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奢り奢られ論争から見る社会のタコツボ化

要旨

  • ツイッターアンケートの結果はフォロワー属性が如実に出る

  • 奢り奢られ論争をツイッターでやると心地よいのには理由がある

アポ後に請求されたら64%以上が「払わないで様子を見る」の蓋然性

ある休日の昼下がりにツイッターをしていたら、男性とのアポを繰り返していると思われる女性アカウントを見かけた。
彼女は先日デートした男性から、後日飲食代を請求されたことに問題意識を持ったようで、ツイッター上で請求された場合はどのように対処するかをアンケートしていた。

フェルヲはこの結果(正確には回答状況。当時まだ結果が出てなかったため)を見て違和感を抱いた。

フェルヲの価値観では、例えどんなにつまらない会合であったとしても、二度と会わないだろう相手であっても、請求されれば(内心では多少の悪態をつきつつも)飲食した分の支払いはすべきと考えている。

にも関わらず、件の彼女のアンケートでは、64%以上が「払わないで様子を見る」という結果が出ているのである。
当初はフェルヲが少数派なのかなと考えたものの、フェルヲのフォロワーからは、フェルヲと同様に「支払わないのはあり得ない」というリプが多くを占めていた。

これって社会学で言われている「タコツボ化ってやつじゃないか?」と感じ、同じアンケートをして実証を試みた*。

同じアンケートなのに異なる結果が出た

仮説どおりの結果が出ると嬉しいものである。
フェルヲのアンケートでは「払わないで様子を見る」は30.2%であった。

https://twitter.com/makkinze/status/1591386095929131009?s=20&t=AmQ0d14Qelz6Yaw1th1Fjw

また支払う系のうち、
「LINE Payしてお礼を言う」は彼女は8.9%に対しフェルヲは39.3%
「無言でLINE Pay」は彼女は17.8%に対しフェルヲは19.5%
つまり、フェルヲのアンケートの方が「支払う」と回答する傾向が高かった

同じアンケート内容であり、どちらの標本数(回答者数)も統計的に十分と考えられる**にも関わらず、なぜここまで乖離してしまったのだろうか。

ツイッターアンケートとフォロワー属性の関係

男性とのアポを繰り返している女性アカウントと、
限界コンサルであるフェルヲのツイート内容は全く異なる。

また、フェルヲのフォロワーはフェルヲに似た属性や価値観を持ち、彼女のフォロワーは彼女に似た属性や価値観を持っている可能性が極めて高い
これは、SNSはコミュニケーション相手を自分好みに自由に取捨選択できる特徴を持つという説明(池田, 2005)や、インターネットは同じような思考を持つ人たちをつなげる特徴を持つという説明(Sunstein, 2001)を挙げるまでも無く、読者の経験則からでも同じ印象なのではないか。

さらに、ツイッターアンケートは、ツイッターアカウントを持つものなら誰もが回答可能な点においてツイッター利用者が母集団となるが、
アンケート発信者のツイートが起点となるため、標本(回答者)にはフォロワーが多く含まれてしまう可能性が高い

このような背景のもと、今回のアンケートもフォロワー属性が強く反映され、全く異なるアンケート結果が出てきたのだろう

その意味において、どちらのアンケート結果も正しいのである。
ただ、彼女とフェルヲは、過ごしている社会の属性や価値観が異なることが、定量的に白日の下にさらされたのである。

タコツボ化するツイッター社会で気をつけたいこと

まず、ツイッターアンケートは、アンケート発信者の属性や価値観が反映されてしまう可能性がある点である。
上述のとおり標本(回答者)には発信者のフォロワーが多く含まれる可能性が高く、そのフォロワーの属性や価値観は、発信者と類似してしまう可能性が高いからだ。
故に、ツイッターアンケートの結果は「アンケート発信者界隈における回答傾向」と捉えた方が良いだろう

さらに、ツイッターアンケートは、アンケート発信者やそのフォロワーにとって心地よい結果になる可能性が高い
上述のとおり、アンケート発信者に似た属性の人たちが回答するからだ。

これはツイッター民として用心すべきことである。
エコーチェンバーという概念があるが、あるコミュニティのなかで多数が同じ意見と聞かされれば、それを信じる人たちが生まれ同質化する。
また、サイバーカスケードという概念があるが、あるコミュニティで議論すると主張が極端になってしまう事象が指摘されている(Sunstein, 2001)。

つまり、ツイッターアンケートの結果(や、フォロワー同士のリプ)で心地よい気分になったとして、それは自身のコミュニティ内だけのことであり、気づけば外から見れば先鋭的になっている可能性があるのだ。

奢り・奢られ論争における各陣営の主張のなかには、
(フェルヲも含めて)先鋭化したものもあるのかもしれない…

補足

* フェルヲのアンケートでも、後日飲食代を請求された経緯を明示する等して、可能な限り彼女のアンケートと前提を合わせた。しかし、厳密に検証するならば、完全に同じ時間帯と投稿内容で実施すべきであり、その意味において本検証の結果は傾向を把握する程度のものである。

** 彼女とフェルヲの回答者数は10倍程度異なるが、回答者数はどちらも10,000を越えている。日本のTwitterユーザーは約5,288万人(総務省によれば日本人の42.3%がTwitter利用者と推計されている、日本人の総人口は1.25億人と推計されている)と見られ、どちらも許容誤差は1%なため(科学的な厳密性を追求しない限り)統計上は問題無いとされる。但し、これが問題あることは本文のとおりである。

*** 添付はツイートして約1時間後のアンケート回答傾向である。ツイート直後は「LINE Payしてお礼を言う」が突出して多かった。これはツイート直後はフェルヲのフォロワーが回答していたからと想像する。時間経過に従ってフォロワー以外の人が回答し、上記の最終結果になったのだと想像する。
(リプ欄も時間が経つに従って刺激的な…払わない派の意見が目立つようになった)

*** 気が向いたら投げ銭をくださいますと幸甚です。

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