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コンサルティングファームの中途採用動機

要旨

  • コンサルティングファームの求人は、一般的にどのような動機でされているか、動機ごとにどのような職位を求めているかの超概説。

  • 転職をお考えの際、その求人がどのような意図でされているのかの頭の整理用途としてご笑覧ください。

本文の前提

  • 採用計画の策定・管理の経験に基づき記述しているが、コンサル業界全てに該当するかの検証はしていない。フェルヲの主観に基づくものである。

  • 新卒採用は中途とは毛色が異なるため本文の対象外とする。
    但し、中途採用の動機は、新卒の方も何らかの示唆になるかもしれない。

  • 「こうすれば採用される!」「刺さる応募書類!!」「フェルミ推定の即効テクニック!!」みたいなことは言及していない。

コンサルティングファームはどのような動機で中途採用をするか

日本のコンサルティング市場の成長率は若干の鈍化は見られるものの、依然成長傾向にある。採用活動もこの潮流に連動し積極的にされている。

2021年の国内コンサルティング市場は前年比11.4%増の5724億円、コロナ禍の影響を脱し復調─IDC | IT Leaders (impress.co.jp)

巷でしばしば見られる「なぜコンサルティングファームは積極的に中途採用するのか」という問いに対する、
「市場が伸びているから」「異業種の知見を必要としているから」といった回答は、間違ってはいないが具体性に欠けており、求職者に対する示唆にはならない。

このような背景のもと本文では、コンサルティングファームが中途採用をする一般的な動機を、フェルヲの現場視点での主観に基づき超概説する。

中途採用の動機の構造

コンサルティングファームが中途採用をする動機は、
①既存プラクティスの拡大や維持と、
②新規プラクティスの創出の2点にある。
それぞれの具体例を述べる。

① 既存プラクティスの拡大や維持

この動機は、①-A:プロジェクト取れそう(or 取れちゃった)系と、
①-B:人がゴソッと辞めちゃった系の2点である。

①-A:プロジェクト取れそう(or 取れちゃった)系
あまりTwitterで話題にならないが、
コンサルティングファームもパイプライン管理をしている。

そのためファームでは、将来、どのようなプロジェクトが立ち上がるかの予測を常にしており、それに基づきコンサルタントのアサイン計画が策定されている。
その際、将来、既存のコンサルタント数では不足すると判断された場合、既存プラクティスの拡大を目的とした中途採用を実施する。

この動機の場合、中途採用の対象職位はスタッフ(C~SC)~マネージャー(M)層であることが多い

なお、まれに計らずも、火急なプロジェクトの立ち上げや拡張をクライアントから依頼される場合がある(取れちゃった系)。
近年は需要に対して(必要最低限のクオリティが保証された)コンサルタント数が枯渇している背景から、主要ファームはこれに応じることは多く無い(ようにフェルヲは感じている)。
なぜなら、転職市場で枯渇傾向にあるコンサル経験者を(手早く必要数)採用する場合、比較的高年収となってしまい、報酬制度が崩れて将来の収益性にリスクを抱えるからだ。
また、コンサル未経験者を採用する場合も教育期間が不十分になってプロジェクトのクオリティにリスクを抱えるためだ。

しかし、急拡大を図っているベンチャーファームは、上記のリスクをとって貪欲に受注を目指しているように見える。

①-B:人がゴソッと辞めちゃった系

これは、短期間で多くのコンサルタントが辞めてしまった場合である。
日系老舗企業の場合、待遇の悪化やリストラがきっかけになろうが、
近年のコンサルティングファームの場合、パートナーが部下を引き連れて転職するケースがきっかけとして良く見る。

この場合、ゴソっと辞められた側のファームは、既存プラクティスの維持(売上の維持)のための人員充当のため、中途採用を実施する。

この動機の場合、中途採用の対象職位は、スタッフ(C~SC)~マネージャー(M)~ディレクター・パートナー(MD・P)層と幅広い

なお、パートナーが部下を引き連れての転職に対して、デロイトが訴訟に踏み切ったことは知る人も多いだろう。
デロイトは訴訟を通じて、今後「ゴソッと辞められる」ことの抑止を図ったのだろうとフェルヲは想像するが、この訴訟が、今後コンサルティング業界の慣行にどのような影響を及ぼすかは分からない。

部下らの引き抜き「背信的」、コンサル大手元役員に5千万円賠償命令:朝日新聞デジタル (asahi.com)
デロイト「コンサル引き抜き」訴訟でとばっちり!?ビッグ4に人材流出続く国内組の悲哀 | 勝ち組に死角! コンサル大乱戦 | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)

②新規プラクティスの創出

これはファームが新たなプラクティスに挑戦したい、それを実現するためのノウハウが欲しい場合である。
一例を挙げればデジタルやらカーボンニュートラルやらである。
例えば、マッキンゼーやBCGはデジタルプラクティスに食指が動いている(いた)し、big4等の総合系はカーボンニュートラルの潮流を知り、それに対処するノウハウを有する人材を積極的に集めている(いた)。

この動機の場合、中途採用の対象職位は、ディレクター・パートナー(MD・P)層が多い
理由は①と異なり新プラクティス市場の開拓が求められるため、知識・経験や人的ネットワークが豊富なシニアが適切だからだ。

なお、②はファームにとって未知であり、採用すべき人材像も曖昧であることが多い。

まとめ

一般的に、コンサルティングファーム求人の動機は、
①既存プラクティスの拡大や維持②新規プラクティスの創出の2点あり、
①は①-A:プロジェクト取れそう(or 取れちゃった)系と、
①-B:人がゴソッと辞めちゃった系に大別できることを示した。

さらに、それぞれの動機ごとにターゲットとしている職位を示した。

本文はフェルヲの現場視点での主観であり、
さらには採用というテーマの性質上一般論な内容になってはいるが、
本文がコンサルティングファームへの転職検討の際の参考情報になれば有難い。

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(1時間48分)

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