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「ソニー技術の秘密」にまつわる話

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ここでは、ソニー株式会社の研究技術開発の要を果たし、「ソニー創成期の基礎技術」を確立させた 木原信敏 (きはら のぶとし) の著書『ソニー技術の秘密』に記された研究開発の歴史を振…
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2020年9月の記事一覧

ソニー創成期の基礎技術を確立した、伝説の技術者が残した名著 〜 『ソニー技術の秘密』 にまつわる話を

■ ソニー創成期の基礎技術を確立した、伝説の技術者1946年 (昭和21)年に井深大、盛田昭夫により創設され、現在では世界的な大企業としてその名を世界に轟かせている ソニー株式会社(Sony Corporation) その創業期より数々の「世界初」「日本初」の製品を誕生させ、ソニー創成期の基礎技術を確立した、伝説の技術者がかつて存在していました。 1950 (昭和25) 年に発売された、国産初のテープレコーダー『G型テープコーダー』。 1955 (昭和30)年に、ト

井深大の秘蔵っ子といわれ、録音・録画文化の礎を築いた伝説の技術者 〜 東京通信工業 (現 ソニー) 新卒採用第1期生-木原信敏

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (1) モノづくりに心奪われた科学少年ソニー創業者の一人井深大 (いぶか まさる、1908 - 1997)の秘蔵っ子といわれ、日本のメカトロニクス機器の原点ともいえる、1950年に誕生した日本初のテープレコーダー『G型』を始め、数多くの「日本初」「世界初」の製品開発に携わり、ソニーを技術面で支え続けた伝説の技術者・木原信敏 (きはら のぶとし、1926 - 2011) 1926 (大正15)年、東京・中野で誕生した木原は、幼少の頃より『科

文字を電波に乗せ送信、ドイツで開発されたテレックスやFAXの原型 〜 『ヘルシュライバー (鍵盤模写電信機)』

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (2) テレックスやFAXの原型『ヘルシュライバー』現在のFAXのように、文字を電波に乗せ送信し印字する機能を持つ文字通信装置の一種『ヘルシュライバー (鍵盤模写電信機)』は、1929年 (昭和4年) に誕生した「メッセージ伝送装置」でした。 発明者であるドイツの ルドルフ・ヘル (Rudolf Hell) にちなんで名付けられたこの装置は、文字を小さな点に分解し電話または電波を通して送信、受信の際は紙テープの上にドットプリンターの要領で

細い針金に音を記録、磁気録音機の元祖 〜 『ワイヤーレコーダー (鋼線-こうせん-式磁気録音機)』

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (3) 磁気録音機の元祖『ワイヤーレコーダー』1898 (明治31) 年に、デンマークの ヴォルデマール・ポールセン (Valdemar Poulsen) によって開発された「テレグラフォン (Telegraphone)」が原型となる『ワイヤーレコーダー』は、その名の通り、細い針金状のステンレスワイヤーに、磁気記録の形で音声を記録する「磁気録音機の元祖」と称される機械でした。 日本では 1934 (昭和9) 年頃から、逓信省電気試験所や東

GHQの将校から知らされた、テープを巻いて音を出す機械とは?〜未知の機械「テープレコーダー」開発に着手

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (4) GHQの将校から知らされた 「テープレコーダー」 の存在1949 (昭和24) 年6月、 東京通信工業 (現 ソニー、以下 東通工) の技術者として採用された木原信敏の手によって開発された『ワイヤーレコーダー』は、製品化を目前にステンレス製ワイヤーの加工に必要な (会社が倒れかねないほど高額な) 「ダイヤモンドダイス」の購入が必要とわかり、ソニー創業者の一人・盛田昭夫が社運をかけて購入を決断します。 『ワイヤーレコーダー』開発のお

フライパンとしゃもじで磁性粉を作成!? 国産初 『テープレコーダー』 開発の第一歩 〜 音の出る紙 『ソニ・テープ (Soni-Tape)』

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (5) どうすれば磁石の粉が作れるのか?GHQの将校が東京通信工業 (現 ソニー、以下 東通工) に持ち込んだ未知の機械「テープレコーダー」の音や操作性に感銘を受けたソニー創業者・井深大と盛田昭夫は「テープレコーダー」の開発を決意。入社2年目となった木原信敏にその開発が託されることになります。 「テープレコーダー」開発決断のお話はこちら↓ 1950 (昭和25) 年に入ると、東通工で生産される「テープレコーダー」に使用する「磁気テープ」

東通工 (現ソニー) 念願の「録音できる機械」製品開発の可能性を実証! 〜 『簡易試作テープレコーダー』

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (6) 『簡易試作テープレコーダー』を制作1949 (昭和24) 年6月、 東京通信工業 (現 ソニー、以下 東通工) 入社2年目を迎えた技術者・木原信敏は、ソニー創業者の一人・盛田昭夫と共に、東京・神田の薬品問屋街で手に入れた「蓚酸 (しゅうさん) 第二鉄」を、フライパンでしゃもじで煎って作成した磁性粉 (磁石の粉) を8㍉幅の紙テープに塗布した自作「磁気テープ」の録音再生のテストをするために、簡単な装置を組み上げます。 フライパンが活