見出し画像

ホラー苦手だけど観れそうなやつを観る:第1回【ゲット・アウト】

はじめに

 最近、『ホラー苦手』という話題が反響を呼んでいる。というのも、『Fate/GrandOrder』の2020年夏イベがホラーがテーマになっているからで、これが結構気合の入った演出でホラー苦手民を戦々恐々とさせているというわけだ。

 僕自身、ホラー映画は苦手だ。ホラー掌編を書いてるくせになんだそれはと思うかもしれないが、本と映像とでは違うのだ。

 例えば僕は漫画だと『不安の種』シリーズが好きだ。けっこうトラウマになるような怪異が続出する作品だが、それでも読んでいると「あ、これ次のページで来るな」というパターンが分かるのだ。そこで嫌な予感を感じた僕は覚悟を決め、なるべくゆ~~~~~~……っくりページをめくる。中山昌亮先生独特の、デフォルメが現実を侵食したようなクリーチャーがそこにいる。僕は「ほら来たよー!!」と怖がりつつも怪異の個性やデザインの妙を楽しむ。

 しかしこれが映像作品だとそうはいかない。「あ、これ来るんじゃないの!?」と思っても、なかなか怪異は姿を現さない。「今出てくるタイミングじゃん!!」と思っていても全然出てこない。不気味な劇伴や効果音が張り詰めた神経を弄ぶばかりである。そして「なんだ来ないんじゃん……」と油断したところで「ギュワン!」みたいなSEと共に姿を現す怪異!

 要するに、ホラー映画は『完全に映画のペースだから苦手』なのだ。ホラー映画の前で観客ができる抵抗は数少ない。PCで観ているならばブラウザを半分にしてもう半分の画面でTwitterを観るとかできるが、映画館だともう目をつぶるか恥を忍んでシアターから逃げ出すくらいしかできない。

 それでも、「これ面白そうだな、めちゃくちゃ怖そうだけど」と思わせる作品がいくつか世の中に存在する。僕はその中でもさらに「これはあんまり怖くないんじゃないか……?」と推測されるやつを選んで観てみることにした。

 これから(おそらく)数回にわたって綴られるのは、そんな風におっかなびっくりホラー映画を見始めた僕の軌跡である。個人的な『怖くないポイント』と『怖いポイント』を記すが、革新的なネタバレは控えるので、ホラーが苦手だが面白い映画は観たいという方や、ホラーへの苦手意識を克服したいという方の参考になれば幸いである。


今回の映画:『ゲット・アウト』

画像1


 この試みにおいて僕が最初に観たのは『ゲット・アウト』。コメディアンでもあるジョーダン・ピール監督の作品で、彼の名を一躍轟かせることとなった作品でもある。


あらすじ

 写真家である黒人の青年、クリスは恋人のローズの実家に挨拶に行くことに。ローズの実家はニューヨーク郊外の高級住宅地にあり、彼女の家族から快く迎えられるが、二人の黒人の使用人──ウォルターとジョージナ──の様子がどうにも怪しい。

 翌日、ローズの実家で開かれたパーティの出席者は白人ばかりで、全員が品定めするようにクリスを見つめる。クリスは友人に電話をしようとしたが携帯電話の充電が切れている。ジョージナは「清掃中に誤って抜いてしまった」というが……。

 その後、クリスは出席者の黒人の青年、ローガンの写真を撮ろうとするが、誤ってフラッシュを消し忘れてしまった。すると、フラッシュを浴びたローガンは鼻血を流して豹変し、「出ていけ!出ていけ!」と叫びながらクリスにつかみかかる。そしてクリスは恐怖の一夜を体験することに……。


 あらすじはそこそこに、この映画の『怖くないポイント』と『怖いポイント』を挙げよう。


怖くないポイント


①出てくるのは人間だけ

 この映画で登場するのは人間だけである。トラウマになるような不気味なクリーチャーなどは一切出てこないので安心してほしい。


②あんまりビックリはしない

 不意打ちで観客をビビらそうという映画ではない。全然ない、というと語弊があるのだが、それでもシャンプー中に目を開けるのも怖くなるような演出ではない。ほどほどに安心されたし。


③主人公がしっかり反撃する

 ジョーダン・ピール監督作品の安心できるところはここである。どんな恐怖が描かれようと、主人公はやられっぱなしではない。必ず反撃する。それもけっこうフィジカルに重きを置いた反撃である。なので彼の作品は観ているとどこかで必ず「テメー散々びびらせやがってこのやろー舐めてんじゃねーぞ!?」と主人公とシンクロできる瞬間がある。これぞ感情移入だ。


怖いポイント


①人種差別が怖い

 2020年8月現在2作あるジョーダン監督作品はいずれも黒人をテーマにしている。彼の映画は現実にある人種問題の寓意なのだ。『ゲット・アウト』では白人に搾取される黒人という構図を描いているが、それとは別に『黒人差別に無頓着な黒人』という別の問題も描いている。この映画で描かれたのは「デフォルメされた現実」であり、この映画で我々が感じた恐怖は実在するのである。

 ……などと語ってみたが、個人的に怖いポイントはここだけである。いや、別にこの映画が怖くないというわけではない。ただ、「視聴を後悔するほどの恐怖」や「トラウマになって物陰に何かを幻視するような恐怖」はないので安心してほしい。


 以上が僕が『ゲット・アウト』を観た感想である。恐怖は感じさせつつも、「うわーもう無理ー!!」となるような映画ではなかったので、ホラー苦手民がホラー慣れするための最初の一本として適当なのではないだろうか。

 ジョーダン・ピール監督作品は『アス』も観たのでそちらも今度記事を書こうと思う。


 もし僕に観てほしいホラー映画があるという方は是非コメントなどに書いてください。絶対観るという確約はできませんが、サポートの際のコメントに書いたりすると視聴を強制することができます。あんまり怖くないやつでお願いします。

 では、また次回。

気に入っていただけた方、よろしければサポートをお願いします。記事の購入でも構いませんので、お待ちしております。