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負ける練習 負けない心

うちの教室にいるAくんとBくんは、とにかくじっとしていられない大将でした。レッスンを始める時も、一旦椅子に座るものの、私が瞬きをしている間に、椅子から滑り落ちてみる、寝転がってみる、とにかくまっすぐ座っていられない。

この前置きをした上で、、、

夏休みのある日、いつもは少人数での英語レッスンですが、特別に市民センターを借りて少し広い場所で、2クラス合同で対戦型のゲームをやった時のこと
コロナ禍でもあり、各クラスをチームにして4名ずつが間隔を開けて並べた椅子に座り、各自にアルファベットのカードを配り、中央のテーブルには単語カードを広げておいて、合図とともにそれぞれが手にしたアルファベットで始まる単語をテーブルから見つけて、席に戻り、先にチームが全員席に戻った方が勝ち!と言うゲームでした。

Cくんは特に負けず嫌いで、それも少し度を越したところがあり、自分が負けると大きな声で悪態をつき、果ては号泣する傾向があります。
今までもゲームをするたびに何回もそう言うことがありました。
彼は負けたくない気持ちが強すぎて、ゲームをする時点で既に緊張してしまうらしく、それが裏目に出るのか?今回もカードを見つけるのが遅くて1回目はビリ!  とたんに

僕のせいで負けたーー!

と早速騒ぎ始めました。その後も不運は続き、彼の癇癪はいよいよエスカレート!
とはいえゲームなので、本人の思い通りになるはずもなく、何回目かの時にAくんとCくんの席に着く速さがギリギリになったもののAくんが勝ち、またしてもCくんの負けとなったら、ついに椅子に突っ伏して叫び出しました。
他の子達はゲームを楽しめなくなってみんな沈黙、、、私は、そろそろいつものように鬼の説教モードのスイッチに手をかけました。その時、Aくんが言いました

「僕の方が(席に戻るのが)少し遅かったと思う」

え?

「僕の方が遅かったよ、、、」

実は、私は一瞬この結果を見落としたところがあり、ミスジャッジしたか?と思いましたが、すかさず隣にいた子が

「そんなことないよAくんの方が速かったよ」
とたたみかけてきました。

つまり、、Aくんは気を使ったんだ。自分で負けてあげることにしたんだとわかりました。
それが聞こえてもCくんは自分の負けをまだ叫び続けています
私は小声でAくんに言いました

気をつかわんでいい

そしてCくんのチームは負けとなりました。するとCくんは
「もう嫌だから帰っていいですか」と荷物をまとめ始めました

なんだその態度はーーーーーー!

私の鬼の説教スイッチは入りました。

ゲームは勝つことも負けることもある、それを楽しむのがゲームだ。君が勝ったとしたら誰かが負けとるんじゃ!君は自分さえ勝てば、他の人は負けてもいいのか?勝てば嬉しい、でも負けることも受け入れられなければ、みんなと楽しくやっていけないだろ!

そして、説教モードがヒートアップしそうになった時、今度はBくんが突然口を開きました

「負けたら、次に頑張ればいいじゃん」

さらにAくんが
「負けたら、次に目標ができるよ」

え? 私は自分の目と耳を疑いましたよ!あの、いつもじっとしていられなくて私に怒鳴られまくりの二人の発言?
あまりの驚きに一瞬私も黙ってしまったら、別の子達も口々に言い始めました

「負けたっていいじゃん」「私も負けることあるよ」

完全にバツの悪くなったCくん

わかるかC
みんなあんたのために言ってくれてるんだよ。

Cくんはもう叫びませんでした。いつもの通り泣きそうでしたが、とりあえず我慢しているようでした。

さて、私は改めてみんなに聞きました

Cくんはもうわかったと思うので、もういいのだけれど、先生は最近、負けることがすごく嫌だったり、すごく怖かったりする子が増えているように思います。
負けるだけじゃなくて間違えるとか、、だからゲームを一緒にやらないとかね
みんなのお友達の中にそう言う子いるな~ってある?

この質問にみんな大いにうなづきました
「いるいる」と言う子もいます

やっぱりそうか、、、

私が教室を始めた頃は、みんなゲームが大好きで、競争するよ!といえば「やったー!」とモチベーションが上がったのに、年々子供達の気持ちの変化があり、ロンドン橋ゲームをやると橋の下を誰もくぐらない。Yes Noクイズをすると、リーダータイプの子が決めた答えに全員同調してしまう

昭和生まれのおばさんとしては何か残念でならない気持ちでした。
とはいえ令和の時代。これからの指導はまず失敗や負けにくじけない心から育てなければならない。

Aくんの
「負けたら次の目標ができるよ」
の言葉が耳に残るのでした

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