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糞フェミでも恋がしたい (その24)

私の名は能條まどか。糞フェミだ。

糞フェミには糞フェミのことがよくわかる、まあ、わからないわけはない、みんなどこかしら脛に傷があって、望んでではなく、仕方なく糞フェミになった者ばっかりなのだ、持って生まれた性格は違ったとしても、出生とか、育ちとか、経験として、共感しないわけがない、自分はひとりではないというそのことが、唯一、狂わないでいられる希望として、理性を繋ぎ止めることもある、真の狂気は、真の孤独とともにある、好んでそこに落込んで行きたい女など、この世界のどこにもいない。

夜半過ぎに、すみれちゃんからメールがあった、ご丁寧にメール、そのへんがすみれちゃんらしさでもある、それも、「前略ごめんください」から始まっている、石器時代かよとおもうが、育ちが厳しくて、手紙の書き方にもいちいちうるさく言われたとぼやいていたから、時候の挨拶がないだけマシなのかもしれない、清涼の秋気身にしみて、皆様におかれましては、いかがお過ごしでしょうか、などとやられた日には、とうてい本文まで到達できないうちにブラウザーを閉じてしまう、やれやれだ、仕方ないので頑張って読み進めると、例の、綺羅君との、屋上でのことが書いてあった、そりゃそうだ、書くだろう、しかし、書いてはあるんだけど、ちょっと何が言いたいのか、よくわからない、うにゃうにゃうにゃうにゃして、うにゃあうにゃああ唸っている感じ、超めんどくせえ、女、超めんどくせえ、たっぷり1000文字ぐらい、意味不明なことを書き綴って、むすびに、「かしこ」とあった、ちょっと子狡いところもあるが、すみれちゃんは素直ないい子なのだ、この子は幸せになって欲しいなあと、思う。

すぐさま電話をかけた、しばらく呼び出しが鳴って、どぎまぎしてる風のすみれちゃんが出た。
「ああああああーーーーーーーーーはい……。」
「あああああーじゃねえよ、今日、見てただろ。」
「ああああーうん、見てた、見てたよ。」
「どうだったよ。」
「んーとね、んーとね、すっごかった。」
「すごかったじゃわかんねーよ、どうすごかったか、3行以内で。」
「あー。あー。あーとね。すっごい出た。びゅびゅびゅびゅびゅって。んで、まどかちゃんのほっぺたからぶらさがってた。」
「エロスだったろ。」
「エロスだった。」
「ふひひひひひひひひひひひ。」
「ふひひひひひひひひひひひ。」
「綺羅君いいだろ。」
「うん、すっごいすっごいカワイイ!」
「だろー。私、あいつのためなら死んでもいいからな。」
「ときどき貸して。」
「ダメ。」
「えー。」

すみれちゃんには、ネットやら仕事やらで、熱狂的ファンの男が山盛りいるから、その中にはかなりの美形だっているだろうし、条件のいい男だっているだろうし、そのへんで満足しとけよ、贅沢言ってんじゃねーよと突っ込んだら、それでも足りないんだと言っていた、自分の父親に対する憧憬に比べれば、それでもぜんぜん足りないんだと言っていた、厄介な女だ、でも、自分にもそういう類いのコンプレックスがあるから、私たちはお互いに許せているんだろうと思う、くだらない会話を、2時間ぐらいした、無意味で、無節操で、無知蒙昧、でも、それでいいのだ、だからこそ生きていて楽しい、「元始、女性は太陽であった」と書いた平塚らいてうは激情と混乱の人だった、ちょうど22歳の時に、心中未遂を起こしている、でもそれでいいんだと思う、無知蒙昧のまま、ただひたすらに情愛に燃えて、人を巻き込んで行く、大迷惑な人が、世の中に少しぐらいはいなくちゃいけない、私もそのひとりになれればいいなと、通話を切りながら、そんなことを思った。

つづき→ https://note.mu/feministicbitch/n/n7686a3335333

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