母の作る美味しくないハンバーグ
実家でレッスン中、キッチンからあの香りがしてきた。
今日はあれだ、、
懐かしい嫌いな味
母のハンバーグ。
子供の頃は、ハンバーグってこういう味と思って食べていたけど、今は、どんな店に行ってもこの味に似たものはない。
なんとも甘くて、B級な味。
88歳になっても母は料理好きで、まだ、美味しいものもたくさん作れる。なのにこれはいつも同じ。つまりこのハンバーグは作り方がアップデートされていないのである。
ファミレスもハンバーグの種類や味にこだわる今、滅多に味わえないこの味だが、62歳の娘は、この香りがしてくると、どうやって母を傷つけずにこれを食べないか?を考える。
幸い今日はお昼にハンバーグを食べてしまっていた。そこで
「あー、今日お昼がハンバーグだったんだよねー」というと
「なーんだ、ハンバーグだったの? でもこれクスクスが入ってるのよ」
とまた、新たなお試し料理であることを告げられる。
しかたない、半分くらい食べるか、、
と思った時にはもう目の前に皿が置かれている。
いつものように彩りよい盛り付けだ。
この気持ちはむげにはできない。
ハンバーグの中にも、ソースにもクスクスが入っていて、母曰く
「タンパク質も炭水化物もこれ一つで摂れるでしょ?」
といかにもアップデートしたような情報を付け加えるが、食べてみれば
あーーーやっぱりこの味だぁ
いったい、どうすればこの味になるのか、
改めてきいてみた
ところでうちのハンバーグっていつもこの味だけど、ソースに何が入ってるの?
「ケチャップとウースターソースと残り物のトマト」
そうか!ウースターソースだったのかぁ〜
娘は美味しいとも美味しくないとも言わずに、ハンバーグを半分食べて退散した。
でも、この美味しくないハンバーグだっていつまで食べられるのか?
そう思うと、好きじゃない味も覚えておこうと思うのだった。
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