2023年に観た中で1番の映画「荒野に希望の灯をともす」

先日、2023年に観た中で1番の映画を決めました(なんでも決めるのが大切)。

一部、以前の投稿と重複しますが、下記の通りです。あとネタバレ注意です。

・「荒野に希望の灯をともす」(DVD)

戦乱の続くアフガニスタンを支援し続け、2019年に同地で亡くなった医師の中村哲さんのドキュメンタリー映画。

映画館で見た訳でもないし、2023年公開でも無いのだけれど、2023年は、これほど衝撃を受けた映画を他に観ることが出来なかった。

内容としては中村さんがアフガニスタンの荒れ地を緑野にするために用水路を作る話がメイン。

この映画はドキュメンタリーだけど、まず、「映画」として面白い。

映画の中で中村さんが干ばつで荒野になったアフガニスタンの土地に用水路を作ろうとする場面が映される。でも、水を引き入れる河の流れがあまりにも激しいため、どんなに堰を作っても決壊してしまう。

中村医師は様々な堰の形を模索して行く中で、日本の福岡県の筑後川にある堰(山田堰)に目を付ける。この「山田堰」は江戸時代に作られた堰で、堰の角度や川の水を誘導するために構造物がうまく配置されており、補修を重ねながら今でも機能を果たしている。

そして、同じ手法を使ってアフガニスタンに堰を作ったところ、見事に用水路に水を引き入れることに成功する……!

ピンチの時に温故知新でそれを乗り越える…。「技術」を描いた映画として、フィクションなら「すこし出来過ぎ」と思ってしまうが、ノンフィクションというところが心を熱くさせる。

そして、これは映画を観た後に知ったのですが、中村さんがアフガニスタンで江戸時代に作られた山田堰と同じ技術を採用したのは、完成後に現地の住民でもメンテナンスが可能ということもあるとのこと。

話を面白くするためではなくて、その技術を採用することについても明確な理由が有る…という点でも「技術」を描いた映画として凄く面白かった。

私はドラマチックな演出をするドキュメンタリーが嫌いなのですが、そういうのが全く感じられないのも良かった。

私はドキュメンタリーで、そういう作り手の演出っぽいのを、結構敏感に感じてしまう方なので、そういうのが有ると興ざめなのですが、ドラマティックな内容を描いている割に、この映画からはうさん臭さを全く感じなかった。

山田堰を採用して用水路を建設する場面も、派手な演出や心を動かす音楽も無く、淡々と中村医師と仲間たちの活動が紹介されていくだけで、「鬼気迫る」という感じであった。

見事だ!と観た後に家のソファーで打ちひしがれてしまいました。だからこの映画が文句無く2023年で一番です。

という訳で、2023年の最優秀映画賞「荒野に希望の灯をともす」は「技術」の映画でしたが、2024年映画の最大の楽しみは「オッペンハイマー」。

どんな「技術」の映画になるでしょうか。

では、来年お会いしましょう。

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