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珈琲の話(生豆)

20年程、珈琲を生業として生きてきました。

スペシャルティブーム以前から良い豆を仕入れたいと色々とツテをあたって努力をしてきましたが、ここ10年で比較的ツテがなくても、本当に良い生豆が入手できるようになり、コンビニコーヒーのブームもあり、日本全体の珈琲のレベルが上がったように感じています。

本当に嬉しい限りです。

さて、そんな中で行きすぎているなと感じる部分もあるので、自身の考えを纏めておきたいと思います。

あくまでも個人の感想、思った事として聞き流して頂ければ幸いです。

私の生豆購入に関してですが、いくつかのパターンがあります。

国によって時期は違いますが、毎年商社に希望を伝え、1年分の消費量を年間契約をします。場合によっては前年の豆をサンプルとして出して貰い、カッピングをする事もありますが、農作物なのであくまでも参考程度にしかなりません。

農園の位置、標高、降水量や品種やプロセス、スクリーンなどの情報で判断します。

オーダーをいれてから3ヶ月後くらいに、実際に豆が届き、カッピングしてからイメージと違う部分を商社にフィードバックします。

なので生産地を訪れたり、同じ産地の豆を大量にカッピングするのは商社に丸投げです。

商社のカッピングのプロを信頼してリクエストし、その入ってきた豆に対してどういうアプローチで仕上げるかが焙煎士の仕事だと思っています。

最近では個人で産地に行っても、混載で商社のコンテナに詰める様になったので、楽しみとしてはいいと思います。

もう一つはカッピングセッションに顔をだし、実際にそこで気に入った豆にオーダーを入れる場合です。先程のパターンよりも単価は高くなりますが、実際の生豆を見て、味を試して買えるというのはすごいメリットがあります。

ただ気に入った場合にも、購入できる量は限られているのでスポット使いになります。

後は他社さんで気になる豆があった時にスポットで紹介して頂いたり、商社の方から使って欲しいとオファーを貰ったりします。

どちらにせよ、基本的にはニュークロップの生豆を使います。

しかし毎年切り替わりの時期にはパストも混ざることもあります。

先程もお話しした様に年間契約になりますので、途中で生豆を切らすと、他から引っ張ってこなければならず単価の高い豆や品質の悪い豆を使わなければいけない事がでてきます。

それを避ける為、少し多めに見積もって契約する為、年間消費量によっては前年の残りを使わなければいけません。

生豆の保管に関してですが、個人で1年分の生豆を保管するのは至難と言っていいでしょう。

温度を15℃以下、湿度60%程を保ちます。

日光が当たっても、高温多湿でも劣化するのが早くなります。

また湿度が高すぎるとカビてしまいます。

湿度計がない場合は、毎日同じ量の生豆の重量を測り続ければ、その増減によって湿度が多いのか少ないのかわかります。

私は商社の倉庫に保管はお任せして必要分だけ取り寄せています。

余談ですが、生豆は水分を含んでいるので、真空をかけるバキュームパックは良くない物とされてきました。

しかし、随分前になりますが、ミカフェートの川島さんの素晴らしいグァテマラをテイスティング会で抽出させて貰う機会があり、その時の豆がバキュームをかけた4年前のクロップと聞いて驚いたものです。

コーヒー業界の常識というのはあてにならないものです。

自分自身で1つ1つ答え合わせをしていくのが楽しくて珈琲屋を続けているのかもしれません。

珈琲は自由だ。


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