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ピクサーの成功ストーリーから考える

今日は『PIXAR 〈ピクサー〉 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話 』を読んだので読んだ感想というか、考えたことでも書いてみようと思う。

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スティーブ・ジョブスからの突然の依頼で経験のないエンターテインメント業界へ飛び込んだ、筆者ローレンス・レビー。当時ピクサーは困難に面しており、従業員はオーナーであるスティーブへの疑心を持っていた。「スティーブから送り込まれた者」として部外者扱いされるものの、現状把握のために情報を集め、学習し、ピクサーをIPOし、巨大企業ディズニーにも負けずに進んだビジネスの奮闘の模様が理解できる。

ビジネスの分析のステップや、交渉術などビジネス世界のリアルも多分に含みつつ、エンターテインメント業界における巨大企業の威力を理解し、オルタナティブなありかたを提唱するベンチャー的マインドも学ぶことができる。

アニメーションに生を吹き込むのはすべての現場のメンバーという形で、クリエイターだけでなくバックオフィスのメンバーまでも一貫して尊重したその姿勢は、「このようなエグゼクティブの元で働きたい」と思わせた。

文化は目に見えないが、それなしにイノベーションは生まれない。新しいものを生みだす元は、普通、状況や環境ではなく個人だと考える。そして、その人をヒーローとしてあがめ、そのストーリーを語る。だが、その実、イノベーションは集団の成果である。天才がいなければ生まれないかもしれないが、同様に、環境が整っていなければ生まれない。活気も大事だ。だから、なんとしても、ピクサーの文化と活気を守らなければならない。

ローレンス・レビー. PIXAR 〈ピクサー〉 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1506-1510). Kindle 版.

ディズニーに買収する際の重要な交渉要素としても、ピクサーの独自性を守り続けた。

もうひとつは買収でまず考慮されることのない点だったが、今回はこれが一番の争点となった。ピクサーの運営方法や文化がいままでどおり保たれること、だ。クリエイティブなプロセスに経営幹部は口を出さないと決めたときから、ピクサー流を守ろうと必死の努力をしてきたのだ。ここは買収後も守ってもらう必要がある。逆にピクサー流が保たれないなら買収には応じられない。スティーブがアイガーに申し入れた。

ローレンス・レビー. PIXAR 〈ピクサー〉 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.3866-3870). Kindle 版.

このような姿勢を心がける企業は2000年以降、増えているのではないか?ちょうど並行して読んでいた、「ハーバード・ビジネス・レビュー 2020年3月号」の「パーパスを戦略に実装する方法」に、成長を牽引する3つの戦略に加えて、「事業にパーパスを組み込む」ことが重要になってきており、更にそのパーパスは戦略の中核になりはじめているという論文があった。

成長を牽引する戦略3+1
1. 新しい市場の創造
2. 幅広いニーズへの対応
3. ゲームのルールの変更
4. 事業にパーパスを組み込む

複雑性がますます高まる時代のなかで、「つくる人」「とどける人」として現場のことを一番理解している人々を尊重し、彼らがスムーズに仕事ができるようにサポートするという、「従業員中心的な考え方」が2020年代に、加速していくのかもしれない。

経営者はパーパスを語る、具体的なストーリーが必要になる。

現場はよりクリエイティブに、工夫しながら仕事する必要があるし、マネジメント層へ適切にサポートを求め、現場の情報を伝えることが必要になる。

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PIXAR 〈ピクサー〉 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話 』はKindle Unlimitedで読めるのでご興味ある方はぜひ読んでみてほしい。



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