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Fender LEAD2のRitchie Blackmore Stratocaster化(前編) #コスプレ

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Ritchie BlackmoreコスプレLEAD2

今回のコスプレモチーフはRitchie BlackmoreのStratocasterです。と言ってもRitchieはDeep Purple結成時の1968年頃よりStratocasterを使い始め(有名なのは1969年頃から使用が確認されている1968年製の貼りメイプル指板、Black)、それ以降メインのエレクトリックギターは一貫してStratocasterであるため、モチーフとする仕様を決定する必要があります。
 Deep Purple時代にはBlack、Sunburst、NaturalなどのStratocasterを使用していたRitchieですが、Rainbowの中期以降はOlympic Whiteに白3プライのピックガード、黒のピックアップ(カバー)とノブという仕様のものが中心となりました。


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Fender社 Ritchie Blackmore Stratocaster®

 今回もRainbow時代のこの仕様、即ちFender社から販売されているRitchie Blackmore Stratocaster®の仕様に基づきたいところです。とはいえLEAD2は基本の仕様がトレモロレスのハードテイルブリッジであり、加えて筆者には木部加工(指板のスキャロップ化)を実行する勇気もありません。
 つまり、コスプレの内容は主に配色とピックガード周辺となり、モチーフに基づけばピックアップはSeymour Duncan社のSSL-4となります。しかしながら資料によれば、当時RitchieのStratocasterには様々な種類のピックアップ搭載されていたとのことです。そこで参考資料等に基づいて搭載するピックアップについて検討したいと思います。

※参考資料
 ザ・ギターマン 特集●RBギターズ[改訂版] シンコーミュージックムック
※参考サイト
 http://bernd-meiser.de/bsm-tonezone/ritchie-blackmore


概要

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全体像
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ブリッジ

 前述の通り、コスプレのベースになるオリジナルLEAD2の仕様は上の画像のとおりです。
・指板:ローズウッド
・ボディーカラー:(Arctic)White
・ピックガード:白3プライ
・ピックアップ(カバー):黒
・ノブ類:黒
・ブリッジサドル:ダイキャスト
・ピックアップ(暫定):Seymour Duncan SSL-4

 上記のうち、プラスチックパーツ類は全てオリジナルLEAD2用のもので賄えております。ブリッジサドルについては、オリジナルLEAD2に搭載のもの(Telecaster DeluxeやStarcasterと共通)はダイキャスト製ではあれど、Stratocaster搭載のものとは形状が異なります。そこで、パーツボックスの底から比較的形状が似たものをサルベージして採用しました。Stratocasterのブリッジサドルとして一般的に評価が高いのは鉄製の所謂プレスサドルですが、Ritchieは1972年以降に採用されたダイキャスト製のサドル(一体形成のダイキャスト製トレモロユニットも)を音質面で好んでいたようです。
 ピックアップは暫定でSeymour Duncan社のSSL-4を搭載してますが、やはりそれらしい外見となりますね。


Seymour Duncan SSL-4

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Seymour Duncan社 SSL-4

 Seymour Duncan社のSSL-4ですが、後述するSchecter社のF-500Tとよく似ています。F-500Tの発売は1978年頃で、1980~1982年頃発売のSSL-4よりも先なのですが、Seymour DuncanがSchecter社で働いていたこともあり、発明者がSeymour Duncanで販売はSchecter社だったのかもしれません。
 SSL-4が実際にRitchieのStratocasterへ搭載されたのは他のリプレイスメントピックアップよりも遅めであり、再結成Deep Purpleに参加中の1985年頃、1977年製のStratocasterのブリッジピックアップのみSSL-4に交換しており、Rainbow時代には搭載されていなかったことになります。
 SSL-4の外観は1/4インチ径のポールピースにノンカバータイプの黒いボビンを持ち、Schecter社のF-500Tに似ています。上の画像の現行品のように、ボビン上面に「Seymour Duncan」のロゴが入っていなければ判別は困難かもしれません。ただ、側面を見れば鑑別は容易で、SSL-4のボビン側面には銅箔テープではなく黒いテープが巻かれています。また、現行品では下部ボビンの形状が一般的なシングルコイルピックアップと異なります。


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SSL-4ボビンサイズ

 直流抵抗値は13.7kΩと高く、中低域の充実した高出力のピックアップです。また、上の画像の通り、ボビン上面には銀文字で「Seymour Duncan」のロゴが入っています。


Schecter F-500T

 初期Rainbowのステージでは、上の動画のように大掛かりな電飾が用いられていました。しかし、それに伴うノイズの増加はRitchieの悩みの種であったようです。1976年頃からギターのローインピーダンス化やキャビティーのシールディングなどのノイズ対策が実施され、その一環として1979年頃に1974年製StratocasterのピックアップがSchecter社のF-500Tに交換されたそうです。


 上の動画では、F-500T搭載の1974年製Stratocasterが使用されています。


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Q Pickup社 F-500「N」レプリカ

 1978年、Schecter社から世界初のタップドピックアップとして発売されたF-500T(上の画像はQ Pickup社製のF-500「N」レプリカ)ですが、外観的な特徴としてはSSL-4同様に直径1/4インチのポールピースと、ピックアップカバーのないボビンが挙げられます。ボビン側面部分にはコイル保護及び外来ノイズ対策として銅箔テープが巻かれていますが、Stratocaster搭載後にもJohn "Dawk" Stillwellの手によりコイルのリワインドやワックスポッティングが何度か施され、銅箔そのものは比較的早い時期に取り外されていたとのことです。最終的には1985年以降にOBL社のL-450と交換されてしまいます。
 さて、画像のレプリカですが直流抵抗値は14.3kΩと高く、SSL-4とは外観的にも音質的にも共通点が多いです。オリジナルF-500Tの入手が困難な昨今、こういったレプリカの発売は大変ありがたいのですが、残念な点が一つあります。


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Stratocaster用シングルコイルPUボビンサイズ
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Q Pickup社 F-500「N」レプリカボビンサイズ

 少なくとも筆者が入手したものについては、上の画像のように上のボビンが通常のシングルコイルピックアップよりも小さいと申しますか、カバーに収めるタイプのボビンをそのままノンカバードとして流用しているようで、カバー無しで搭載するとピックガードとの隙間が目立ってしまいます。現在は改善されているのかもしれませんが、外見的違和感に繋がりコスプレ的には問題となります。


Fender Single coil pickup

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Fender Custom Shop Custom '69 Strat Pickup

 1975年のRainbow結成以降にRitchieが手にしたStratocasterは、特注品などではなく、普通に販売されていた中から選んでいたようです。ただ、Fender社の工場に出向き多数の中から良い物を選べる、というプロミュージシャン特権のようなものはあり、それらに搭載されていたFender社純正品のシングルコイルピックアップのサウンドを、Ritchieは好んでいたようです。
 当時の純正品ですが、ボビン下側のバルカンファイバーが灰色のもので、通称「グレイボビン」と呼ばれているものです(上の画像は同時期の仕様で作られた Fender Custom Shop製のCustom '69 Strat Pickup)。リード線は錫メッキのビニール皮膜線で、ポールピースは1974年途中でスタガードポールピースからフラットポールピースに変更になります。コイルのターン数は約7600程度で、直流抵抗値は5~6kΩ程度だそうです。


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X-1

 上の画像はオリジナルLEAD2搭載のX-1です。外見的には前述のフラットポールピースのものと多くの共通点を持ち、1979年後期頃よりStratocasterのブリッジポジションにも搭載されるようになります。コイルターン数は9400~9600回と多く、直流抵抗値は7.5~8.0kΩ程度で高出力です。また、リード線の色はStratocaster用シングルコイルピックアップが白・黒であるのに対し、X-1は基本的に黄・黒(初期は白・黒)です。
 X-1搭載のStratocasterもRitchieは所有していたようですが、ピックアップはBill LawrenceのL-250やBlack Labelに交換されたようで、残念ながらRitchieとX-1の関係はあまり濃厚ではなかったようです。


 1980年のライブではギターソロの際、オリジナルピックアップの1977年製Stratocasterが使われていたそうです。
 1979年以降Ritchieは使用するStratocasterのピックアップの多くを所謂リプレイスメントピックアップと交換しますが、出音が好みだったこともあり純正品を無交換のまま使用している場合もあったようです。カバーが黒であればいわゆるRitchie仕様っぽくは見えますが、ポールピースの太さをどう見るかがコスプレ的には重要です。


Bill Lawrence L-250

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Bill Lawrence L-250

 正直RitchieがBill Lawrence L-250を使用しているというイメージはなかったのですが、1979~1980年製のStratocasterに搭載されていたようです。更にこのギターにはAlembic社製のSTRATOBLASTERというアウトプットジャックキャビティーに装着するタイプのアクティブブースター(Little FeatのギタリストLowell Georgeの使用でも有名)も搭載されていたようです。
 直流抵抗値は13.6kΩとSSL-4等と同等ですが、普通のシングルコイルピックアップよりパワフルではあれど、中低域が多大に充実している感じはありません。


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L-250構造図

 L-250は上の画像のように、バーポールピース(鉄製)を中心に縦巻きコイルで挟み、コイル中央に磁石を配するという独特な構造をしたシングルコイルサイズのピックアップです。


 Ritchieとは関係ありませんが、LEAD2にL-250といえばTHE GROOVERSです。この動画ではトレモロユニット付きのLEAD2にL-250 が搭載されていますのでご参考まで。


 ライブでの使用は少なかったとのことですが、上の動画の曲など一部のスタジオ録音音源で使用されていた可能性があるとのことです。
 L-250は個人的に好きなピックアップのひとつなのですが、これまたやはりコスプレするには不向きである気がします。バーポールピースの持つ外観的印象が強く、黒を選択したとしても違和感が勝ってしまいそうです。


Bill Lawrence Black Label

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Bill Lawrence Black Label

 Bill Lawrence社のBlack Labelも、ノンカバーで黒いボビンを持つシングルコイルピックアップであり、ポールピースの太さ以外外観的にはSSL-4やF-500Tと似ています。直流抵抗値は上の画像の通り6.5kΩ程度とあまり高くはなく、出力の面ではRitchieの好みだったかもしれません。1982年製の所謂「Smith Stratocaster」と呼ばれるスモールヘッド(本コスプレのベースとなるLEAD2のヘッドと同形状)のStratocasterに搭載されたようです。


 Ritchieとは無関係ですが、Red Warriors時代の木暮武彦がBlue SunburstのBill Lawrence製ストラトタイプのギターに、ブリッジポジションに1発搭載という潔い仕様でBlack Labelを使用していました。上の動画では、やはりというか、シングルコイルピックアップらしい音がしていると思います。


 Ritchieの方はFire Danceという曲でこの1982年製のStratocasterを使用しています。動画で見る限り「Ritchie仕様のギター」ですので、カバーレスである点も相まって、ポールピースの太さの違いを無視できれば案外コスプレ向きかもしれません。


Fender Lace Sensor

 上述のSSL-4を搭載していた1977年製のStratocasterですが、1993年頃にピックアップをFender Lace Sensor Goldに換装したようです。上の動画ではネック・ブリッジポジションにLace Sensorを搭載し、Roland社のギターシンセサイザー用ドライバーGK-1も搭載されています。このLace Sensorは後にカバーを黒く塗られていますが、1996年には塗られた黒を落とし白いカバーに戻してその後もメインギターとして使用されました。ただ、2015年頃にはOBL社のツインブレードタイプのシングルコイルサイズピックアップ、L-450と交換されたとのことです。


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Lace Sensor搭載 Stratocaster

 Lace Sensorを搭載したStratocasterは1995年にFender Custom ShopよりRitchieモデルとして販売されました。上の画像はFender Japanから同仕様で販売されたものですが、センターピックアップがない点やセットネック仕様である点などが特徴的です。Rainbow時代のRitchieのStratocasterにはネックジョイント部が接着されているものがあり、そういう意味ではセットネックという仕様の選択も然程不思議ではないかもしれません。


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Lace Sensor

 Lace Sensorの詳細は別記事にいたしております。直流抵抗値は5.82と今回取り上げたものの中では低めです。ポールピースの無い外観は個性的で、たとえRitchieのようにカバーを黒で塗ったとしても、或いはそもそも黒いLace Sensorを入手したとしても、Ritchie御用達というイメージは沸かず、やはりコスプレ向きではないと思います。


搭載するピックアップは?

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RitchieのStratocasterに搭載されているピックアップ

 RitchieのStratocasterに搭載されているピックアップには、我々の印象に強く残る太いポールピースのもの以外にも、普通のポールピース、シングルブレード、ツインブレード、ポールピースなしと色々あったわけですが、手持ちのものを比較しただけでも、当然ながら外観のみならず出音の感じも異なります。

SSL-4
 外見のみならず音の感じもF-500Tレプリカと似ていますが、中低域というか低域の豊かさは随一で、ネックポジションで歪ませるとその豊潤さは際立ちます。RitchieもSSL-4はブリッジポジションにのみ搭載していたようで、その場合は音の太さが功を奏して、ちょうどよかったのかもしれません。ハムノイズについてはF-500Tのレプリカよりも脆弱であるようです。

F-500Tレプリカ
 コイル保護用の銅箔のためかハムノイズには強いようです。また、普通のシングルコイルピックアップよりは高出力で中低域が厚く感じます。ただ、前述の通りRitchieの機材を管理していたJohn "Dawk" Stillwellは、度々F-500Tのリワインド(タップ配線の変更?)をしていたようです。ターン数をオリジナル同様に戻したときに(直流抵抗値が約14KΩ)サウンドが太く丸くなったことをRitchieは気に入らなかったそうです。

X-1
 1979年頃までのRainbowの音に遠からずといった感じでしょうか。通常のシングルコイルピックアップよりもパワフルでやや中域が盛り上がっているような気がします。

L-250

 ハムバッキング構造ですのでノイズは少ないです。出音については、Ritchieはあまり好きではなかったようです(特にネックポジション搭載時)。

Black Label
 所有してはいても搭載したことはなく、音の感じは不明です。ただ、構造的にはカバーレスである以外普通のシングルコイルピックアップですので、多分「らしい」音だろうと推測する次第です。

Lace Sensor Gold
 別記事でも触れたとおり(少なくとも現行品は)素直に普通のシングルコイルピックアップの音がする、優れたピックアップだと思います。X-1よりは低出力ですがノイズも少ないです。

 コスプレ的にはやはり外観が「らしく」感じる1/4インチ径のポールピースのものを搭載したいので、取り敢えずF-500TレプリカとSSL-4の二択まで絞り込みます。記事後編ではピックアップの選定に加え、Ritchieのためになされた電装系のあれこれについて、やはり参考資料等に基づき記述いたします。

※後編に続く

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