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「ダイスマンカラ」のデザイナーノート

せっかくなので、インタビュー風に書いていきます。自分で自分にするインタビューみたいな。奇妙ですね。きっと、それが読みたいって人も(ごくまれに)いるでしょう。

ダイスマンカラのパッケージ画像箱表b
パッケージイラスト

着想

着想したのは2019年の初頭だったかな。さかのぼること2018年の2月ごろに、住宅をテーマにしたボードゲームのコンテストがあったんだ。ボードゲームグランプリっていうもので、もしかしたら今でも開催しているのかもしれない。元々好きだったボードゲームを、自分でも作ってみることに挑戦しようって気持ちになった、決定打がこれだった。その通り(笑)。20万円って賞金に目がくらんだのもあるね。結局、応募作は一次選考も通らなかった。

落選がわかった後も、どうにかいいゲームにならないかとちまちま改良していたんだけど、ある部分まで進んでストップしてしまった。上手くシステムが噛み合わなかったんだ。プロジェクトはいったん凍結された。その後、ふと「マンカラ」をサイコロで遊んだら面白そうだなって考えたんだ。前者はテーマありきで考えたものの、後者はシステム先行だった。遊んでみたかったが、そんなゲームはどこにもない。じゃあ自分で作るしかないなって思ったのがきっかけさ。

ダイスでマンカラをする――――それってどんなゲームなんだろう?

少し考えてみたんだ。するとアイデアが一気にまとまって出てきた。最初からマンカラをしてカードを取り、得点していくというシステムはあった。そこで手番プレイヤーがアクションを行っている間に、他プレイヤーが飽きないよう全員が参加するアクションも入れようと考えた。

テストプレイ

20190413シヴさん自宅会   ダイスマンカラのテストプレイb
テストプレイ時点でのダイスは、1回りほど小さかった

早速、いろんな人にテストプレイにつき合ってもらった。まれに否定的な意見もあった。でも、このゲームは面白いという手ごたえが自分にあったから、気にならなかった。実際に動かしてみると、いろんな意見をもらった。

「カードに特殊能力をつけたら?」 ノー。

「早取りボーナスを入れたら?」 ノー。

「ダイスの色でアクションができるように制限したら?」 ノー。

マンカラは元々、運要素が介在しないアブストラクトゲームなんだ。考えなければならないことが、ゲーム中にたくさんある。他プレイヤーの動向を考えて、何手か先まで意識しながら自分の手番を行う。だから、できるだけシンプルになるよう、最初からそぎ落とす方向へ進んだ。ここまでで十分に複雑だと考えた。

個人的にマンカラは面白いけれど、運要素がまったくないため他の人には取っつきにくいのではないか? とも感じていた。そこで、もっと気軽に遊べるよう運要素が欲しかった。ダイスマンカラはそんなところからも、アイデアが生まれている。

基幹部分はできていたから、質を高めるために、くり返しテストプレイを行った。盤面をどうするかだったり、市場カードの得点バランスなどは、とても参考になった。いろんな人のアイデアを取り入れて、現在の形に落ち着いた。ひとりでは、とてもここまでのバランスにはならなかっただろう。テストプレイで不完全なゲームを遊んでくれた方々に、とても感謝している。

プレイ人数による変化

ダイスマンカラでは、通常は2人専用のマンカラを2~4人まで遊べるよう調整している。それでいて、盤面は自分で好きに組み替えることが可能だ。いわゆるモジュラーボードというやつで、これは盤面をカードにすることで実現しているんだ。

一般にも4人まで遊べるマンカラが製品として販売されているが、モジュラーボード式は今のところ無いようだね。ぜひ、いろんなゲームを手に取って遊んでみてほしい。

ダイスマンカラでは最初は遊びやすいよう、ガイドのようなつもりで説明書に、各人数に対応した初期配置の盤面を記している。しかしプレイヤーが自由に組み替えて遊んでいいし、個人的には、盤面を考えること自体が一種の遊びだと考えているんだ。

また、ダイスマンカラはプレイ人数によってガラッと変わるゲーム性がウリのひとつだ。盤面に置かれるダイスの数も異なる。もちろん、これだって変更して遊んでもらって構わない。

娯楽や楽しさといったものは、自由な心が生み出すんだ。機会があったら、2人・3人・4人と、ぜひそれぞれの人数で遊んでみてほしいね。

コンポーネント

ダイスの袋詰めb
ダイスは小ぶりな8mmサイズが75個入り

さて、ゲームを作るとなったら考えなきゃならないのは内容物だ。イラストもいる。幸運にも絵の方は、頼み込む形で描いてもらえることになった。ここからは、イメージを形にしていく工程に入る。といっても、これは同時に行っていた部分もある。個人的に交渉してダイスを大量に仕入れたり、イラストのイメージを伝えたりといった、具体的なことだ。

そこから半年以上かけて、市場カードや畑カードといったものが仕上がった。印刷会社を一から調べた。

イラストだけあっても、それを入稿するためのソフトウェアが必要だということも知った。本当に、ゼロからのスタートだったんだ。幸い、すでに自作ボードゲームを出している人たちや、そういった人たちに関わっている人が周囲にいたから、話を聞いて参考にさせてもらった。とても勉強になったよ。こういった体験がなければ、実現不可能だっただろうね。

説明書に関しても同様だ。ルールライティングは、自己完結できないもののひとつだ。5~6人に読んでもらって、校正と改訂をくり返し、わかりやすさを心掛けたつもりだよ。それでも伝わらなかったらすまない。基本ゲームだけで16ページ、拡張モジュールは各1ページある。後日、公開するつもりなので、読むだけでも読んでみてほしい。

拡張モジュール

ダイスマンカラ拡張チップb
「旬の宝石」拡張用のコンポーネント

そんなわけで、2020年の春のゲームマーケットに出展するため準備を整えていた。ところが例の新型コロナショックさ。ご多聞に漏れず、春ゲムマは中止となった。そこで、制作ペースが再びスローダウンした。

一方で、個人的にダイスマンカラに拡張を出すとしたらどんなものになるだろう? とずっと考えていた。複数のモジュールをね。テストプレイも後半になってくると、その中から、ゲーム性が明らかに良くなるであろう拡張要素を導入して試してみていた。最終的には基本ゲームに、最初から入っていていいレベルの内容になった、といったら大げさかもしれないね(笑)。でもそれくらいのものになった。

基本ゲームでは要素をできるだけそぎ落とし、わかりやすさを心掛けたんだけど、そこからこぼれ落ちてしまうものもあった。それが拡張「旬の宝石」で追加されるセットコレクションによって、補填されている。

基本ゲームでは、プレイヤーにマンカラに集中して欲しいため、市場カードに含まれている情報をできる限り減らしたんだ。拡張「旬の宝石」には『どの市場カードを狙うべきか?』というジレンマをゲームに呼び戻す作用がある。もちろん、それは元からあったものなのだけれど、初心者でも楽しめて、なおかつゲームの深みを増す方向のデザインになっている。

また、「旬の宝石」を出すにあたり、もうひとつ何か欲しいと思った。かといって、他に考えていた拡張要素は、特殊能力や目標達成、協力ルールなど、くり返しテストプレイをしてバランス調整が要求されるものだ。そこで新たに、拡張「悩みの種」を考えた。これなら基本ゲームに入れられる。バランスも申し分ない。拡張を両方入れても、単体でも遊べて、ちょっとした雰囲気の変化が楽しめる。ルールも簡単だ。

これら2つの拡張モジュールをセットで、ゲムマ2020秋にて頒布する。ぜひ、基本ゲームと一緒に手に入れてほしい。

ゲームマーケット2020秋

ボードゲームのデザイナーって、ゲームを作り始める前は、1人で何でもやっているものだという先入観があった。特に日本の同人ボードゲームに関してはね。でもとんでもない! 大きな誤解だよ。テストプレイ、コンポーネントの用意、説明書のチェック……完全に自分1人だけでやっていることなんて、ほとんどないんだ。周囲に協力してくれた人々がいたからこそ、こうしてリリースできる。今ならよくわかるよ。むしろ、1人だけでできることがどれほどあるか……。

どんなきっかけだっていい。興味を持って、これを読んでくれている人にも感謝している。

ダイスマンカラは、ゲームマーケット2020秋・東京で初お目見えとなる。イベント頒布価格2000円、拡張500円を予定している。ブースは「エ17」で、フェレットゲームズファクトリーは「たぬきつね工務店」さんと合同で出展予定だ。

もし縁があったら、会場で会おう。

ダイスマンカラの4人プレイ時のセットアップ

2022年11月2日更新:
ダイスマンカラの基本ゲーム+拡張のセットは下記から購入できる。
売り切れになったあと、何か月か、そのままになっていたのだが、ゲムマ出展を機に再入荷の運びとなった。ただ、相も変わらず少部数なので、もし売り切れていたらすまない。

ぜひ手に入れて、遊んでみて欲しい。少人数の方がおすすめかな。面白いよ。

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