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「2025年日本経済再生戦略」

「2025年日本経済再生戦略」(成毛眞 冨山和彦 SBクリエイティブ)

元日本マイクロソフト社長と経済団体会長の2人の著者による、ビジネスパーソンが未来に備えるための戦略についての本。それぞれが書いた章が交互に並んでいて、対談風の構成になっている。面白いと思うところと、やや現実離れしていると思うところがあった。

 日本では個人の生活保護、セーフティネットが個々の企業頼みになっていることだ。
 年功序列、終身雇用によって、企業が個人の雇用を保障する、生活を保障する、ひいては退職後の人生を保障する。そういう高度経済成長期に強化されたシステムのなごりを、未だにひきずっている。(29ページ)

 これからの時代は、どう見ても、有事は起こらないという前提ではなく、目前に迫っているという前提で考えなくてはいけない時期だ。にもかかわらず、この国のグダグダ感、有事に対する丸腰ぶりは空恐ろしいほど変わりにくい。
 指導的な立場にいる人たちにとって、有事が存在しない建前のほうが、実はラクな場合が多いからだ。(49-50ページ)

 そこで思うのは、大企業の社員の転職が少ないのも問題ではないかということだ。30歳くらいで最初の転職、45歳で2回目の転職と、最低2回の転職をしたほうがいい。なぜなら、業種や仕事に合うか合わないかは、1社で働いただけではわからないからだ。
 楽しく働くには、能力よりも、相性や適合性が大切だ。(74ページ)

 そう、その気になれば、今は副業でバイトだってできるのだ。新しい環境に行けば、誰だってダメダメな部分が露呈する。そんなダメダメな自分すらも楽しめばいいのだ。(75ページ)

 イノベーションとはオープンな借り物競争である
 そもそもインベンション(発明)とイノベーションは意味が違う。イノベーションというのは新たな結合によって社会やビジネスを大きく変えるような新しいやり方を創出することを意味している。自前で何かを発明することがイノベーションにつながることはもちろんあるが、それは何かと何かを結合させる1つの要素にすぎない。
 大事なのは、誰も解決できていない問題を何とかしたいとか、何かすごく素敵なことなのでお金を払ってでも実現したいとか、そんな思いを実現するためにいくつかの要素、それは新しいものでも古いものでもいいからくっつけてみることだ。この際、その要素は全部、他人からの借り物でもOK。誰もやっていない組み合わせを実現することのほうが大事なのだ。(132-133ページ)

 日本には、とんでもないレベルの金持ちはそれほどいないが、そこそこの金持ちなら相当数いる。1泊10万ほどで、5万円レベルよりも格段に部屋よし、お湯よし、サービスよしの旅館があったら、ぜひ泊まってみたいと思う層だ。
 この層にもっと狙いを定めるようにするだけで、インバウンド頼みではない観光地復興は、割と簡単に叶うだろう。(149ページ)

 古い意味での「国家」、古い意味での「会社」なんて忘れて、自分勝手に生きようということだ。
 これは、個人がそれぞれの幸せを追求しながら、気ままに生きるということも含む。イノベーティブで競争力の高い個人が育つ土壌をつくることはもちろん重要なのだが、その一方で、いわば「理想のレベル」を下げることで得られる各自の幸せがあるのなら、それもいいのではないかと思うのだ。
 なにも新しいライフスタイルをつくれというのではない。もともと日本にあった伝統的ライフルスタイルに立ち返ってみるのである。(216ページ)

 期待値を下げ、高望みをせずに幸せに生きる。「国のため」「社会のため」ではなく、自分勝手に、気ままに生きる。そういうビジョンも選択肢に入れておけば、だいぶ気がラクになる人も多いはずだ。
 みんながみんなグローバルに活躍し、そこでの競争を勝ち抜かなくてはいけないわけではないのである。(224ページ)

 好きなことをやっていけば愉快な人生になるだろうし、嫌いなことをやっていけば不愉快な人生になるだろう。結局のところ、これが一番重要なことだ。
 「いかに生きるべきか」などは考えなくていい。「いかに好きに生きるか」を人生の軸にしていくのである。(235-236ページ)

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