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嗅ぐこと、生きること | 『エカシの森と子馬のポンコ』感想

北海道在住の童話作家・加藤多一氏の新刊が、2020年12月に出ました。

この物語のテーマは2,3あって、その内の一つが、「匂い」だと私は感じました。
このお話しで加藤多一氏は、なんとカメムシを登場させています。これまでの児童書で、なかなかカメムシが出てくる物語はなかったと思うので、画期的なことと思われます。
ただ、カメムシが単に奇をてらった位置づけではなく、もちろんきちんと物語のテーマと、かちりと重なってくるのを感じました。

「ばかもん。おこったらくさくなるのは、あたりまえだ」
「くさいのはあたりまえ。それとも、いやなときでも命があぶないときでも、おとなしくじっとがまんせいというのか」

カメムシたちのセリフには、すこしドキっとさせられるものも含まれています。
たしかに、匂いを放つということも、りっぱな表現・生きている証なのだと忘れそうになっていたかもしれません。

加藤多一氏の新刊を手にとったとき、『匂いと香りの文学誌』という本をタイミング良く図書館で借りていたところだったので、香りについてもっと調べてみようと感じました。

また、畑 正高氏は『香清話』(淡交社)にまとめられたエッセイのなかで、「香りはメディア」という文を書いています。
詳細は省きますが、嗅覚もやっぱりないがしろにはできないなぁと思ったひとときでした。

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