あなたにとって「特別」な日本茶はありますか?
FAR EAST TEA COMPANYというお店
まだ実家で暮らしていた頃、夕飯の後には決まって母がお茶を淹れてくれました。
それが当たり前でないと気が付いたのは、一人暮らしを始めてから。デザートを食べる時、テレビを見る時、雑誌を読む時。思えばそんな家で過ごす時間の傍らには、いつもお茶がありました。日によってそれはコーヒーだったり、ココアだったりと様々でしたが、部屋で飲む暖かい飲み物はただそれだけで心落ち着く時間を作っていてくれたように思います。
そのことに気付いてからは、お茶を買い、急須や鉄瓶を揃え、実家の母が淹れてくれていたように、自分の部屋でもお茶を淹れるようになりました。その内自分でお茶を探すようになり、美味しいお茶とその生産者に出会い、そのお茶を友人にも勧めたいと思うようになりました。
ささやかですがこれが、私たちがこのFAR EAST TEA COMPANYというお店を始めようと思ったきっかけです。
さて、私たちは先日、毎月2種類のお茶が届く定期便を始めました。全国各地を駆け回って見つけた、美味しいシングルオリジンの日本茶が届く定期便です。
ここに至るまで、1年以上の時間を費やしました。全国の生産者を訪ね、彼らの話を聞き、200種類以上のお茶を飲み、その味わいや製法を勉強し、気が付けばお茶にどっぷりと没頭していた濃密な1年間は、どこを切り取っても楽しい思い出ばかりです。
今回お話しするのは、そんな「お茶」の何が、こんなにも私たちを夢中にさせているのかということです。
私たちがシングルオリジンにこだわる理由
FAR EAST TEA COMPANYが選んだお茶は、どれも単一農園・単一品種で作られた、シングルオリジンのお茶ばかりです。
元来、ほとんどのお茶は合組(ブレンド)で作られています。味や香りのバランスを整えてより美味しいお茶を作ったり、毎年の品質を安定させたりと、合組には合理的な理由があり、茶業の発展には必要なプロセスです。
ですがその反面、産地や品種の個性が見えづらく、誰が作っているのかが分からないといったデメリットもあります。
その生産者が、どんなコンセプトや想いを持ってお茶を作っているのか。その品種が、どんな香りや味わいを持つ品種なのか。そういったお茶の「個性」を楽しもうとした時、旧来の合組されたお茶ではどうしても個性が隠れてしまうんです。
シングルオリジンのお茶が私たちに見せてくれるのは、そのお茶のバックグラウンドの部分。どんな生産者が、どんな土地で、どんな想いで作ったのか。それを知ることができるのが、シングルオリジンの一番の魅力です。
シングルオリジンは、隠し事のできない真っ向勝負
当然、シングルオリジンにもデメリットはあります。
品種特性がそっくりそのまま現れるため、渋味や苦味もダイレクトに出てしまう。お茶の味はその年の気候によって変化するため、毎年同じ味を作るのが難しい。既存の流通には乗らないため、生産者自身で販路を開拓しなければならない等々。
そもそも既存のお茶とは全く違ったものを作るんです。変化を受け容れ、手探りで新しいことにチャレンジするのが難しいのは当たり前でしょう。
でも、それってめちゃくちゃ熱くないですか?
生産者が全力で作ったお茶を、そのお茶が持つストーリーまで含めて全て、消費者である私たちも全力で受け止める。
どの生産者も、美味しいお茶を作るために毎年試行錯誤しながら、文字通り尽力していますが、天候によっては振るわない年もあるかもしれない。そもそも自分の好みはその生産者のコンセプトと合わないかもしれない。
それでも、そのお茶が作られた土地を知り、人を知り、その品種が持つ味わいや香りを知り、その上で「ああ、今年もやっぱり美味しいね」「去年よりもっと良くなったね」なんて言いながら飲むお茶が、私たちは大好きなんです。
そしてこんなに面白くて美味しいものを、皆さんにも教えてあげたい。それが、私たちFAR EAST TEA COMPANYが今一番やりたいことです。
お茶を知り、お茶を飲み、お茶を好きになるということ
正直に申し上げると、私たちは1年前までどこにでもいるお茶好き、ただの素人でした。それが今では、ブラインドでお茶の品種や生産者を言い当てたり、お茶に含まれる香気成分の話をしたり、生産者の方と土づくりや加工など、専門的な会話ができるようにまでなれたんです。
それはきっと、産地を知り、栽培法や加工法を知り、生産者の想いを知り、その上でお茶を飲み続けてきたから。
一つ一つのお茶が私たちにとっては特別で、重厚で刺激的なストーリーを持った、多分に感情移入してしまうお茶です。
ワインやコーヒー、クラフトビールの世界では、既にその様な楽しみ方が広まっているように思います。知ることが楽しくて、どんどん調べて、どんどん飲んで。それを繰り返している内に、気が付けば人より何倍も詳しくなっている。飲み物だけでなく、音楽や映画も同じように、そんな趣味が皆さんにもあるんじゃないでしょうか?
少し出遅れはしましたが、お茶にもそんな楽しみ方があっても良いと思うんです。そのお茶のことを知ることで、そのお茶が何倍も面白く、美味しくなる。私たちがしてきたのは、そういう体験です。
あなたの「特別」が見つかるお茶屋さん
私たちのストアに並ぶお茶に、「普通のお茶」は一つとしてありません。
全てのお茶が、生産者の方から直接お話を伺い、実際に私たちが飲んで厳選した、自信を持ってオススメできる最高の日本茶です。
さらに言えば、私たちのお茶の生産者に「普通の生産者」は一人もいません。本当にお茶が好きで、全身全霊の情熱と技術でもってお茶を作る彼らの姿はそれだけで美しく、お茶と向き合うその姿勢にはただただ只管に感動します。
そんな大切なお茶を預かると考えると、私たちも背筋が伸びる思いです。
どうすればこの感動を、皆さんにも伝えられるのか。どうすれば私たちが特別に感じているお茶たちを、皆さんにも特別に思ってもらえるのか。毎日頭を捻りながら考えています。
ストアでは、それぞれのお茶にまつわるストーリーも紹介しています。どんな景色の畑で、どんな生産者が、どんな想いで作っているのか。私たちが言葉を尽くし、景色を切り取りながら綴った渾身の文章です。
お茶を選ぶ際は、是非その背景も含めて選んでみてください。そして私たちに、あなたの「特別」を見つける手助けをさせてください。
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