きていることを比べるので、批判的になったり、シニカルになったり、攻撃的になってみたり、いたずらに喜んだりしがちです。
これが起きていることに対してどう解釈と理解を与えて、どう動いていくべきかを考えていくと、今度は起きたことに対して人はどう理解して、どう動いていくのかということに興味が向くようになるんです。

例えば「こんなことが起きた。ひどいと思わない?」と人に共感を求めるよりも、「こんなことが起きたけど、大山君はどう判断してどう動くの?」と質問しに行くみたいな。
共感よりも対策を求めるというんでしょうか? すると非常に人としてクレバーになっていきますよね。

マイナスな出来事が起きて悲しさとか、腹立たしさとか、責任転嫁とか、魔女狩りをしている間は苦しいものなんです。だけどもう起きたんだと受け入れられると、まずそこがゼロベースになるので、少なくともそのような苦しさからは抜けられます。

■「恐れは才能」。「ちゃんと恐れる」ことも大事

大山 とはいえなかなか現実を受け入れられないというか、マイナスな出来事に怯えてしまう人はどうすればいいんでしょう。

山崎 怯えたり恐れたりすることが悪いことではありません。「恐れ」は人間の「才能」なんです。これはどういうことかというと、何百万年もの間、命というリレーが途絶えていない理由は、人間が「恐れ」という「才能」を使ってきたからなんですね。
例えば「サーベルタイガーなんて怖くないよ、大山君行こうよー」などと誘ってくる人はサーベルタイガーに食われていたはずなんですよ(笑) つまり恐れの才能がある人達がこれまで脈々と命をつないできたわけです。

大山 「恐れは才能」。面白いですね。

山崎 日本人はこの能力が特に長けているというか、他の国の人たちより「恐れ分子」が多いですよね。「恐れ」が壊れている人がいないと言いますか(笑)

大山 僕の知り合いに登山家の小西浩文さんという8000m級の山14座のうち6座を無酸素で登っている方がいて、その人も同じようなことを言っていました。「あと少しで登頂できるかもしれない、でもこのチャレンジは生きるか死ぬか半分半分だな」という時に、果敢にもトライして成功した登山家は次の登山で同じピンチになった時に同じ選択をして死んでしまうと。つまり、「そこで引き返せる人」が生き残ってきたわけで、小西さんはその辺の見極めがすごかったのでしょうね。

山崎 その意味で言えば大山さんはファイターとして死に近くなるポジションをわざわざとってきたわけですよね。「恐れ」に対する克服法とかあるんですか?

大山 僕の場合は基本的にビビり屋で心が弱いんですけど、開き直れてしまうというところがあるんですよ。だからさっきのサーベルタイガーの話ではないですけど、それが過剰な勇気になって突っ込んでいってしまう。どんなに強い相手に対しても突っ込んでいってしまって、それでボコボコに負けてきたんですよね(笑)
だから現役時代の僕に必要だったのは、それこそ「ちゃんと恐れる」ことだったんじゃないかと、今の話から思いますね。そう考えると勇気がなんでもいいってわけではないですね。

山崎 そうですね。今の世の中、命を落としてしまうような危険って身の回りにそんなにはなくて、これって実は、先人の「恐れ」が「こんなにも安全な街や社会を作った」とも言えるんですよね。先人たちが恐れていなかったら、危険なままでOKな社会だったかもしれない(笑)

大山 そういう意味から言うと今の状況はコロナに対して「ちゃんと恐れる」ということも大事なキーワードになってきますね。

山崎 そうですね。ただ、そうした時に、僕たちがハマりやすいのが、「~~するべき」、「~~ねばらなない」という「べき教」的な考えにハマってしまうことなんです。社会というフォーマットに僕たちは「入っていかないといけない」、「やらないといけない」。その「やらないといけない」という背後にも実は「恐怖」があるんです。「やらないといけない。なぜなら大変なことになってしまうから」という恐怖です。
でも、「大変なことってどうなることなの?」と聞くと、「やめてください。そんなこと考えたくもない」となる、つまりはみんな怖いからその先を見ようとしないんですよ。

大山さんのようなファイターでいうと、「負けたらどうなるの?」と聞くと「そんな負けるだなんて言わないでください!」となる。
その先には周りから「お前は敗者だ」という烙印を押され、「お前は弱虫でダメなファイターだ」と言われ、ファイターという職をなくし、お金も失い、人も離れ、最後は一人老いぼれて孤独死していく……。
なんてことあるわけないですよね(笑) でも、これが実は大事で、「恐怖」って味わい尽くすと「怖くないじゃん」となるものなのです。
だらか僕は「やらないといけない」となった時に、その後ろの恐怖の正体を味わい尽くせと、コーチング研修などでよく教えるんです。それができなかった時にどんな恐怖があるのかということをしっかり味わわないと、いつまでたっても心に「やらなければいけない」という乳酸のようなものがいっぱいたまった状態のままで、動くことができなくなるんです。

大山 試合でも同じですね。僕はどちらかというと最善を想像することが得意だったのですが、大ピンチになってもこうやって、こうやって切り返してみたいな最悪を想定しておくことも大事なんですよね。ただ僕は現役時代それがあまりうまくできていなかった。いつも最善ばかり想像していて、それがダメだとなった時、想定外が起こった時、僕ってすごく弱かったんです。もし想定外(最悪)を想像できていれば、それも想定内になるので、もっと心も成績も安定していかもしれませんね。

■変化の時は「やり方」でなく「あり方」を見つめる

大山 しかし、山崎さんもこのコロナ禍で大きく生活も変化したんじゃないですか? それまでは32年間、年に200泊ホテルに泊まっていたなんて話も聞きましたが。

山崎 はい変わりました。今は東京にずっといます(笑)

大山 「怖さ」の話で言うと、人って変化が怖いところもあると思うんです。ただ今はコロナ禍で、多くの人が変化を求められている中で、山崎さんみたいに変化ができる人と、それができなくて「いつコロナが終わるのか」と待っている人で二極化しているんじゃなかと……。
僕は今の時代どんどん変化して行くべきだと思うんですが、どうしたら山崎さんみたいに変化しながら生きていくことができるのか、教えていただけますか?

山崎 僕はコロナ禍の今、人のタイプが2つではなく、大きく3つに分かれていると思っています。
一つ目は、早く元の状態に戻りたいと思っている人。
二つ目は、よくわからずビバーク(緊急的に避難)している人。
三つ目は、これまで話してきたように仮説を立てて、すでに動き出している
人。

元に戻ると思っている人は情報不足と洞察不足に原因があると思うんですが、一方で変わってほしくないという気持ちも強い。それはコロナ以前にメリットをたくさん得ていたからとも言い換えられると思います。つまり、今を受け入れられない状態なんですね。だから情報不足、洞察不足になってしまう。

次のよくわからずビバークしている人は、情報は受け取るけれども、整理ができない人。自分の中で理論を再構築できない人です。
僕はよくコーチングの研修で「木を高くしていくコーチング」と「根を張っていくコーチング」の2タイプがあるとお話します。これはどういうことかというと前者がどうやればうまくいくのか?や最小努力で最大効率を得るにはどうしたらいいか?などのやり方、後者が誰を喜ばせたいのか?や何のためにやるのか?というあり方なんです。
コロナ禍は有事とも言えますが、有事の時ほど根っこ(あり方)が浅いと簡単に倒れてしまうんですね。今回はこれまで根っこをしっかり張ってきた人でも人生観が変るほど、社会のフォーマットが変わったわけですから、根っこが(あり方)が深くないと不安でしょうがないと思うんです。だからそのような人は、ネガティブになって、気もそぞろになっていくんです。

一方で、大山さんは人とのつながりが半端なくて、周りにはそれこそ生まれながらというか、デフォルトであり方がすごい人がたくさんいるわけです。にわかにやり方やあり方を作ってきた僕たちのような人が太刀打ちできない人がいっぱい。
だから、大山さんの周りにいる人達というのは心が安定している人が多いんですよね。それはあり方がすごいからなんだと思います。

大山 あり方ですか。確かにそうかもしれませんね。コロナ禍で社会が大変になった時僕の周りの尊敬している方々が本当に前向きで、明るくて、いろんなことにチャレンジしているのを見て、僕も大変勇気づけられました。
だから僕の心も安定していたというか、じゃあ僕も変わって行こうとも思えたところがあります。周りにどういう人がいるかというのは本当に大きいですよね。山崎さんの存在も本当にありがたかったです。

山崎 そうですか。ありがとうございます。でも本当にコロナ禍になってたくさんコミュニケーションをとるようになりましたよね(笑)

大山 山崎さんは本当に忙しすぎて、「ご飯行きましょう」と約束してもいつもスケジュールが開いていなくて、その意味で言うと今回のコロナ禍は時間ができてよかったみたいなところがありますよね。コロナ禍の今だからこそ、いろんな人の話を聞いてみるというのもありですね。

山崎 ある人だけを信じて妄信的になりすぎると群れ単位で失敗してしまいます。人間のDNAが違う情報を欲しくて違う部族の人と定期的に結ばれるようにわざとしているのは、村が全滅しないようにするためですもんね。だからこそ、いろんな人の話を聞いてみることはすごく大事だと思っています。

■こんな時だからこそみんなで明るい未来をバズらせる

大山 いやーすごくいいお話をいただきました。ありがとうございます。最後にこれを読んでくれているみなさんにメッセージを一つお願いできますか?

山崎 そうですね……、では最後に過去を参考にしないというお話をさせてください。
池があってそこに蓮を生けると、蓮の葉は倍々で広がっていきます。では、60日でこの池が蓮の葉でいっぱいになったとしたら、蓮の葉が半分を覆う日はいつでしょうか? 
このクイズを出すと大体の人が30日と答えるんですが、答えから言うと、60日で蓮の葉がこの池をいっぱいに覆うのであれば、半分を覆うのは59日目なんですね。そして、58日目は4分の1なんです。
何が言いたいかというと、僕たちはよく成長をイメージする時、右肩上がりの直線をイメージします。しかし、実は変化というものはこの蓮のように急激に起こるものなんです。
この時、過去を参考にする人は右肩上がりの直線をイメージしがちなんです。つまり、未来は過去の延長線上にあるということです。そうすると途中であきらめてしまいやすいんです。しかし、うまくいく人はこうなってほしいという未来からイメージするので、バズっていくような倍々の曲線をちゃんとなぞっていけるんですね。

ですからみなさんには過去を参考にするのではなく、こうあってほしいという未来から描いてほしいと思います。「コロナ禍で世の中ってこれから一体どうなっていくんだろう?」ということを考えるのではなく、こんなにもうぐちゃぐちゃになっているんだったら、理想的に「こうなるべきだ」という明るい未来を描く。
社会というものは描いた方向に進んでいきます。かつての先人が描いた未来を僕たちは生きているので、みんなで「こうなったらいいな」「こうなったら素晴らしいよね」という明るい未来を描いて、それを急にバズらせていくということができたら、とても素晴らしいことだなと僕は思います。

みなさん、ぜひ明るい未来を描きましょう!


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山崎拓巳(やまざきたくみ)
1965年三重県生まれ。広島大学教育学部中退。20歳で起業。22歳で「有限会社たく」を設立。以来30年以上、多岐にわたり事業を同時進行に展開中。
現在まで50冊以上を上梓し、累計160万部のベストセラー作家でもある。講演も大人気を博しており、「凄いことはアッサリ起きる」‐夢‐実現プロデューサーとして、コミュニケーション術、リーダーシップ論、メンタルマネジメントなど多ジャンルにわたり行ない、世界で200万人以上に向けてスピーチをしてきた。
主な著書に、『さりげなく人を動かす スゴイ! 話し方』『お金のポケットが増える スゴイ! 稼ぎ方』(いずれも、かんき出版)、『やる気のスイッチ! 』『人生のプロジェクト』『気くばりのツボ』(いずれも、サンクチュアリ出版)などがある。『やる気のスイッチ! 』は、2010年夏に中国語に翻訳され、2011年には英語版『SHIFT』となり全米で発売。その他の著書も含めて、香港、台湾、韓国ほか、海外で広く翻訳出版されている。



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