Design Scramble Cast#2 Hitomi Watanabe-Delucaさん
「Design Scramble Cast」は、デザインプロジェクト『Design Scramble』が運営する参加型の音声番組です🌈 🎧 🤝
毎回様々な分野の第一線でご活躍されているクリエイターさんと、そのクリエイターさんと「お話がしたい」と応募してくださった若手クリエイターさんをお迎えして対談の様子をお送りしています。
こちらのマガジンでは、対談の内容を一部抜選してご紹介いたします。全ての内容を知りたい方は、音声番組「Design Scramble Cast」をぜひご視聴ください。
「Design Scramble Cast」を聴く
今回ご出演いただいたのは、Hitomi Watanabe-Delucaさん(HI(NY) | Co-founder, Creative Director, Art Director)と、Nako Higashiさん(九州産業大学 | 学生)です。
Hitomi Watanabe-Deluca
HI(NY) | Co-founder, Creative Director, Art Director
ニューヨークのSchool of Visual Artsグラフィックデザイン科卒業。MTV、The Seventh Artを経て2008年にIku OyamadaとHI(NY)を設立。2016年に日本支社を京都に開設する。近年の主な仕事に、米国コカコーラの新商品ブランディング&パッケージデザイン、国連の展示会デザインなど。アトランタのHigh Museumやパリのコレットにて展示会に参加。著書に『ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと』(共著)がある。One Show、Graphis、GD USA他受賞多数。
🔗:HI(NY)
1. Design Scramble Castへの応募のきっかけ
Nako:九州産業大学でデザインを勉強しているNako Higashiと申します。会いたいクリエイターさんという今回の募集をTwitterで見て、最初に思い浮かんだのがHitomiさんでした。『ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと』を読んでから自分のデザイン観が変わるような衝撃を受け、ずっと憧れていたのですぐに応募させていただきました。
Hitomi:ありがとうございます。嬉しいです。よろしくお願いします。
2. ブランディングの仕事をする上で大事なこと
Nako:はじめに、Hitomiさんがデザインやブランディングのお仕事をされる際に大事にされていることだったり、悩んでいることがあれば教えていただきたいです。
Hitomi:ブランディングの仕事をする上で大事にしていることは、クライアントさんとのラポール、つまり信頼関係を築いていくことですね。
まず、プロジェクトによってブランディングが必要な理由やアプローチ方法は異なります。本の中に私達のブランディングプロセスを細かく書いたのですが、プロジェクトごとに思考の順序を変えたり、重点の置き場所を調整しています。
ブランディングの理由は違っても、クライアントさんが目指していることは商品をたくさん売ることです。でもそれって、マーケティングや広告だったらもっと短期間で達成出来てしまうんですよね。それをあえて長期戦のブランディングをしていくことで、売れることの先にある「お客さんにファンになってもらう」というもっと大きなゴールを私達は目指しています。
ファンになってもらうには、会社のビジョンに共感して商品を選び続けてもらうことが必要だと思うんです。そしてやっぱり共感って、人と人の間に生まれるものじゃないですか。そのために、最初に言ったようにクライアントさんとのラポールを築き、ブランドビジョンを汲み取って落とし込む作業を大事にしています。
Nako:Hitomiさんの本に、ワークシートがありますよね。それを使いながら卒業制作を進めていたのですが、埋めることのできない欄があったりしました。例えばターゲットの設定のところで躓いてしまったり...。実際にHitomiさんが使用されるときは、どのようなことに気をつけていますか?
Hitomi:Nakoさんはワークシートを使うのが今回初めてだと思うので、まず自分自身をターゲットとして一通り埋めてみてください。そのあと目指したい部分とのギャップを感じたら、こういう人に来て欲しいっていうターゲット像を設定してもう一パターン作ってみてください。自分のバージョンと比較してみると、その差がまた勉強になると思います。
行き詰まってしまったときは、ターゲット層の人と実際に話すことも大事だと思います。やっぱりそれは自分の想像範囲外にあることなので。答えが見つかるとは限りませんが、話すことによって湧き出てくることがあると思います。
Nako:ありがとうございます!改めて見直してみたいと思います。
▲Nakoさんが実際に使用されたワークシート
3. ビジュアルとコンセプトのバランス
Nako:よく学校の先生から、ビジュアルが先行しすぎていて中身が足りていないと言われてしまいます。自分でも先ほどのワークシートでまとめたコンセプトをビジュアルに落としこもうとすると、うまく結びつかなかったりして結構悩んでいます。何かアドバイスを頂けませんか?
Hitomi:きっとNakoさんの中では作品のコンセプトを一旦消化して、そこからデザインをされてると思うんです。それはNakoさんの感覚で作っているものなので、自信を持っていいと思います。でもおそらく、それを説明することが難しくて伝わらないんじゃないかと思うんですね。特に先生だとクリエーターとしての感覚があるのでニュアンスで理解してくださることも、クライアントさんが相手になるともう少し難しくなります。それはやっぱり練習と経験なので、きっと上手になると思います。作品そのものに対して不安になる必要はないと思いますよ。
あとコンセプトは大事なのですが、あまり考えすぎると説明がましいデザインになりがちなんですよね。なので実際にデザインをするときは一旦横に置いといて、割と自由にデザインをする。そしてスケッチが終わったくらいの段階で、作っておいたコンセプトと照らし合わせて調整します。そのプロセスを繰り返していくのがいいかなって。良いデザインって、見た人が想像力を働かせるような、余白があるものだと私は思っています。
例えばアメリカの美大で必ず学ぶ参考例として、FedExのロゴマークがあります。Eとxの間に言われないと気づかないくらいの矢印が隠されているんですけど、やっぱり見つけたときはすごく嬉しくなるし、人に話したくなりますよね。これはちょっと極端な例かもしれませんが、そういう隠された余白みたいなものがデザインにあるといいなと思っています。
▲FedExのロゴ:オレンジのEとxの間が矢印になっています
4. ニューヨークで、デザイナーとしてのキャリア選択
Nako:私は現在大学4年生なのですが、キャリアの選択方法などについてもお話をお伺いしたいです。Hitomiさんはニューヨークで、どんな大学生活を送っていましたか?
Hitomi:大学では課題漬けでした。「こんなところまで来て、頑張らないわけにはいかない!」っていう燃える気持ちがあって、本当に毎日必死でした。ニューヨークでの共通認識として、移民がアメリカ人と同じくらい認めてもらおうと思ったら3倍は働かなきゃいけないっていうのがあるんです。なのでやっぱり、3倍は働いていたと思います。
Nako:そうなんですね。大学に進学する前の愛媛にいた頃は、どんな子どもだったんですか?
Hitomi:とにかく日本から出たいと小学生の頃から思っていました。クリエーターになりたいっていうのは、後からついてきたものでしたね。Nakoさんは福岡でしたっけ?
Nako:そうです。私はずっと東京に出たいという気持ちがあって、大学で上京も考えていました。でもデザイナーになりたいって思ったときに、絵を描くことがすごく苦手だったんです。東京にある芸術系の大学入試はほとんどデッサンが必要でしたし、あとは母子家庭だったので、公立かそうでなければ福岡の大学にって思っていました。それでなにか方法はないかなって考えて、県内かつデッサンがいらなかった今の学部に入りました。
Hitomi:そうだったんですね。アメリカの大学はよく、入るのは簡単で出るのは難しいと言われます。私も入学前にポートフォリオを大学へ提出したのですが、条件は何もなかったのでただ思いつくものを送りました。デッサンが絶対必要とか、そんなことはなかったです。デザインを学びたいと思っているのに、デザインが原因でその気持ちが閉ざされてしまうのは悲しいですね。でもNakoさんがこうやってなんとか方法を見つけてデザインを勉強して、今日もお話しできているのでやっぱり何か方法はあるんだぞっていうのがわかって嬉しいです。
Nako:ありがとうございます。今はどこかのタイミングで海外にでたいという気持ちがあります。ドイツのデザインが好きなのでヨーロッパに行きたいと思っているのですが、なかなか踏み出せなくて。Hitomiさんは自分の将来を決めていくときに自然な流れで進んでいったのか、目標を決めてそこに向かっていったのか、どちらだったんですか?
Hitomi:私は割と、流れにそってだんだん自分のやりたいことが見つかった感じでした。大学時代にインターンしていたMTVという音楽専門のテレビ会社に卒業後そのまま就職したのですが、トップクオリティのデザインを毎日作り出すような環境だったのでとても勉強になりました。
でも同時にインハウスなので、やっぱりかっこいいものを作ることを大事にしていて、問題解決という意味でのデザインがあまりできなかったんですね。それがちょっと違うなと思ったときに、ブランディングをする会社に転職しました。そこから思い描いていたようなプロジェクトに関わることができるようになったり、また色々なことを学べてやっぱりこれがやりたいことだなという風に感じました。
もちろんインハウスでも、自分の中で課題を作ってそれを解決していくことはできると思います。「ここだとこれができないから」って決めつけないで柔軟に流して行って大丈夫かなと思いますね。海外もいつ行けば正解っていうのはないですし、やっぱり諦めきれないと思った時がタイミングなんだと思います。
Nako:ありがとうございます。そうですよね、なんだか今のお話にとても浸ってしまいました...。大げさかもしれないですが、今ちょうど人生で最初の分岐点に立っていて怖いなという感覚があって。学生の方、特に4年生は同じ悩みを持っている方もいると思います。Hitomiさんのお話で現在の悩みに対して解決の道が見えそうなので、これからしっかり考えていきたいなと思いました。
Hitomi:本当に色んな働き方があるので、福岡に残るとか海外や東京に行くという選択肢もあると思います。Nakoさんのチャレンジしたい方向に、思うように進んでほしいなと思います。今悩んでいることが絶対次に繋がると思うので、自信を持って頑張ってください。応援しています!
▲ HI(NY) designがブランディングを担当したライフケアブランド「Waphyto(ワフィト)」のブランディング・プロジェクトについてはHI(NY)LIFEのブログからも詳しくご覧いただけます。
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Hitomiさん、Nakoさんありがとうございました!
「Design Scramble Cast」ではその他に以下のようなお話をしています。
興味のある方はぜひこちらから聴いてみてください。
💭 グローバルな体制でのプロジェクトの進め方
💭 仕事と私生活のバランス
💭 キャリア選択
📮 Design Scramble Castへの参加者を募集しています
「Design Scramble Cast」では毎月1つ、対談を配信予定です。
また、憧れのクリエイターさんと「お話ししてみたい」「相談してみたいことがある」という若手クリエイターの方も募集しています!
参加希望の方は、Googleフォームからぜひエントリーしてください。
それではまた、お会いしましょう👋🌈
Design Scramble Cast 公式サイト:https://designscramblecast.jp/
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