見出し画像

COVID-19とミュージシャンと音楽と③(二次創作とスピード感)

4月上旬 の続き

暇を持て余した音楽業界にとって、この時期一番のトピックは星野源の「うちで踊ろう」だったと思う。

当代随一のポップスターの為人、メロディセンス、人と会えない状況を逆手にとった詞とその新しい遊び方、ユーザーの積極的参加ありきで初めて成立するコンテンツ。現代のエンターテイメントとして、全てにおいて見事な作品であったように思う。

二次創作そのものを楽しむ行為は、hiphop全盛の現代に図らずも合致しているし、コラボ動画を上げた一般ユーザーが無意識的に動画合成を前提としているあたり、現代のネットスキルの高さを垣間見た気がした。

また、ここまで爆発的な拡がりを見せた一因が「著作権の部分的放棄」にある事は間違いない。西野亮廣氏の絵本無料公開の事例しかり、著作権の取扱そしてマネタイズの新しい手法が出現している事を、業界全体がそしてクリエイター自身がどう捉えているのか、とても興味があるところだ。

さらに、日本語・英語以外の多言語の字幕を一般から募集するというやり方にも敬服する。国内外への広げ方、受信よりも発信したいというSNS時代のニーズの受容、一貫して第3者の手によってコンテンツを構築していくという思想、YouTubeのシステムを知り尽くした手法、アイディア。こんなにも鮮やかでスマートなやり方が、今までにあっただろうか。

そしてこの事象の特異な点は、後に有名政治家によって作られた驚くほどセンスのないコラボ動画によって、発生からわずか9日で三次創作の対象へと変容してしまった事にある。僕も「なんとなくやってみようかな、、、」と思った矢先にこの炎上事件があり、慌てて手を引っ込めたものだ。

スピード感が無ければ流行に後乗りする事すら出来ない、という現象に驚きを隠し得なかった。

最初の動画公開から2ヶ月以上経った現在も、ネット上にはコラボ動画が続々とアップされており、星野源の肩から下を別人のものと合成して全く違う動きをさせる動画へと、遊び方のトレンドは移っているようだ。
たったひとつの1分の動画から、次々と別の遊び方を発明するたくましさに感動すら覚える。これこそが次世代のエンターテイメントを産む原動力のひとつであると信じて疑わない。


追記

この記事を書き終わりタイトルを「スピード感」とした後に、この記事自体が2ヶ月以上前の事を書いているのに気づく。反省。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?