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写真加工の進化 便利と不便の間 2024

こんな日が来るなんて想像できただろうか?
今から、30年前、カシオQV-10が発売されて、うちの新しい物好きな相方が、いの一番に購入し、すぐ飾り物になった時、楽屋で同僚が教えてくれた。
「デジタルカメラは写真をコンピューターで加工できるんですよ」って聞いて手に取ってみた。

コンピューター自体の普及も始まったばかりで、ソフトなんてほとんどなくて、容量は小さいのにディスプレイはめっちゃ大きくて場所とって、思い出すほどに大変だった。

「デジタルカメラは写真をコンピューターで加工できるんですよ」

この一言で、これから写真が大きく変わっていく時代の気配を感じていた。
そう、その時はまだ「気配」
自分でシールが作れるのが楽しそうで、その同僚に教えてもらいながら初めて16分割シールを作った。

写真はコンピュータの中で切り貼りできるのか。
それがわかった私は、待ち時間が多い稽古にうんざりしていた時、楽屋で共演者の変顔写真を撮って、これを切り貼り(コラージュ)したら面白いかも?と思ってやってみた。貼り付けてみると確かに面白くて、見せたくなって楽屋に持っていったら、みんな驚き喜んでくれた。
これがきっかけになり、公演ごとにコラージュを作り始めたけれど、当時は撮った写真をトレーシングするだけでもめっちゃ大変だった。
人物の縁にポインターを合わせて、マウスでなぞっていく。デジタルといっても作業は完全にアナログ。それでも楽しかったから、稽古が終わって帰宅後も夜遅くまで1人1人の写真をトレースしていた。

そしてある日、そのコラージュを見たあるイタリア人歌手から
「君は写真加工ができるのか?それならイタリアに帰ったら加工してほしい写真を送るから、頼みたい」と言われ、その半月後に本当にイタリアからすごい数の写真が届いた。

その加工の希望は
眉毛の端っこを短くして欲しい
ふくらはぎに筋肉をつけてほしい
体の幅を細くしてほしい
etc.
ほぼ外科手術か?と思うほどの細かい要望に加え、ついには
「隣の人を消して欲しい」

1994年。個人使用のパソコンでそんなことできるはずないと思ったけど
でも、やりました。
写真を削ってコピーペーストして、不要なところは消しゴムで消して
体の幅を細くすると、床の板目もずれるから、それも全部貼り直して
最後に隣の人を消すと、消さない人のシャツが削れてしまうから、

描きました

でも、当時たかが1人のオペラ合唱団員 いやその周りにもこんなことできる人いなかった。

あれから30年ずっと人の写真を撮ってはトレーシングしてきた。
撮影場所は様々なので、背景にいろんなものが入ってしまうから丁寧にトレースして、汚いところは消しゴムで滑らかに処理して、、、

宣材用ポートレート撮影も頼まれるようになった時も、私ならば皺軽減してくれる、都合の悪いところは消してくれると言うので、いつもそんな要望に応えてきたけれど、なんと今ではスマホのアプリでいくらでもなりたい自分を作れるようになったじゃないか。

Photoshopの進化はめざましく、どんどん作業はかんたんになっていく。
そしてついに今日、背景から人物を簡単に切り抜きできることがわかった

あんなに時間がかかったことが、数秒、、
さらにはコラージュのデザインにするために探しまくった素材。
どうしても炎の写真が欲しくてベランダの植木鉢で火を焚いたこともあったのに、
AIに頼むとすぐ出てくる

ああ、便利だけど、複雑な気持ち

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