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辻村深月さんの本を読み続けていたらしんどくなった

初めて辻村さんの本を読んだのは中学生の時でした。
たぶん「名前探しの放課後」だったと思います。

魅力的なキャラクターと先の読めない展開に夢中になりました。その後に登場人物たちが他の辻村作品とリンクしていることを知り、のめり込むように読みました。

読みはじめたのが中学の終わりだったので、集中的に読んだのは高校生になってからです。実際に読んだ順番はあいまいですが、「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」あたりで一度読むのをやめました。

<作品リスト>

名前探しの放課後
冷たい校舎の時は止まる
ぼくのメジャースプーン
子どもたちは夜と遊ぶ
ロードムービー
凍りのくじら
スロウハイツの神様
V.T.R.
オーダーメイド殺人クラブ
水底フェスタ
ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。

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太陽の坐る場所
ふちなしのかがみ
本日は大安なり
ツナグ
光待つ場所へ
鍵のない夢を見る

だんだん読むのがしんどくなったからです。

辻村さんは伏線の張り方や驚くような結末も見事ですが、キャラクターの内面を描くのもお上手です。なかには恥ずかしくなるような(厨二的な)痛々しさや、あまりにも悲しすぎる過去のトラウマ、精神年齢が未熟なキャラクターの考え方までリアルに描かれていて目を背けたくなるほどでした。

一番キツかったのは「子どもたちは夜と遊ぶ」です。
浅葱の過去や運命を知っていくともうダメでした。架空の人物だと分かっていても胸を抉られるような気持ちになりました。残酷なシーンが頭の中で映像としてフラッシュバックするような感覚です。

でも小説としては本当に面白い作品だと思います。この作品の伏線だけではなく、リンクしている登場人物の特性も活かされていました。重いストーリーなのに続きが気になって読んでしまう魅力もあります。読み終わったあとは壮絶なドラマを一気に駆け抜けたようで、思わず力が抜けました。


次に辛かったのは「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」です。
子どもたちは〜に比べると劇的な展開は少ないですが、チエミ視点で見ると息苦しくなるようなしんどさがありました。友人のみずほが自立した人間という対比も、よりチエミの幼さを際立たせていました。

しんどかったのは「自分はチエミ側の人間ではないか」と思いはじめた時です。年齢の割に未熟な考え方をするので、読みながらハラハラする展開が多くありました。一方でチエミの焦りやみずほに憧れる感情も理解できるものであり、フィクションながら身近なリアルさを感じていました。

読み終わった後もチエミの弱さと自分自身について考えてしまい、しばらく暗い気持ちになりました。今思うと考えすぎですが、辻村作品を立て続けに読んでいたので「少し離れた方がいいのかもしれない」と思うようになりました。

それからは違う作品を読んだり、本から離れたりして現実に戻りました。

辻村さんのキャラクターは魅力的であり、そのリアルさは危うく感じるほどでした。特に私のように一気読みすると世界観に浸れる分、悪い感情に引っ張られることもあるかもしれません。

時間を置いてまた辻村作品を読みましたが、どれも面白かったです。たとえば「ツナグ」はファンタジーな設定に悲しさと感動が共存しています。あったかい話かと思えば、ふとした一言でゾッとするような場面もあって、辻村深月さんの小説は改めて面白いと思いました。

大学生以降に読んだ作品は少ないです。

家族シアター
盲目的な恋と友情の話
朝が来る

…家族シアター以外しんどかった笑。

あのしんどさは思春期特有かと思ったら、そうではなかったようです。「盲目的な恋と友情の話」「朝が来る」は人間が堕ちていく過程がじわじわと描かれていました。でもやっぱり面白いんですよね。

「朝が来る」は自分が結婚して子供を産んでいたら、また違った感想になるかもしれません。人によっては一番しんどい作品になる可能性もあると思います。

ちなみに話題になっていた「かがみの孤城」は購入したのにまだ読めていません。なんかもったいないような怖いようなでずっと読めずにいます。


一番読み返している作品
一番読み返しているのは「スロウハイツの神様」です。
図書館で借りたものも多いですが、スロウハイツの神様はお気に入りで購入した作品の一つです。

クリエイターの卵たちがシェアハウスをする設定がまず好きで、ただの青春ストーリーにならないところが魅力です。色んな登場人物の視点で描かれていて、読み進めていくと新しい発見があります。

もう何度も読んでるのに同じところで驚くし、ハイツ・オブ・オズのケーキは今でも食べてみたいし、結末の続きが気になるし…続編出ませんかね?

あと実写化を密かに期待している作品でもあります。
実写化反対の人もいるかもしれませんが、以前見たツナグ本日は大安なり朝が来るの実写が良かったので見てみたい気持ちがあります。実在する俳優さんが演じるならどんなキャストだろう?とつい考えてしまいました。


最後に
私にとってのチヨダコーキはまさしく辻村深月さんでした。本のタイトルを見ると夢中で読んでいた頃を思い出します。良くも悪くもしんどさを感じる作品が多くありました。

”しんどい”はあくまで感情なので作品自体は昔と変わらず好きです。当時は登場人物と同世代のときに辻村深月さんの小説に出会えたから、より作品に入り込めたのだと思います。

今の年齢だと鍵のない夢を見るあたりが一番しんどいのかな…


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