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本物、について考えた。

友人と行ったライブハウスで、運営者の方から「ちょっと静かにしてください」と注意を受けてしまった。

無名のアーティスト。
ただでさえも客は少なく、そこで私語を喋っていた私たちの声はやたら目立ったのだろう。

でも、盛り上がっていいはずのライブハウスで「ちょっと静かにしてください」と言われるって、スゴイ。

アーティストの声に耳を傾け、ふんふんとリズムに乗ったり、「オーイエス!」と歓声を上げるのはいいけれど、私語は控えてね、という意味なのだと思う。

でも、自分が「いい!」と思えない作品を一方的に見せられ、聴かせられる時間は正直、苦痛を伴う。

そういう場合、その場を立ち去るのが一番良かったのだと思う。
私たちが悪い。

でも、だからと言って「黙ってちゃんと聴け」とオーディエンスに楽しみ方を強要してくる空間はなんとも居心地悪く感じた。

どうしてこちら側が気を使わなくちゃいけないのだろう?

以前、友人のライブに行った際、出演者の母親たちから無理やり席を立たされ、手拍子や踊りなどを求められたことがある。

それと似ているな、と思った。

静かに黙って聴けというのも、もっと音に乗れというのも、本当の意味でアーティストもオーディエンスも尊重していない。

どんな状況であろうと、わたしはその場、その時間を自分なりに過ごしているのに、楽しみ方さえも強要されるなんてウンザリだと思った。

音に集中したければそうするし、踊りたければ踊る。

それは、誰かに強要されるものではない。

運営スタッフに注意された私と友人は朝会で「校長先生の話をちゃんと聞け」と担任に注意された学生のような気分になり、ますます新人アーティストの歌声に集中することができなくなった。

それどころか、そのアーティストに対し怒りさえ込み上げてくる始末。

こんな下手くそで自己満足甚だしい曲を聴かされている側の気持ちも考えて欲しい、と腹が立ってくる。
と同時に、自分も他人に、そんな強要をしているのかもしれない、と気づき、ゾッとなった。


「めちゃくちゃ必死なんだもん」


数年前、性に対して講座やお話し会を始めたばかりの頃、参加者さんからそう言われたことがあった。

主催者としては、お話し会に参加しているのだから、何か話して欲しい。そう思った結果、私はその参加者さんに対し、めちゃくちゃ頑張って話を振った。

そして言われた。

「必死」だと。

経験もスキルもなかったから、確かに必死だったと思う。

そして、そんなわたしの様子を見て「アンタみたいな必死な人間とは全然話したいと思わない」と遠回しに言われたように思った。

楽しんでもらえるように、全力で頑張った結果、「必死」と言われた時、すごくすごくショックだった。

そんなこと言うなら、もう少し話に参加してくれよ。
ノってくれよ! 話してくれよ!

と思ったけれど、今回ライブで注意されてわかった。

その場に参加している。
存在してくれているだけで、きっとなにか感じている。

何も感じないことも含めて、みんな感じている。

そんな他人の感情を尊重しないで、「いいオーディエンスであれ」ということを強要していたのは、私も同じだった。

2組目のバンドが歌い終わるまで、そんなことをぼんやり考えていたら、最後のアーティストが登場した。

今までの、どのバンドとも違った。

自分の声で、身体で、メッセージとメロディーを届けようとする姿は地に足が付いている。一瞬で釘付けになった。

もっと聴きたい。もっとこの人から出る音を感じたい。

そう頭で思う隙も時間も与えずに、そのアーティストは自分を出し切っていた。

自分にとって本物に出会った瞬間、そこに「強要」はない。
あるのは圧巻。そして、今という瞬間だけ。

相手に求めてしまうのは、わたしが未熟だから。

本当に聞いて欲しかったら、本当に楽しんで欲しかったら、それだけの技術や質を上げて、自分が自分を出し切る必要があること、その行為自体を楽しむ必要があることを知った。

オーディエンスがどうかだとか、他人が何だとか、そんなこと、本当はどうでも良いんだ。

聴いて欲しかったら、読んで欲しいのなら、聴かせるだけの、読ませるだけの、楽しませるだけのモン、創ってみろよ。

まずは自分が最高だ! って思えるだけの没頭を。

これは、わたしが私自身に言っていること。

誰かにはもう、求めていない。



−「こういうことか」
−「こういうことだね」



ライブ終わり。
下北沢の夜。

自分にとって本物で満たされた身体はフワフワ、ホワホワ。

わたしと友人はこの時間を共有できたことを嬉しく感じ、幸せだと言い合った。


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