まちづくりは色んな人の想いを実現する道具だと思う
まちづくりって、商業施設や道路を作るだけだと思ってた
でも、そういう目に見えるものだけでなく、人の行動を変えたり、つながりを生む仕掛けにもなるものなんだなぁと、学び始めて2年目にしてやっと理解しつつある
今回、研究で関わっている研究会の企画で、居場所・つながりづくり事例を見て回ってきたので、自分の整理&共有という目的で、書いていきたいと思う
老朽化する団地×子ども
戦後の住宅不足、人口増加を背景に供給されてきた団地。有名どころだと、大阪の千里ニュータウンとか、東京の多摩ニュータウン。
日本全体が少子高齢化しているので、言わずもがな団地も「オールドニュータウン」なんていう呼ばれ方があるくらい、住む人も建物も高齢化している
その中でも、元々ある自治コミュニティを生かして交流が生まれるように団地の改修やプロジェクトを行ってたのが、「ひのさと48」
団地の一部を戸建住宅として民間に渡して経済面を考慮しつつ、残りをビール醸造場やシェアキッチン、民間の保育所が入る交流が生まれる「地域のハブ拠点」を目標にしてきた
子どもからおばあちゃんまで、住民で話し合う会を定期的に設けたりして、「会話量を増やす」ことに取り組んできたらしく、面白いアイデアや交流が生まれている
例えば…
団地でクライミング
ビールのラベルづくり
宗像市の作物などを使ったビール作り
カメラのワークショップ
子どもだけの料理教室
住む人の「やりたい」を積極的に応援することによって、子どもが色んな大人と触れ合う機会が増えるなど、「ひのさと」の「里」みたいに多様性とか相互作用がある森林みたいな場所になっている
子どものことばかり触れているが、「ひのさと48」のプロジェクトの中には、コミュニティナースによって医療を日常的にする主に高齢者向けの取り組み、ビールづくりで出る麦芽をコンポストにして野菜を育てる取り組みもあり、対象も分野も様々に活動している
住民発の色んな取り組みができているのは、元々、地域協議会など地域の自治組織がしっかりしていたこと。プレイパークや子どもの遊び場などに取り組むキーパーソン的な人がいたことが関係しているんだろう
実際、団地の改修前から、まちづくり専門の先生や学生が入って活動したり、地域のドン(町内会・自治会の会長さんとか)への事前の根回しなどがあったから、スムーズに話し合いができたという話も聞く
ただ、目に見えない「つながり」をいかに引き出すかは、場所もそうだけど、場所を作る過程や作った後にどう使っていくかも考慮した全体にかかっているなと思う
その全体をデザインするのが、「まちづくり」なんだろうなと最近つくづく思う
この「ひのさと48」という事例の他にも、「なごみの家 しかたの茶の間」という団体は、認知症の高齢者の「やりたい」や「できる」を活かしたイベントや子ども食堂などの取り組みを通じて、孤立を防ぎ、住み慣れた団地に住み続けられるような活動をしていた
「支援する/支援される」という硬直した関係性ではなく、「お互いにできることを生かして支え合う」ようなつながりを作っていた
特に印象的だったのは、認知症のおばあちゃんによる子ども食堂の話だった
当時、認知症の影響なのか、そのおばあちゃんは毎日スーパーで薄力粉・キャベツ・卵・お肉を買ってきては、トンカツを揚げ続けていたという。同居していた息子さんたちにとっては、困りごとなので、買い物も料理も禁止したらしい
しかし、それを見た「なごみの家」の職員さんが、子ども食堂をやることを思いつきやり始めたところ、子どもたちやお母さんたちはもちろん、「ありがとう」という言葉を聞いたおばあちゃんも良い表情をするようになったそう
息子さんたちの「困りごと」を、子どもたちやお母さんたちの「助かりごと」にした職員さんの視点がめちゃくちゃ素晴らしいと思った
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私は、居場所・場づくりを考える時に、「場所ができて、そこに人が集まって、活動が生まれて」みたいな順番を想像していた
でも、実際は「つくる人の想いがあって、場所がハード・ソフト両面でできて、活動が生まれて」という風に成り立っているらしい
これは、『場づくりの教科書』の中で長田さんという方も言っていたような気がする
そして、その実現のための道具が「まちづくり」なんじゃないかと、今回のフィールドワークを経て思う
では、また