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「世界最高の子育て」

「世界最高の子育て」(ボーク重子 ダイヤモンド社)

福島出身で、全米最優秀女子高生で優勝する娘を育てた著者による、子どもに必要な資質を伸ばす方法についての本。昭和の日本の教育を受けてきた者としては、本当にこれで大丈夫だろうかと思う点もあったが、非認知能力を伸ばすという意味で大切な指摘が多く含まれていると思った。

 このコンクール(「全米最優秀女子高生」コンクール)の審査基準には、今後子供たちが世界で生きていく上で必要だとアメリカの教育機関や企業、そして親たちが重視していることが色濃く反映されています。審査項目は5つで、知力25%、コミュニケーション力25%、特技20%、体力15%、自己表現力(セルフ・エクスプレッション)15%の配分で総合点が競われます。(6ページ)

 そこで真っ先に遭遇したのは、「アメリカのエリート教育は英才教育ではない」ということだったのです。これは日本の皆さんには意外なのではないでしょうか。当然そうだろうと思っていた私には驚きでした。
 日本では早期から文字や数を覚えるなど、知識、技能の習得が早い子供を「スーパーキッズ」として賞賛しますが、アメリカでは近年の学術的研究をもとに、こうした早期英才教育は推奨されていません。初等教育に携わるエリート校の教師や、そこに子供を通わせる母親たちが口を揃えて言う「子供時代は子供らしく」という言葉が、早期英才教育を重要視していないことを象徴しています。小学校の入学を1年遅らせる人もたくさんいますから、本当に英才教育はそれほどの関心事ではないのです。(9-10ページ)

 考える力を養う3つの思考法
 3つの思考法について具体的に述べましょう。
①「自分で考える力」
 これは文字通り自分で答えを出すべく考えることです。
②「実行機能」
 これは今アメリカの教育界で最も注目されている能力で、自分で計画し、実行し、結果を出すスキルです。ハーバード大学が「最も育てるべき能力」と言っていますが、ここを訓練すれば「自分からやる子」が育ちます。
③「クリティカルシンキング」
 これはMBAを持っている方にはお馴染みでしょうが、問題解決のために情報を集め、事実を確認し、分析し、推論を立て、反証し、自分の中にある偏見やバイアスに挑戦しながら、思い込みに惑わされることなく論理的に良い結論を導くことです。(37ページ)

 体験させる、自分で発見させる。体で感じて自分で見つけた答えだからこそ心と頭に記憶として焼きつくのです。そして、そんな知識は使える知識として長く頭に残ります。
 楽しく学んだ知識は、頭に長く残りやすいという研究結果も出ています。(44ページ)

 「今日はどうだった?」ではYes/Noと変わらないOKという答えでおしまいです。ですから代わりに「今日はどんなことがあったの?」と質問します。
 我が家は毎晩夕食のときにこの質問をし合いました。ルールはどんなに疲れているときも、オープンエンドの質問に「わからない」はなし、ということ。(45ページ)

 子供には私たちが思っているよりも能力があります。だから「答えを教えてあげないと」と思わないことです。子供は小さいから何となく守ってあげたくなりますが、これでは考える力は育ちません。人生経験が子供より多いぶん、大人は子供より自分の方が良い答えを持っていると思いがちですが、親が結論を言ってしまえば、子供が自分で答えに到達する貴重な学びの機会を奪ってしまうことになります。子供が自分で考えて答えをだすまでじっと待ちましょう。
 忙しいときなど思わずやってしまいたくなりますが、グッと我慢です。
 どうしても助けが必要で助けを求めてきたときは教えるのではなく、手本を見せましょう。そして子供に観察させて、どんな気づきがあったか話し、そして今度は自分でやってみるように言います。(48ページ)

 我が家では娘が何かできたから、手伝ってくれたからといって物質的、金銭的なご褒美は与えませんでした。それではご褒美がやる目的となってしまいます。またお手伝いは家族の一員としての役割という位置付けでした。
 ご褒美は100%の達成感とたくさんの褒める言葉です。そうして得られる自分への自信は、何物にも勝る最高のプレゼントなのですから。(63ページ)

 こんな簡単なことで自制心を高めることができるのです。
 十分な睡眠がなければ自制心が機能しないという研究結果があらゆるところで出ています (中略) だから自制心を鍛えたかったらまずはお子さんが十分な睡眠を取ることを心がけてみましょう。(66ページ)

 お金に限りがあると学んでからは、買うときは、貯金額の1割を超えないこと、1回目は見るだけ、それでも欲しかったら2回目に一番良い方法を考えて買う、ということをルールにしました。(70ページ)

 クリティカルシンキングができる人は以下の特徴があると言われます。
・自分の意見が正しいことよりも最良の結論にたどり着くことのほうが大切
・思考を飛ばして結論に飛びつき断定することがない
・情報を鵜呑みにしない
・感情に惑わされて優柔不断にならない
・他の意見に耳を貸す柔軟性がある
・自分に対しても正直になれるから、自分が間違っていたときその間違いを正せる
・感情に走らないから、どんなときも落ち着きを保つことができる
 クリティカルシンキングは、答えのない問題に自ら最良の答えを見つけるのに必須の思考法です。(71-72ページ)

 クリティカルシンキングの第一歩の「本当にそうか?」と自問する力を習慣にすると、何か言われたとき、何かあったときに、真っ先に自分を責めるのではなく、まずは状況を把握する冷静さが育ちます。(77ページ)

 我が家では毎月、家族の誰か一人が3分間スピーチをしました。大切なことを伝えるには3分もあれば十分ですし、3分間って実は結構長いのですよね。トピックは、情報を伝えることでも、親を説得したい案件でも、ジョークでもOK。(90ページ)

 ですが夫は、「僕は自分が思うことを言ったまでで、重子の言っていることや存在を否定しているんじゃない。人は自分の意見を持つのが普通で、それを口にするのも普通のこと」と言うのです。そして「いろんな考えがあるからいいんじゃないか」とも。
 意見の交換は和を乱すものではなく、お互いから学ぶ機会、とアメリカでは捉えられています。そう考えると、同調で丸く収めるよりは、発展性があるなと思えるようになりました。(97ページ)

 子供が自分の意見を言うためには、子供が安心して話せる環境を用意することが最優先です。(99ページ)

 これは我が家に限らず、アメリカの家庭でよく行われている習慣だと思います。子供が興味のある本や映画などを選ぶと、子供は自然と対話に興味を持ってくれるようです。
 ですから我が家では何を読むか、何を見るかは娘に提案してもらいました。
 友人たちの中には学校の課題図書から選んでいるという人もいました。
 つい最近多くのママ友たちから「うちもみんなで読んだ」と名前が挙がったのは「13 Reasons Why」という中学生から高校生向けの本です。これは高校生の自殺がテーマですが、子供と一緒に読んで話し合うことで、今その子が何をどう考えているのかが無理やり聞き出すよりも自然とわかります。(101-102ページ)

 「デビルズ・アドボケイト(Devil's Advocate)=わざと反対意見を言う人、あまのじゃく」といわれる手法です。学校でも実際よく使われますが、これは建設的対話力の上達に非常に効果的なので是非試していただきたいなと思います。(102ページ)

 伝える力、対話力とその力を育む理由やそのための学校や家庭での工夫を見てきましたが、これから表現力を伸ばす一番の根っことなる部分に触れたいと思います。それは自分に「自信」を持つこと、です。この非認知能力がなければ、どんなに技術を磨いてもその子にとって最大のコミュニケーション能力は発揮されません。(106ページ)

 子供がありのままの自分が好きで自分を大切にできるように、「ありのままのあなたが好き」と言葉で伝えましょう。(115ページ)

 叱られてばかりだと、子供は自分が好きになれないし、自信をなくします。我が家では「どうでもいいこと」については叱らずに見逃しました。(117ページ)

 代わりにポジティブな点を挙げ、子供が自分自身の外見にポジティブなセルフイメージを持てるように育てましょう。(119ページ)

 ヘリコプターペアレンツ。この言葉がアメリカで初めて使われたのは1960年代ですが、今では過保護すぎる親、全てのお膳立てをする親、子供に集中しすぎて子供に自分の人生を捧げてしまっているような親の総称として使われています。(121ページ)

 ヘリコプターペアレンツのもとで育った子供たちは、傍目から見れば超一流の大学生だけれども、自分で自分を見失っている。完全に自信を失ってしまっている事実がここに描かれています。
 失速していく人生。ヘリコプターペアレンツは、子供にそんな未来を約束しているのです。(123ページ)

 自信ある子供を育てるために、私もママ友たちもヘリコプターペアレンツとは真逆のことをしたのです。それは子供の失敗を応援すること。いろんな失敗をしてそこから学んで前に進んでいくから、子供に自分で行動する自信がつくのです。失敗してもやり直しができる、またトライしよう、自分で何とかできるという自分を信じる力が生まれるのです。(124ページ)

 失敗しなければ学べないことはたくさんあります。子供が失敗してそこから這い上がる姿を見るのは歯がゆく辛いものですが、必要なこと。そのためにも親は勇気を持って、多くの失敗を経験できる機会を応援するのが務めかと思います。(126ページ)

 実は今、世界のエリート校が最も注目していると言っていい分野が「レジリエンス(Resilience)」です。レジリエンスは「精神的回復力」や「弾力性」と訳され、「折れない心」などと表現されています。アメリカの心理学会の定義では「レジリエンスとは、逆境、トラウマ、悲惨な状況、脅威、ストレスなどの重大な原因に直面したとき、うまく適応していく過程」とされています。(130ページ)

 では、具体的にどんな取り組みがレジリエンスを鍛える訓練になったのか。「心をポジティブに保つ」「想像力で選択肢を広げる」「良好な人間関係を築く」の3つの日常の習慣を振り返ってみたいと思います。(140ページ)

 親の幸福度は子供の幸福度に遺伝する、といわれます。(中略)
 子供の幸せのためにこそ、親は何があっても譲れない自分の時間を作りましょう。(中略)
 友人でシングルマザーのマイも「子育てで私にとって大切なことがあります。それは自分を大切にすること。私の心に余裕がなければ育つのも心に余裕のない子供ですから」と言っています。(160-161ページ)

 失敗しても「残念でした」という意味の英語はなく、Good try ! (よく頑張ったね)と声をかけます。あくまでポジティブ思考なのです。(168ページ)

 ママ友の一人、ティーン問題専門メディアの編集長を務めるジュディ曰く「親の仕事は子供のパッション(好き)をゴールに導く手伝いをすることだと思っているから、私は子供たちが発する興味のシグナルを見逃さないように観察しました。この子たちが興味を示すのは何だろう、この子たちの好奇心を刺激するのは何だろう。そして私は子供たちにいろんな質問をしたのです。まるでインタビューみたいに、この子が何をやりたがっていて、そのためには何が必要で、という具合に」。(177ページ)


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