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【初めてのガイド】福岡インディペンデント映画祭ってどんな映画祭?自主制作映画とは?

はじめに

わたしたちは福岡インディペンデント映画祭(以下、FIDFF)という、自主制作映画を中心に上映活動を行う団体です。このNoteではFIDFFについてだけでなく、「自主制作映画(以下、自主映画)とは何か?」ということも簡単にご紹介したいと思います。

FIDFFってどんな映画祭なの?

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FIDFFは2009年、自主映画の上映を通じた国内外の映像制作者の発表と交流、育成の場づくりを目的に始まりました。

惜しまれつつも昨年終了した「アジアフォーカス・福岡国際映画祭」の協賛企画だったFIDFF。今年度は福岡市が毎年9~10月に開催する「アジアンパーティ」の一つとして参加しています。

第2回の2010年には全国から作品を公募するコンペティションを開始。以降はコンペティションを目玉に開催してきましたが、2017年(第9回)から公募は偶数年の開催に変更しました。今年のような奇数年は、前年度の受賞作と招待作品を「セレクション上映」する形で開催しています。

ちなみに略称「FIDFF」は「ふぃでぃっふ」と呼びます。

そもそも自主映画って何?

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FIDFFが主に上映している「自主映画」。その言葉に馴染みがない人も多いのではないでしょうか。

「自主映画」とは簡単に言うと「制作資金を監督や俳優などスタッフが自分たちで出資して制作する映画」のこと。その対極が、大手シネコンなどで劇場公開される前提で資金が募られ、制作・興業が行われる「商業映画」になります。

高校生や大学生などが撮った「学生映画」や長い時間掛けて作られたアニメーション、実験映画、個人によって撮られたドキュメンタリーなども多くが自主映画に分類されます。そして「インディペンデント映画」と呼ばれることも多く、そのためFIDFFは「福岡インディペンデント映画祭」と名乗っています。

また自主映画出身で、著名な映画監督として活躍する方も多くいらっしゃいます。「新世紀エヴァンゲリオン」の庵野秀明監督も若い頃に自主映画を作っていた一人。若手映画監督の登竜門として知られている「ぴあフィルムフェスティバル」も多くの自主映画を取り上げる映画祭で、歴代入選監督も錚々たるメンバーです。

▼ぴあフィルムフェスティバル歴代入選監督の一部
犬童一心監督『ジョゼと虎と魚たち』『のぼうの城』『引っ越し大名!』
黒沢清監督『トウキョウソナタ』『岸辺の旅』『スパイの妻』
園子温監督『愛のむきだし』『冷たい熱帯魚』
中島哲也監督『告白』『下妻物語』
荻上直子監督『かもめ食堂』『彼らが本気で編むときは、』
内田けんじ監督『アフタースクール』『鍵泥棒のメソッド』
石井裕也監督『舟を編む』
山戸結希監督『溺れるナイフ

自主映画の魅力とは

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自主映画は非常に予算が少なく、厳しい条件で作られることが多いのが現状です。しかし、その一方で「自分たちの好きなように自由に映画を作ることができる」のが良さでもあり、監督の思いや伝えたいことがダイレクトに伝わってくるのも魅力の一つです。

そのため普段CM業界などの第一線で活躍されている映像作家が「自分の作りたいものを撮りたい!」と自主映画を作るケースや、テレビや商業映画で活躍する俳優で監督志望の方が撮るケースも多く目にします。

実際にFIDFFに応募される方々は、映画監督を目指して日々奮闘している人はもちろん、芸術系の学生や映画以外の映像業界で働く人、そして誰かに伝えたいことがあってチャレンジする人など、背景はさまざまです。

FIDFFの見どころとは?

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FIDFFは、日本で一番と言っても過言ではないくらい多くの自主映画を上映する映画祭です。コンペを実施した昨年度(2020年)は約110作品を上映いたしました。

過去にはある監督さんから「FIDFFは自主映画の祭典ですね!」といわれたことがあります。コロナ禍以前は、多くの関係者が福岡に集まり授賞式後のパーティはとても賑やかでした。

そしてFIDFFは「自主映画に取り組む多くの映像制作者に発表と交流の場を提供したい」という思いで運営しています。

そのため、できるだけ多くの応募作品を観客の方へお届けできるように運営を行っています。つまり、FIDFFは「監督の伝えたいことがダイレクトに伝わってくる映画」「ここでしか見ることができない映画がたくさん集まっている」映画祭です。きっと胸を打たれる映画、そして感動する映画、考えさせられる映画が見つかるはずです。

実はこの文章を書いている中の人も、学生時代にFIDFFに出会うまで映画はほとんど見たことがない人でしたが、面白い映画に当たったときの衝撃と「ここでしか見ることが出来ない」という自主映画ならではの事情にハマり、10年以上ボランティアとして携わっています。

映画祭スタッフも映画が好きな人、学生時代などに映画を作っていた人、イマも映画が好きな人などさまざまです。

自主映画は短編映画が多いのも特徴です。そのため「長い映画は飽きちゃうんだよな……」と思う人にも、サクッと気軽に楽しんでもらえる作品がたくさんあります。

また映像制作者同士の交流だけで無く、お客様との交流もFIDFFは大切にしています。そのため、上映時にご来場いただいた監督や関係者の皆様には登壇いただき、舞台挨拶の時間を設けています。お客様からの質疑応答も可能なので、会場で監督に質問してみると、より映画を楽しめます。

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写真は2019年に実施した、ヤン・イクチュン監督と、監督と過去に福岡で作品を撮られた安藤大佑監督の特別上映での一コマ。監督・主演作『息もできない』で一気にスターとなり、役者としても日本映画にも出演されているヤン・イクチュン監督ですが、お客様からの質問にも丁寧に、そして優しく答える様子が印象的でした。

アジアとの繋がり

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FIDFFは長年にわたってアジアの映画関係者ともお付き合いがあります。その中でも韓国・釜山の「釜山独立映画協会」とは10年以上にわたる交流と交換上映を続けており、FIDFFの推薦作品は釜山国際映画祭の会場「映画の殿堂」で上映されます。

その他にも、釜山で開催される映画ワークショップにFIDFFから監督を推薦することもあります。

また本年度は台湾の国立台北芸術大学映画学科からの推薦作品を上映するなど、これまで以上にアジアの若手映像作家との交流の幅を広げていく予定です。

さいごに

2021年はセレクション上映として、昨年度の受賞作を含む全32作品を招待上映します。一本一本が自信を持ってお届けできるものばかりです。来週以降は、その作品そのものの魅力についても解説してきたいと思います。

(執筆:Aika TACHIBANA)


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