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「東大教授が教える独学勉強法」

「東大教授が教える独学勉強法」(柳川範之 草思社)

東大教授の著者による、勉強法についての本。この著者はユニークな経歴の持ち主で、高校にはまったく行っていない。親とともに海外で過ごし、高校の勉強を独学し、大検を経て大学の通信課程に入学し、大学の勉強も独学でマスターしている。それで東大教授になったのだから、すごい人である。

内容は非常にわかりやすく、特に大学からの勉強はこうやるんだということを改めて教えられた。

「そもそも、私たちは何のために勉強をするのでしょうか。私なりに考えてみると、それは生きていくための知恵を身につけるためだと思います。知恵というのは、ちょっとわかりにくいかもしれませんが、例えば、人間が生きていくには、選択を迫られる場面が何度も出てきます。そういう場面において、「少し自信を持って決められるようになる」というのが本来の勉強の目的であり成果だと思います。」(18ページ)

「これからは、自分の頭で考え、自分自身で判断するための力をつけるための勉強が求められる時代になるのです。そして、そのための有効な手段の一つが「独学」だと私は思っています。」(21ページ)

「勉強とは加工業のようなものではないかと思います。部品や素材を加工して自動車をつくるのと同じように、いろいろな知識や情報という材料を取り入れて、それを自分の中で加工して違った形、違ったアイディアにする。そして、それをほかの人たちに伝えたり、自分の日々の生活や仕事の決定に活かしたりする。」(30ページ)

「その加工をする際、大切なのは、自分の中で「熟成させる」という過程です。ここで「熟成させる」というのは、自分の中でしっかりその情報を吟味して、その意味を考え、自分のものにする作業です。それには多少の時間がかかりますが、私はこれが、学ぶことにおける一番大事なプロセスだと思っています。」(31ページ)

「みなさんが「勉強」と聞いてイメージするのは、大きく分けて次の二つのタイプではないでしょうか。
1 明確なゴールがある勉強(受験勉強や資格試験の勉強など)
2 教養を身につけるための勉強(趣味的な世界の勉強など)
それに対して、私が本書を通してみなさんに身につけてほしいと思うのは、
次の第3のタイプの勉強です。
3 答えのない問いに自分なりの答えを見つける勉強」(36ページ)

「論文執筆に限らず、一般的な独学もまったく同じことです。実際にはじめてみれば、だんだんと思いもかけなかったいろいろな道が見えてくることでしょう。それに応じて臨機応変に道を選びながら勉強するというのでかまわないのです。いや、むしろそうでないとうまくいかないと思います。」(57ページ)

「まずは、自分の理解のパターンや無理のないペースを探すために、時間をかけていろいろと試行錯誤をする期間が必要です。」「ですから、いきなり本格的に勉強に取り組むのではなく、少し時間をかけていろんな試行錯誤をする準備期間を持つことが大切なのです。」(67ページ)

「ですから、みんなが良いと言っている本であっても、自分に合わなかったらさっさと捨てることが大事です。」(73ページ)

「勉強や学びのプロセスとは、実は、いったん押し返してみることです。偉い先生が言ったことを鵜呑みにするのではなくて、教科書でも本でもそこで得た知識をもう一度自分なりに組み立ててみる。」(76ページ)

「ささいなことでも疑問を持つトレーニングをしていくと、半年もたつと自分の中から質問が積極的に出るようになります。」(80ページ)

「目標達成は3割でよしとする」(91ページ)

「でも、逆説的なことを言うようですが、私は最初はあまり資料を集め過ぎないほうがいいと思っています。」(103ページ)

「逆説的ですが、ネットの時代だからこそ大事なことは人に聞くのです。」(110ページ)

「つまり、本は少なくとも2回読む必要があります。1回目は、書かれているものをそのまま吸収するという意味で内容を理解する。そして2回目は、少し疑問を持ちながらもう一度読むことで理解を深めていくわけです。」(116ページ)

「それから、もう一つ大事なことは、いきなり読もうとするのではなく、とりあえず自分が目指している何か、自分が得たいものやわかりたいことなどをぼんやりとでもいいから持っておくことです。それを少しでも解明したいという目的意識を持って読んでいくと、頭に入りやすいことが多いと思います。」(118ページ)

「それは、1回目に読んだ際にいきなり線を引かないということです。」「ですから、線を引くならば、2回目か3回目に読むときに引くのがよいでしょう。」(122ページ)

「私自身ノートにまとめたり、メモをつくるということは、ほとんどしていません。ノートに書く時間と労力があれば、もう一度本を読み返して、自分の頭に入れることが大切だと思うのです。もし、書かないと大事なポイントが頭に入らないのなら、そもそもそれは自分にとって必要ではないことだと思うのです。」(127ページ)

「ところが、この本で追究しているような、自分が深く考えていくために勉強するというときには、下手に要点をまとめたり要約をするのはマイナスになると思うのです。なぜなら、そうすることで、本当は理解できていないのに、わかった気になってしまうおそれがあるためです。表面をうまくまとめるという作業に意識が奪われてしまい、内容を深く追わないクセがついてしまうのです。」(132ページ)

「私にとって専門書を読む楽しさは、著者とけんかをすることにあります。」「専門書を読むレベルになったら一歩進んで、絶えずけんかを売りながら読むことをおすすめします。」(143ページ)

学びを熟成させるプロセス
・ものごとを「普遍化」させていく
・似たものを「関連づけて」いくことで、本質をとらえる
・学問と現実を関連づける能力「応用する力」をつける
・頭にいったん入れたことを「揺らしてみる」
・「自分はわかっていない」と感じる経験こそが大切 (146-159ページ)

ここで、文章を書くときに頭に入れておいてほしいポイントが二つあります。
・自分の言葉で書く
・やさしく書く (163-167ページ)

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