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「なるべく働きたくない人のためのお金の話」

「なるべく働きたくない人のためのお金の話」(大原扁理 百万年書房)

年収100万円以下で隠居生活をしている著者による、お金についての考え方の本。節約についての話ではなく、そもそも自分がどうありたいのか、なぜお金が必要なのかをきちんと考えなさいという、ある意味で当たり前のことを再認識させてくれる本だった。隠居生活はなかなか真似できないが、お金についての考え方は非常に参考になり、いい本だった。

 はじめに明確にしておきたいのですが、お金について考えるとき、「自分がどうありたいのか」という問題を避けて通ることができません。というか、もっと正確に言うなら、お金のことは、「自分がどうありたいのか問題」の一部でしかない、という気がします。
 お金の不安をなくすことが目的なのではなく、お金の不安がなくなったそのとき、自分がどんなふうに生きていくのか、ということのほうが重要だからです。(26ページ)

 自分にちょうどいい幸せのサイズ感がどれくらいなのかは、当然ですが人それぞれ。初めからわかっている人は稀ですよね。やはり親元を離れ、すべて自腹で生きるという経験をしないと、自分には何が必要で何が不要なのか、真剣に問いかけることをしないまま済ませてしまいがちです。ひとり暮らしをすることの最大のメリットは、「どうすれば自分が幸せなのかに強制的に向き合わされる」ということかもしれません。(31ページ)

 この本では便宜上、私が郊外に引っ越したときを隠居のスタートとしています。
 でも、いきなり週休五日で年収九十万円という生活が始まったわけではありません。長い時間をかけて、何を残し何を切り捨てるか考え、一歩ずつ隠居になっていきました。(40ページ)

 周りの意見を参考にすることもありますが、ひとりで決断するべきことさえ、周りに納得してもらわないと行動できない状態になることは危険です。こうなると、もはや周りの納得が行動基準。彼らだって人間ですから、いつも正しいとは限りません。どちらにしても間違うかもしれないなら、自分で選ぶほうがましだと私は判断します。(42ページ)

 自分のなかにある、お金や、自分がどうありたいかに対するあきらめに、手遅れになる前に気がつくこと。
 そのために、自分で確かめたこともないのに当たり前と思っていることはないか、注意深く探してみること。
 当たり前と思っていることがあるなら、それが本当に正しいのかどうか、やりやすいものからひとつずつ確かめ、実践を積み重ねていくこと。(45ページ)

 この章では、私が郊外に引っ越した二〇一〇年一二月から約二年のあいだに、いかに隠居生活を作り上げ、改良を続けていったか?そしてそれぞれの問題に何を思い、どう対処していったか?を書いていきます。
・自分には本当は何が合っていて、何が合っていないのか
・何が必要で、何が不要なのか
・それらをどう判断すればいいのか
・どんな障壁が予想されるのか
・行動に移すときの心がけ

 そして、自分だけの生活のやり方がだいたいわかったとき、
・それをどう続けていくのか
・あるいは、変わることを選ぶのか
(48-49ページ)

 それ以来、私は満足の最低基準を「好きなことをしているか」ではなく、「イヤなことをしないでいられるか」で判断しています。
 やり方は簡単。どうしてもイヤなこと、やりたくないことをどんどんリストアップしていきます。その中でも、一番やりたくないことは何か。それをやらずにいられる状態を、最低限の満足ラインとします。(51ページ)

 世間の評価というのは、数年で、ひどいときには数日で変わってしまう、当てにならないものだということは、覚えておいたほうがいいです。そんないい加減なものの上に、大切な自分の生活を築いては危険です。(59ページ)

 そこで、私は「感情のスクリーニング」と呼んでいるのですが、いま自分がどういった感情から行動しようとしているのか、行動に移す前によく点検してみます。(61ページ)

 ただ、何を選ぶにしても、一般的な評価を鵜呑みにするのではなく、必ず自分で確認するという段階を忘れないでください。たとえば玄米菜食は健康にいいと一般的には言われていますが、そういった食生活を実際に数か月やってみて、自分の体調や、経済的に持続可能かどうかなどを確認してから、はじめてルーティーンとして採用を決定します。あとから社会のせいにしないためには、自分の責任で選ぶことが大切です。(69ページ)

 ズボラな私が今まで、人間関係の強制リセットにいちばん効果的と感じたのは、「ケータイを持つのをやめること」です。(77ページ)

 本は、普通なら話を聞くどころか、お目にかかることすらできないような社長とか、おもしろい経験をした人の話が、厳選され、編集され、校正され、読みやすくまとめられています。自分がこれと同じ内容をインタビューして聞き出そうと思ったら、時間も労力もどれだけかかるかわかりません。そんな大変な成果が、本なら時間も場所も選ばず享受でき、値段も千円から二千円程度で何度も読めて、しかも電源も要らない。コストパフォーマンスはかなり高いと思います。しかも図書館に行けば無料で借りられますし。
 他人の生き方を学ぶときは、あえて自分とは真逆の生き方をしている人の本を読んでみると、発見がたくさんあります。同じような考え方の本も楽しいのですが、すでに知っていることも多いし、そればかり読んでいると多様な考え方に対応できなくなるかもしれません。自分とまったく違う人の頭の中には、自分が知りえなかったことや気づけなかったことがたくさん入っていて、参考になります。(81ページ)

 ふと思い当たったのですが、私がいま自発的にやっている仕事は、子どものころに周囲から怒られたり、迷惑がられたりしたことばかりです。(84-85ページ)

 自分の生き方に、正しい/間違いの判断を持ち込まないこと。そうした判断から解放されていると、社会や流行に振り回されることがなくなります。他人のライフスタイルを間違っていると責める必要もなく、毎日ハッピーです。(89ページ)

 家賃の高い都心に住んでイヤイヤ働いて払っていた税金には、まるで自分だけが割を食ってる不公平な思いしかなかったのに、隠居してから自発的に働いて得たお金で払う税金は、同じ税金でも、なんというか、とても豊かな気持ちがします。(104ページ)

 たとえば直接的なことで言うと、私はコンビニなどで募金箱を見ると、財布に小銭があれば必ず入れます。これは自分以外の誰かのためにお金を使うときに、一番身近で、簡単な方法です。(132ページ)

 間接的なことでいうと、目先の損得よりも、いま私が使ったお金がどんなふうに社会に還元されていくのか、ということを考えて使うようになりました。
 隠居する前までは、ただ自分が一円でも安く買い物ができればそれでいいと思っていたのですが、今はディスカウントストアで安売りセールのお米よりも、国産の自然栽培で育てた玄米を、生産者からなるべく近い形で買いたいと思うようになりました。(135ページ)

 それにしても、お金を稼いだときの気分が、払うとき、そして払った後まで影響するのなら、稼ぐときの気分をないがしろにしては大変なことになります。(139ページ)

 たとえば外食をするときは、同じお金を使うなら、自分も含めて多くの人が幸せになる使い方は何か。いまの私であれば、チェーン店や激安の食べ放題よりも、食べることを大切にしていたり、何か社会に新しい価値を生み出しているような、個人的に応援したいと思うお店に行くようになります(チェーン店が嫌いなわけではないので、時と場合によりますが)。(142ページ)

 お金とよりよい関係を楽しく続けていくために、私が選んだ方法は「お金を人だと思って遊ぶ」ことでした。
 「こういう稼ぎ方・使い方について、お金がどういうふうに思うだろう?」という視点で、自分のお金に関する思考・言動をつねに吟味してみるんです。(154ページ)

 いま私にとって大切なことは、一円も出ていかないようにお金を必死にコントロールしたり、他人より多く稼ぐことではなく、お金が遊びに来たいと思えるような人でいるように、いつでも緊張感を失わずに生きることです。
 具体的にいうと、
・自分がどうありたいかを人任せにせず、人生の舵を自分でにぎり、毎日を地道にしっかりと生きること。
・とくに何もない一日でも、無事に生きられたことに感謝すること。
・低所得だからといって卑屈になったり、高所得だからといってお金や人を軽んじたりしないこと。
・他人を羨まず、いま目の前にいてくれる人やモノやお金を大切にすること。
・同じお金を使うなら、いかにひとりでも多くの人がハッピーに、楽しくなるように使えるかをつねに真剣に考えること。
・お金の量や用途の正しさに惑わされず、ネガティブな気持ちに突き動かされていないかをじっくりと検分すること。
・本当に大事なものは何なのかを考えることから目を逸らさせて、ありとあらゆる方法で心を急かしてくるものを、きちんと拒むこと。
 こんなふうに、長い目で見て、お金から信頼されるに足る言動を、ひとつずつ、年単位で積み上げていくことです。(175-176ページ)

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