君に贈る火星の

　マリーへ。

　火星に到着してから十日が経ったよ。重たい宇宙服を着て、毎日ローバーで走ってるけど、これといった出来事はない。広大な大地が広がっているだけ。

　走りながら僕はいつも君のことを思い浮かべるんだ。君が作ってくれるパスタはとても美味しいとか、目がとても綺麗とか、聴いてる音楽の趣味が良いとかね。

　昨日はようやく石のサンプルを回収できた。これで君を助けられる。君の病気を治す薬を作るには、火星でしか採取できない鉱石の成分が必要だとわかった時はとても辛かった。でも、君のためなら僕はなんだってできる気がしたんだ。頑張ってようやく火星探査のメンバーになれたのは君のおかげだ。

　この手紙を君が読んでいるということは、火星で採った石がちゃんと地球に届いたということだね。石が地球に届いたらすぐに特効薬を作るようにと研究所に頼んである。僕は君が助かることを強く願うよ。どうか君には元気でいてほしいんだ。

　愛してる。

　ロビンより。