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補正下着と「ラブ・ユアセルフ」。

オシャレなピンクのフォントで「Love yourself」と印刷されたフライヤーを握り締め、女性の美容と健康をテーマにしたイベントに参加してきた。

場所は最近オープンしたばかりのイベントスペース。
大手企業が元社宅をリノベーションして作ったものらしく、カフェやバーカウンター、個別ブースなどが併設されたイベントスペースは使い勝手が良さそう。

いつか、こんな場所でわたしもイベントを開催してみたいなぁ、なんてことを夢想しながら地下に降りると、ヨガや筋トレ、スタイルアップについての講座を開催していた。

今回、イベントに誘ってきた知り合いに勧められたのは下着に関する講座。
それまで時間があったので、パーソナル・トレイナーの方や栄養学などの専門家の講座を聞いて過ごすことにした。

しかし、私が一番興味を惹かれたのは、女子力がハンパなく高い参加者の子連れの方々。

家事や子育てに追われながら、女性の美容と健康をテーマにしたイベントに参加するなんて、彼女たちは一体、いつ休んでいるのだろう。


「はいは〜い! どうもどうも〜!!」


自分磨きも怠らない女性の皆様を頭が下がる思いで観察していると、一際目立っていたミニスカートの女性が片手を挙げ、笑顔で壇上に現れた。

鮮やかなブルーのミニスカート。
ド派手なザ・ブランド物の大ぶりピアス。
9センチ以上ありそうなヒールブーツ。

そして、彼女は慣れた手付きでスライドを操作しながら話し始めた。

過去、海外でエステ店を営んでいたこと。
今現在は海外と日本の二拠点生活を送っていること。
昔は現在より20キロほど太っていたこと。

顔の半分ほどある大きなブランドロゴのピアスを揺らし自己紹介を終えると、彼女は続けた。

「はい。こちらの写真を見てください!」

女性は、下着姿でポーズを取る自らの過去と現在の写真をスライドに写しながら言った。

「この写真は5年前。現在より5キロ痩せています。そして、こちらが現在の写真です。どうです? どちらがスタイル良く見えますか?」

そう自信満々で話す彼女の質問への回答は、一択しか用意されていない。

彼女と目が合ったわたしが「現在の方がスタイル良いです」と回答すると、彼女は「そうなんです!」と力強く言って話を続けた。

「いくら一生懸命痩せても、見た目に変化がない人は多くいます。これが、スタイルアップとダイエットの違いです」


下着の締め付けにより体のシルエットやサイズは一日で変化する。
体に合っていない下着を身につけると脂肪が蓄積する云々。

写真や絵を取り入れつつ、女性の胸やお尻が垂れていく原因を説明されると
思わずドキッとする。

「女性の老化は14歳から始まっています。ですから、その状態をできるだけキープするためには、自分に合った下着を出来るだけ早く身に付ける必要があります」


人生100年時代と言われる現在。
14歳から老化が始まると言われても正直困る。そして、14歳の時から老化が始まるって、いったい何を根拠に? 

そう頭では思っているのだが、ハッキリ言い切られると説得力がある。
なぜ???


そして、彼女は力強く言った。
言い切った。


「美しくありたいと思うのは、女性の本能です」



ほ、ん、のう……?



そのパワー。
そのエネルギー。


堂々と正解を言う、話す勇気。
それは、他人を尊重する意味で、私がずっと避けたいと思ってきた行為だった。

でも、言い切られるって、なんて気持ちがいいのだろう。
正解を教えてもらえるって、なんて楽なんだ!!!

彼女の話を聞きながら、人の背中を押すために時として正解が必要なことを知った。

そして彼女は「こんな体型の人、見たことありません?」と言いながら、垂れ乳、垂れ尻、2段腹、3段腹など、あらゆる女性の体型を図で描き言った。

「サイズが合っていない下着を身に付けると、このような体型になってしまうんですねぇ〜」


いやいやいや。
それは、生活習慣、運動、姿勢、食事などのほか、生まれつき持った骨格なども影響し、下着だけのせいではないよね???

と思いつつ、私はまたもや下着のせいだと言い切ってしまえる彼女の話術に得たいも言えぬエクスタシーを感じていた。

自分の心と身体に正直に生きよう!

と日々を過ごしているつもりだけれど、正直、イチイチ自分で考え、感じて生きることは面倒くさい。

流れるプールに逆らって泳ぐより、流れに身を任せプカプカ生きていた方が元来、ラクだもん。

彼女の言葉は力強く、私を誘う。

そして、気づいた時には補正下着のカタログ詳細を送って欲しいと知り合いの主催者に伝え、イベント会場を後にしていた。

補正下着の女性の話術にも、下着に興味を持ったのも、わたしだ。

それなのに、外に出た瞬間、なんだか切ない。なんだか悲しい。
そして、とにかく疲れていた。

家路に着き携帯を見ると、主催者の女性から試着の予約はいつにするのか絵文字付きの丁寧なメッセージが届いていた。

送られてきた補正下着のサイトを早速開いてみると、値段が記載されていない。
仕方ないので会社名を検索すると、「○○社の成果報酬プラン」、「○○社に騙された」などの情報から下着が不当に高額だということがわかった。

正直、主催者の女性とは顔見知り程度。
彼女がどんな人間か、わたしはまるで知らない。

それなのに、値段の書かれていない補正下着を試着する勇気は、私にはない。

その瞬間、切なくて、悲しくなった原因がわかった。

主催者の彼女達が興味あるのは、わたしではない。
彼女たちが興味あるのは正解でも、美しさでも、スタイルアップでも、下着でもない。


お金だ。


お金を儲けること、稼ぐことは、悪いことじゃない。
商品やサービスを気に入り、心から必要としている人はいるし、どんなに素晴らしい事業であっても、お金が廻らなければ継続することも、人として生きていくことがそもそも出来ない。

ただ、お金が最優先となり、「美しく正しい女性の体」の鋳型に流し込もうと下着を売る彼女たちの目に映った私は、人ではなかった。

人として生きたいのに、人として関わりたいのに、人として扱われなかった侮辱と悲しみ。

人を人として見れなくなっている人たちのパワーに巻かれ、取り憑かれた自分に一番疲弊していた。


「美しくありたいと思うのは、女性の本能です」。



彼女の言葉が、頭の中に鳴り響く。

そして思った。

美しくありたいと思うのは、「美しくないと愛されない。女として価値がない」という思考がビッシリと女性の、私の身体に染み付いているからなのではないか?

もちろん私だって美しくありたいし、愛されたい。
でも、美しくて、スタイル良くて、お金があったら愛されるのかな?

お腹はフラット。
お尻と胸はまん丸、ふんわり、垂れていなくて、ウェストはクビれて、足はスラッと、足首はキュッと。

そんな美しく、スタイル良いわたしでなくちゃ、わたしは、自分さえも愛しちゃダメなの?

皮肉にも、今回参加したイベントのタイトルは「Love yourself」。

私は、どんなカタチの自分でも愛したいよ。許したい。

だから思った。

ある一定の価値観を正当化し、それ以外を補正、修正して不当なお金を請求する不完全も完璧な人間らしさで、愛すべきカタチの一つなのかな、って。

そんな他人を許し、愛せるようになれば、自分も楽だろう。

わたしにとっての「Love yourself」は、禅問答みたい。
時として、とても難しい。

そんなことを思いながら、今回のイベントのフライヤーをゴミ箱に捨て、全身鏡の前に立ち、自分に問う。

私は今日も、人間してる?



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