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若林さんと、私の中の「あの女」。

昔、オードリーの若林さんがラジオで、「あの女」の話をしていた。

「あの女」とは、私が勝手に名付けた女性の総称で、いわゆる「あの女」に対し、私は敵意と敬意を込めてそう呼ぶことにしていた。

当時、若林さんが付き合っていた彼女も、私からしたらいわゆる「あの女」。

その証拠に、若林さんは「あの女」から、あのブランドの、あのクリスマスプレゼントが欲しいと言われ買いに行ったことを話していた。

しかし、やはりそこは若林さん。

彼女のプレゼントを買うために列に並び、接客されている自分が情けなくなって、「俺はこんなことするために産まれてきたわけじゃない」みたいな感情になったらしい。店の近くの電柱で身を隠し泣いたと言うエピソードをラジオで話していた。(本だったかな?)

その話を聞いた時、私は今の自分の状況と若林さんの話がリンクして、横腹が痛くなった。

「自分って何者なんだ」って必死に生きてきたのに、気がついたら恋人のために食事を作り、身なりを整え、連絡を待つだけの人生になっている。

そんな自分に気付き、虚しさを感じていたからだ。

自分の価値は、プレゼントで決められるものじゃないし、恋人の有無で決まる訳でもない。

自分の価値は何かで測れるわけがないのに、愛されている証拠をいつも求め、求められている気がしてならないのは、私が捻くれているからなんだろうな。

誕生日や記念日やクリスマスにバレンタイン。

恋愛がビジネスに一体化されたシステムに組み込まれて一喜一憂する自分にも、相手にも「一体なんなんだよ」と言う気持ちでいっぱいになる。

だから、元から男性から(高価な)プレゼントは貰わないように生きてきた私は若林さんのエピソードトークを聞き、これからも男性に物をねだらないように生きていこうと誓ったのだった。

欲しいものは、自分で買う。
他人からどう思われようが、自分が着たい服を着る。
人生は有限。1人だろうがなんだろうが、行きたい場所へは行けるうちに行く。

私の中の良い女、なりたい女は、他人に求めない女。

高価なプレゼントより、相手に求めるのは安らぎとか、愛情とか、優しさとか、居心地の良さで、今のパートナーにも高価な物をもらわないようにしてきた。(そもそも彼は私以上にモノに興味がない)

しかし、だ。

私の中に眠っている「あの女」が突如目を覚ましたのは、役所に婚姻届を提出した、二週間前に遡る。

役所で紙切れを提出した後、彼はオンラインミーティングがあると近くのカフェへ消えて行った。

この後、どこか指輪でも買いに行くものだと思い込んでいた私は、彼の行動に1人ザワついた。

こっちは仕事をワザワザ早退してきたのだ。
それなのに、なんでこんな時間にミーティングを入れているのか理解ができず。

そもそも、離婚経験者の私にとって、今日という日がどれほどの意味があるのか、わかっていないことに腹が立った。


が、そんなことで怒るほど器量が小さいワケではない(と、思っていた)。

私はそれから1人で買い物に出かけ、気を紛らわすことにした。

欲しいものは、自分で買えばいい。

私は鼻息を荒くするとデパートへ。高級ブランドを物色し始めた。

結婚したからという理由で指輪を着ける気はない。
ただ、今日という記念に何か欲しいと思った私は指輪だけでなく、ネックレスや時計なども見て周ることにした。

自分で買うんだし、好きなデザインの物にしよう。

そう意気込みながら普段見慣れぬ高級ブランド品の数々を見ていると、平日にも関わらず、「あの女」が「あの男」と共にどこのショーウィンドーも占領している現実が目に入る。

−「これもいいけどぉ、こっちも良いな♡」
−「○○が好きなヤツにしなよ」

うっ!!!



「あの女」、「あの男」たちの何気ない「あの会話」を聞き、急に感情が爆発しそうになった私は、店内を後に逃げ出した。


アレも、コレも、自分で買える。
そして、そうなれるように今まで頑張ってきた。

だって、私は自立した女。
「あの女」ではない。

そう頭ではわかっている。わかっているのに、頭から「あの女」が離れなかった。

私だって、本当はお姫様抱っこされたかった。
私だって、本当はひざまずいて誓って欲しかった。
私だって、本当は言葉で言って欲しかった。
私だって、本当は買って欲しかった。

自立していようが、なかろうが。


心の底にこびり着いた感情は、「羨ましい」。

ミーティングを終えた彼と再会すると、彼の頬を引っ叩きたくなった。

そして、突如として「あの女」が憑依すると、ペラペラと喋り出した。

−「もしかして、レストラン予約してないの?」

−「プロポーズもちゃんとされてないのに、今日レストラン予約してないってどういうこと?」

−「ケジメ付けるために籍入れたんじゃないの? 


それなのに、レストランに予約も入れないでどういうつもり? 

”一緒にいることが自然”とか結構だけど、一日中パジャマで過ごすみたいなダラダラした関係性のままなら結婚なんかする必要なかったじゃん!!


するならする。ちゃんと区切りつけろ。気持ち悪いんじゃ。ボケ!!!


そして言っていた。


「っていうか、私、指輪ももらってないんだけど!!!」


物じゃない。
お金じゃない。

でも、付き合ってから一度も、愛されている証拠をモノとしてもらったことがないことが悲しかった。

結婚する時くらい、いや。
入籍する時くらい、なんか良いモノ食わせろ!
高ければ良いってワケじゃないことも知ってる。けど、高ければ高いだけ、高級であればあるだけ良い!!! と、その時は本気で思った。

あの店のあのレストランで「あの男」から買ってもらった高級ブランドを身につけ、自信に満ち溢れた「あの女」の顔がチラつく。

そんなの時代錯誤。

そんな風にずっと思ってきたし、そうやって自分に言い聞かせてきた。

でも本音はずっとずっと羨ましかった。

恋人に高価な物をプレゼントされている女友達。
あっけらかんと「お金がない人とは付き合わない」と言い切れる「あの女」。

男の人の生きづらさも知っているから、そんな風に言ってのけるあの女の世界観が嫌いだった。

でも、どうして?

自立だかなんだか知らないが、頭ではいくらでもカッコよくて物わかりのいいことは言える。

でもあの瞬間、自分に対して金を使える人間と一緒にいるべきだ、という危険信号にも似た悲痛な叫びが身体中に鳴り響いた。

男は金じゃない。
女は顔じゃない。
そんなもんで私たちの価値は測れない。

でも、もうそんなモンどうでもいいから、「男を見せろ」、というトンデモ昭和感が溢れた。

そして、そう言った自分に「じゃぁ、私は何を見せる?」と、問われれば、籍を入れた瞬間姓が変わり、それと共に自分のアイデンティティが失われ、それに付随して色んな手続きが必要になり、その度に覚悟を問われている気がする。

結婚しなくたって一緒にいられる。
だけど、区切りをつけようと決めたんだったら、レストランくらい予約して欲しかった。

なんだったらエイヤ! となるほどの高級店くらい予約して、あの女が好きそうなあのブランドの箱をパカっと私の前で開けて言って欲しかった。

誓って欲しかったんだ。


あぁ、拝啓、若林様。

私はついに、あなたが泣かされた「あの女」に成り下がってしまいました。
でも、これだけは確かなので聞いて欲しい。

私が「あの女」になったのは、この先の人生を共に歩もうと決めた今の彼に対してだけであって、世の中全ての男性にそうあって欲しいとは思っていないことを。

私のような人間は、どうでもいい男の人に対して「あの女」にはなれない。なれっこないってことも知って欲しい。



全「あの女」を代表して
詢川 華子




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