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Fender CuNiFe Wide Range Humbuckerを用いたLEAD3のTelecaster Deluxe化 #コスプレ

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 タイトルに偽りなしということでTelecaster DeluxeをモチーフにしたオリジナルFender LEAD3のコスプレです。概要ですが、形状をそれっぽくしつつFender Wide Range Humbucker(以下WRHB)を搭載するためピックガードを新規作成した他、ノブやスイッチ類もDeluxe仕様にしています。


CuNiFe WIDE RANGE HUMBUCKER

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CuNiFe Wide Range Humbuckerパッケージ表面
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CuNiFe Wide Range Humbuckerパッケージ裏面
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CuNiFe Wide Range Humbuckerパッケージ側面

 画像は今年復刻されたCuNiFe Wide Range Humbuckerです。当初American Original 70s Telecaster® Customに搭載されていたのみでしたが、後に単体で発売されたものを輸入しました。価格は$199.99です。


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CuNiFe Wide Range Humbucker表面
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CuNiFe Wide Range Humbuckerパッケージ裏面

 CuNiFe Wide Range Humbuckerの表面と裏面です。リード線はBelden社の9396(1芯シールドオーディオケーブル、外径: 2.54mm、導体芯線: 錫メッキ銅撚線, 25AWG, 0.16SQ、シールド: スパイラル、ジャケット: 灰, PVC)です。


歴史

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 Gibson社の所謂Large Humbuckerを開発したSeth Lover氏がGibson社からFender社に移ったのは1967年頃といわれています。そして移籍後に開発したのがWRHBで、1971年にTelecaster Thinlineに搭載(画像はWRHB搭載前の1968年製Telecaster Thinline)されたのを皮切りにTelecaster Custom、Telecaster Deluxe、Starcaster等の機種に搭載されていきますが、これらのモデルは1970年代の終わり頃から1980年代初頭にかけて生産中止になっていきます。つまりFender LEAD 1・3に搭載されていたハムバッキングピックアップ(以下LOHB:LEAD Original Humbucker)とは製品として入れ替わりになるような感じですね。


1972 Fender guitar and bass catalog, page 4

 Fender社のカタログにTelecaster Deluxeが登場したのは1972年後半です。
 ネックはメイプル1ピースで、ヘッドは所謂ラージヘッドと呼ばれるStratocasterと同じものですが、同じカタログにおいてStratocasterの方はストリングガイドが一つだけです。Telecaster Deluxeのページでは指板のRが大きいことと幅の広いフレットであることを謳っていますが、Stratocasterの方ではその表記はありません。ネックジョイントはマイクロティルトネックアジャスト機構付きの3点止めです。
 ボディー色はウォルナットが標準でしたが、カスタムフィニッシュとしてサンバースト、ブロンド、ブラック、ナチュラルの4種類が用意されていました。画像ではややわかりにくいですが、ボディーの背面にはコンター加工もされています。ボディー材についての表記はありませんが、発売開始時はアルダーでその後アッシュに切り替わっていったようです。
 ピックアップは前述の通りWRHBをネック・ブリッジポジションに搭載しており、ピックアップ切り替えスイッチとピックアップごとにボリューム・トーンが用意されています。ピックガードの形状は先行して販売開始されていたTelecaster Customとほぼ同様です。


1972 Fender guitar and bass catalog, page 4拡大

 この画像では、ピックアップセレクターの固定用ナットの形状が、1973年以降に用いられている六角形ではなく円形であるように見えます。また、WRHBのカタログ上の表記は「wide-range humbucking pickup」となっています。
 当時Fender社のTelecasterシリーズにおける最上位機種であり、他のTelecasterやStratocasterよりも高価でしたが、あまり人気はなかったようで1981年頃に発売中止となります。


比較

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WRH、LOHサイズ比較

似ている点

 WRHBとLOHBの類似点はその大きさで、いわゆるLarge Humbuckerより縦横とも10mm程大きく、ボビン自体の大きさはStratocasterのシングルコイルピックアップ並で、直流抵抗値もWRHBは10kΩ程度、LOHBは13kΩ程度と高めです。


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LOH内部構造

異なる点

 WRHBはポールピースマグネット(所謂CuNiFe)なのに対し、LOHBはGibsonタイプと同構造でポールピース自体は鉄製でピックアップ底面に(おそらくセラミック製の)バーマグネットを配置しています。
 ポールピースのアジャストについては、WRHBは2つのボビンでアジャストできるのはそれぞれ3本であるのに対し、LOHBは2つのボビンすべて(12本)がアジャスト可能です。
ピックアップの高さ調整用ネジは、WRHBが1弦側と6弦側にそれぞれ2本の計4本であるのに対し、LOHBは1弦側に2本、6弦側に1本の計3本です。
 カバーについて言えば、WRHBにはFenderの刻印が入ったカバーがあるのに対し、LOHBは金属製のカバーこそありませんが、側面はプラスチックで覆われていてボビン上面は長方形で側面のカバーとの間に隙間がないためコイルのワイヤーは露出していません。
 組み合わされる可変抵抗器(POT)やトーン回路用コンデンサの値については、WRHBはPOTが1MΩでコンデンサは0.022μF、LOHBはPOTが250kΩでコンデンサは0.05μF(LEADシリーズ共通)となります。ざっくり言えばLOHBの方が高域を沢山アースに落として高域特性を悪化させていることになるでしょうか。
 余談ですがLEAD3のPOTとコンデンサを1MΩ、0.022μfにすることで、正直あまり好みではないLOHBの印象が変わるのか検証してみたところ、結果として印象はあまり変わりませんでした。もちろん交換前と比較すれば高音域が増えているように感じられますが、トーンを少し絞れば交換前の感じとほぼ同じになる気がします。
 要するに似ているのはサイズくらいでそれ以外はまるで違うわけです。


共通点

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LEADブリッジ

 このようにピックアップにおける類似点は少ないTelecaster DeluxeとLEAD3ですが、実は意外な共通点があります。それは約10.5mm幅のブリッジサドルで、正確には最初にTelecaster Deluxeに搭載されたサドルが後にStarcaster、そしてOriginal LEAD Seriesにも採用された、という経緯になります。ただしOriginal LEAD Seriesでは、オクターブ調整ネジ部にはスプリングではなく六角ナットが採用され、専用のレンチ(上の画像向かって右)で固定するようになっています。


仕様

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コントロール部

 仕様としては、前述の通りそこはかとなく外形を似せつつWRHBを搭載できるようにしたピックガードを作成した上で、ヴォリュームとトーンにはSombrero(或いは witch hat、skirted) ノブを、ピックアップセレクターにはSwitch Craft社の3ポジショントグルスイッチを六角ナットで固定しています。ノブが窪んていないのはご愛嬌。また、オクターブ調整ネジ部にはスプリングを用いてTelecaster Deluxeを偲びます。電装系は、POTがボリューム・トーンとも250kΩ、コンデンサが0.05μfと、その値はOriginal LEAD Seriesに準じています。
 ちなみに復刻CuNiFe Wide Range Humbucker付属の実装配線図ではPOTがボリューム・トーンとも500kΩ、キャパシターが0.022μfでした。オリジナルのTelecaster DeluxeではPOTがボリューム・トーンとも1MΩ、キャパシターが0.022μfであったようです。


WRHBの新旧比較

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新旧比較

 WRHBの新旧比較です。左右とも上からMexのカバーを移植したMojo Toneの"72 Clone" Wide Range Humbucker、Original Wide Range Humbucker、復刻CuNiFe Wide Range Humbuckerです。わかりやすい違いとしては、復刻CuNiFe Wide Range Humbuckerのカバーにおいて登録商標マーク(® )が小さめです。またピックアップの高さ調節ネジを受けるつば出しの部分が復刻CuNiFe Wide Range Humbuckerではやや大きめです。画像ではネジ穴のサイズも違って見えますが実際には同サイズです。


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ポールピース形状比較

 マグネットポールピースの形状ですがOriginal Wide Range Humbuckerがきれいなドーム型であるのに対し、復刻CuNiFe Wide Range HumbuckerとMex Wide Range Humbuckerではドームにつばが付いたような形状で、Mojo Tone "72 Clone" Wide Range Humbuckerではフラットな形状になっています。


終わりに

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 出音ですが、フロントとリアというポジションの違いはあれど、Originalと復刻は似ていると思います。と言いつつもなんとなくOriginalにはそこはかとなく古いピックアップに共通する鈴鳴感みたいなものがあるようにも思います。今後弾いていくうちに耳が馴染んでよくわからなくなることでしょう。現状でもよくわかってはいませんが。

【了】

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