Nullum magnum ingenium sine mixtura dementiae fuit
現在所属している研究室の卒業生が年末年始でイタリアに帰省しきており、議論する機会があった。
彼女は最優秀博士論文賞を受賞したのちにcaltechでポスドクをやっているらしい。僕とそんなに年齢は変わらないのだが、すでに引用数3桁の論文をいくつか持っている。
正直に言って雲の上の存在だ。そんな彼女とコーヒーを飲んでいたとき、彼女と僕の共通の共同研究者である同僚の1人が「彼女は朝の4時に起きて夜の10時まで研究している。彼女は機械だ」とジョークを言っていた。
彼女はそれを聞いて笑っていたが否定はしていなかったので、おそらく本当のことなんだろう。僕はその話を聞いたときみんなと共に笑っていたが、内心絶望していた。
朝四時に起きてそこから夜の10時まで研究する?僕にはマネできそうもない。というかどう考えてもまともな人間の為せる技ではない。
なんだかんだアカデミアに長くいるので、世界の第一線で活躍する研究者とは何度か会ってきた。彼らは須く常人の域を超えている。いい意味でも悪い意味でも。
イタリアに来る前は僕も彼らのような物理学者ににいつかなりたいと思っていたものだが、最近は心境が変化しているのを感じている。
彼らにようになるためには、物質的に恵まれた、ゆとりのある生活を送りたいなんて願望は捨てなければいけないのだ。全てを捨てて研究に人生を捧げる必要があるのだ。
はっきり言って狂っていると思う。いくら研究が楽しくても、毎日朝四時に起きるなんてどう考えても不健康だ。
僕には彼らのように「狂う」覚悟があるのだろうか。そんなことを言っている時点で彼らのようにはなれないのだろう。
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