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自慢屋vs謙遜屋

春休みのある日、娘トラの塾で通知表を持参しての個別面談があった。

塾長は歯に衣着せぬ人らしいので、何を言われるかとドキドキ。
ところが開口一番、塾長は
「こんなに成績が安定している子は久しぶりです。」
とベタ褒めするではないか。

意表を突かれた私は、
「えぇ・・・?
でも家ではこの成績とはかけ離れた生活態度でして。」
としどろもどろに返すも、いやいやご謙遜でしょうと言う。

確かに私は褒められるのが苦手でついへりくだってしまうタチだが、今のは謙遜ではなく事実。
だがわが子下げのし過ぎは心証を悪くする(怠惰なのに好成績だという遠まわしな自慢に取られかねない)と思い、苦笑いでお茶を濁した。

さらに塾長は続けた。
「そういえばさっき、随分自信家なお母さんがいましたよ。
『自分は僕(塾長)と同じA高校(県内トップのいわゆるナンバースクール)出身で、自分でさえ塾無しでも受かったのだから子供も受かるでしょう』
なんて言ってましたがね。
でも僕の予想ではあのお子さんは厳しいな。
よほどトラさんのほうが狙えますよ。
まぁ成績が今のままならの話ですが。」

その自信家がHママだということはすぐわかった。
さっき塾の駐車場で面談を終えたHママの車とすれ違ったし、いかにも彼女らしいセリフだ。

そういえばHちゃんが入塾してきた時、塾のホームページを見たHママが「ここの塾長、私の高校のOBなんですよ!」とドヤ顔で言ってきたことがあった。
私はまた自慢が始まったと辟易しつつ「へぇ、世の中狭いですね。」と無関心を装ったが、まさか塾長にまで言うなんてよほど出身高校が彼女のアイデンティティなのだろう。(もっともこの田舎には出身大学より出身高校を重要視する風潮があるのも事実)

そんなわけで図らずもHママの自慢話を伝え聞いてしまったが、彼女のDQNぶりは相変わらずのよう。
私は塾長のその冷笑交じりの口調に同志を得た思いがして、密かにほくそ笑むのだった。

ところでHママの自慢話も驚いたが、塾長のA高校狙えますよの煽り文句も驚いた。
もちろん真に受けてなどいない。
この地域でA高校を目指すなんてよほどのことだからだ。

A高校の近所に実家があるHママはともかく、この辺の子はそんな遠くまで行かなくとも近隣にさほど見劣りしない2番手校が複数ある。
昭和気質の私の価値観では、A高校ブランドやその学力差が往復3時間もの通学時間や地元の安心感と引き換えにするほどのものとは思えない。
友達大好きなトラがA高校へ行きたいと言うこともまず無いだろう。

とはいえ、今や女子でも県外の中高へ進学する子がチラホラいる時代である。
万が一トラがA高校に行きたいと言ったら、私は背中を押してやるべきだろうか。
たとえ某教育系掲示板に

授業は上位3割のための授業。
後の7割は見捨てられる。

なんて怖い口コミがあったとしても・・・?

などと、今から考えてもしょうがないことをあれこれ思い悩む母なのだった。

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