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小さな行動の積み重ねが最強のチームを作るー『THE CULTURE CODE』

”最強のチームをつくる方法”というタイトルは前から見ていたけれども少し誇張表現っぽくて敬遠していた。少し前に大型の本屋さんに行く機会があり、立ち読みしていたら、監訳者まえがきに以下のようなことが書いてあったのですぐに購入した。

強いチームの文化を醸成するためのカギは、高度なスキルを持つ優秀なメンバーを集めることにはない。迅速な意思決定と実行でもない。そもそも「強いリーダー」は必要ない。(中略)小さな行動の積み重ねが大きな違いを生み出す。

適切な人(=スキルの高いメンバー)をバスに乗せるべしという話もどこかで聞いたことがあったので、これは何か学びがあるのではないかと。ということで、『THE CULTURE CODE ―カルチャーコード― 最強チームをつくる方法』を読んだので気になったポイントをピックアップしてご紹介したいと思います。

小さなシグナル

人は小さなシグナルを感じ取って行動を起こしたり、行動を変化させる。このシグナルにより、人の帰属意識やクリエイティビティを発揮することも可能になる。シグナルは、「感謝を伝える」「個人のやりがいを伝える」などの些細な言葉かもしれないし、仕組み(ミーティング、セレモニーなど)を実装することでもある。このようなシグナルを少しずつ積み上げることで最強のチームを作ることが可能になる。本書では、成功したチームがどのようなシグナルを出しているのか、実装しているかに注目している。

その共通項を本書では、以下の3つにまとめている。

1. 安全な場所をつくる(Build Safety)
2. 弱さを共有する(Share Vulnerability)
3. 共通の目標を持つ(Establish Purpose)

1.安全な場所をつくる

安全な場所をつくる、ではもちろん発言・行動することが非難されないということについても書かれているのだが、帰属意識を高める3つのメッセージが個人的には印象深かった。

1. チームの一員である
2.このチームは特別であり、高いレベルが期待されている
3.あなたにはそのレベルに達する力があると信じている

p118

上記のようなメッセージが伝わるように継続的に小さな言葉を書けると、扁桃体が反応して受け取り手の行動を変える。

章立てとしては別の章にあったネイビー・シールズのデイブ・クーパーは以下のようなことも言っている。この言葉は心理的安全性の裏側を表していると思う。

「リーダーとして、もっとチームに対して責任を持たなければならない。ここでの問題は、人間は権威に弱いということだ。上官から何かを命令されると、ほとんど本能的に従ってしまう。たとえその命令が間違っていたとしても。つまり、誰かが誰かに命令するという意思決定法は、とても危険だということだ。
そこで問題は、そうならない環境をどうやってつくるかということになる。階級にとらわれず、誰もが自由に意見を言えるようにするにはどうするか。そのためには、誰もがリーダーになる必要がある。上からの命令に従うだけではダメだ。自分で考えて動けるようにならなければならない。

p241

2.弱さを共有する

ある実験で、冷たい聴衆を前にスピーチをするという苦行を経験した人は他人への協力度合いが50%上昇する、ということが明らかになっている。このような現象をハーバード大学の組織行動学者のジェフ・ポルザー氏は「弱さのループ(Vulnerability Loop)」と呼んでいる。弱さを共有することで、それを共有された受け手が反応し、思いやりと助け合いの精神が生まれ、信頼関係が醸成される、というものだ。

「心理的安全性」という言葉は最近聞き飽きた感があるが、小さなコミュニケーションひとつでこういった信頼関係が少しずつ作られていく、ということを改めて感じさせる事例がいくつも紹介されている。

3. 共通の目標を持つ

「心理的対比」という、目標を設定し、その目標を達成するための障害をイメージするという手法が、簡単かつ効果的であると実証されている。目標を持つことで、それに到達するためのことに意識が向き、行動を促すのだろう。

・ふりかえりの重要性

信頼関係が築かれると、ふりかえりやフィードバック(時には批判的な)をオールブラックス、ピクサー、ネイビー・シールズなどの事例が紹介されている。例えば、ピクサーではブレイントラストという制作中の映像の問題点を全て洗い出す会があったりする。また、特殊軍事組織のネイビー・シールズのAAR(アフター・アクション・レビュー)では作戦直後にそれぞれがとった行動、なぜその行動をとったのか、その結果、次も繰り返す行動、改善する行動、について議論をする。

・優秀なチームが平凡なアイデアを超越させる

ピクサーの共同創業者で会長である、エドウィン・キャットマル氏の以下の言葉は心に響いた。様々なイノベーションがアイデアが優秀だったと言われることが多いので、そうではなくイノベーションは生み出すことができる、と励まされているようだ。

この業界にかぎらず、どの業界も同じだと思うが、人間よりもアイデアを重視するような傾向がある。しかしそれは間違いだ。どんなにいいアイデアでも、平凡なチームの手にかかれば、間違いなくダメになるだろう。しかし優秀なチームなら、平凡なアイデアからいいものをつくることができる。だから私の仕事でいちばん大切なのは優秀なチームをつくり、彼らが正しい方向に進めるようにすることだ。彼らは自分で、失敗と成功の判断ができるようになる必要がある。— p365 『最強のチームを作る方法』

おわりに

文字面でいろいろと書きましたが、上記以外の気になるポイントも含めて簡単にメモ書き1枚を書いてみた。

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本書を読んで、チームとして成功するには、個人のスキルももちろん大事だけれども、個々人がスキルを最大限に発揮したり、リーダーシップを発揮できるような場づくりのようなものが小さな積み重ねで出来上がってくるのだと思いました。

この小さなシグナルを改めて意識し、行動することと、問題や失敗から自分たちの価値観を掘り起こして言語化することの意義を感じた良書でした。

小さな普通のことをどれだけ意識して実装できるか、これにかかっているなあ。


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