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【同人誌印刷所レビュー】プリントオンさんでわくわくドキドキしてみた 

 こんにちわ、産休カウントダウン中の元気な同人女です。リアルイベントにはいけない体ですが、webイベントがあるご時世、サイコーですね。春コミ行きてえよぉ。
 今回は、みんなが気になっているプリントオンさんの「わくわくドキドキデザインセット」、通称「わくドキセット」を実際に発注してみたので、レビュー記事を投稿したいと思います。

 既に類似のnoteやレビュー記事は沢山あるのですが、今回、私も発注に当たって色々と悩むことがあり、沢山レビューを読み漁り参考にしまして。
 で、いくつあってもいいな、これは。って思いました。なので書きます。

 なお、当方は同人歴17年、ここ数年の年間発行数は平均6冊の、いにしえからの小説書きです。主に8~12万字の小説本を出しています。
 あと、いつも同人誌はデザイナーさんに外注する方です。自分で作成することはほとんどありません。

(前置き)わくドキデザインセットとは

 既に解説記事が沢山あるので、ここではざっくりとしかご紹介しませんが、表紙・装丁諸々全部をプリオンさんのデザイナーさんにお任せする、というデザイン料やオプション料金込みのセットです。こいつはわくわくドキドキするぜ……主に作者がな!
 価格はA5サイズ表紙込み76ページで、50部刷ると48,000。単価960円です。切り上げたとしたら頒布価格は1000円。これは結構「うっ」てなる価格です。
 ちなみに同じプリオンさんで、表紙フルカラー本文モノクロPP加工つきの標準セットだと、35,700なので、単価は714円。参考までに私の推し印刷所で、安価な印刷所さんの代表であるコミックモールさんで同様の装丁をお願いすると28,400、単価568円となります。
 もともと格安ではない部類のプリオンさん、デザイン料込み、オプションがあるかもしれない仕様……とはいえ中々値が張ります。
 そして納期は9日。土日祝はカウントされないので、約2週間とみて良いでしょう。早割を使わない場合にも余裕入稿が求められます。
 そして、下の方に小さく書いてあるけど気になる注意事項があります。それは「再販の場合デザインが変わります」という文言。つまり、同じデザインの本は再販不可ということです。

 う~ん……。
 つまりこう。

【メリット】
・(同人誌の作者が)わくわくドキドキできる。たのしそう。
・デザインや表紙作成、依頼の手間が省ける

【デメリット】
・一冊単価が高くなる(購入者か製作者のどちらかが負担)
・〆切が早い
・再販不可

 箇条書きにしてみると、こう、同人女的には「面白そう!」という気持ちになり、たいへん惹かれる一方で、読み手の気持ちを考えるとリターンが特にない、というのが現実です。
 価格については、そもそも外注するつもりならそのコストが別に乗るだけなのでそこまで影響しないかな……と思ったけど、読み手さん的にはどうなんだろう? 俺達が頑張って神絵師様などに依頼して、スケジュールとか調整して、推しのイラスト入りの本を出した方が嬉しいんじゃないか……?
 そして再販不可……部数読み間違えが多い私には頭が痛い問題です。

 かつ、私はそこそこ長めの小説書き。
 いつも200±50ページくらいの文庫本を出しています。A5の2段組にしても100ページはカタい。
 いくら装丁をデザインして貰えるっていっても、100頁なら本文は(プリオンさんの採用用紙の中だったら)淡クリームキンマリ72.5kg一択じゃん? とか思っちゃったりして。

 そんなわけで、ずっと心のどこかでわくドキが気になりつつ、手を出していなかった……のです、が。

 今回電卓を叩きまくり、「いけるのでは?」となりました。
 以下、まずはコストと頒布価格の計算の話です。

(前置き)まずはコスト計算

◎案1、ポイントを活用する
 私は元々プリオンさんのヘビーユーザーです。特に、少し前に装丁もりもり大部数のアンソロジーをノベルティつきで発行したこともあり、累積金額でけっこう使っていました。プリオンさんは使用金額の2%のポイントが溜まりますので、たとえば累積で50万円使っていれば、1万円値引きしてもらえるわけです。これは使えるのでは? と思ったのがわくドキの検討をはじめたきっかけでした。
 ちなみに、えらくセコい考え方なのですが、ポイント利用(定額割引)を活用する場合には、1冊単価が安く・少部数であるほど割引率が高くなります。単純に10万円から1万円引いたら10%OFFだけど、2万円から1万円引いたら50%OFFになる理論ですね。
 具体的には、A5で40ページ30部の場合、印刷代は27,100円。単価は903。さすがに赤字本確定の原価です。しかし、ここから1万円割引くと単価は576円……お安いとは言えませんが、かなり負担は少なくできるかと思います。

◎案2、薄めの本を少部数発行する
 色々電卓叩いてみたんですが、ポイント利用の如何にかかわらず、わくドキは薄めの本を少部数発行する時に活用した方がお得な気がしました。大部数や、100ページ超えの本だとけっこう厳しい金額になります。
 これは外注とは真逆です。外注の場合、たとえば1万円で表紙イラストを提供してもらうということが最初に決まってしまうので、予算が2万円だった場合負担がかなり厳しくなりますが、予算が10万円くらいなら外注費も吸収できるという構造です。なので、外注の時には大部数・厚い本の方がやりやすいんですよね。

◎案3、フェア利用で最速早割が適用可能なスケジュール
 ポイントない! っていう場合に強い味方なのが早割です。もちろん併用で積むことも可能。
 プリオンさんは定期的にフェアをやっています。今回は、3/31までの入稿で適用となる春フェアに目を付けました。最速早割を利用することで、セット料金を25%オフ+オマケで余部5冊プレゼントのコンボが使えます(余部5冊プレゼントも少部数なほど割引率が上がるオプションです)
 案1で前述したA5で40ページ30部を例にすると、27,100円は、25%オフで20325円に。オマケ5部を考慮して35で割ると単価は580円。1万円分ポイントを利用したのとほぼ同じ金額になります。
 ただし、納期はほぼ4週間となるので要注意。
 ちなみに、更にポイントを1万円使えば10,325円。なんと単価295円……格安印刷所みたいなお値段になってしまいました。

 うっかり本気で電卓叩いちゃいましたが、少部数・薄い本であれば、早割や、ポイント利用を活用すればわくドキとて普通の同人誌にかなり近いコストで刷れることがわかりました。
 さてはお前ケチだな? うるせー再録で1000ページの同人誌に50万ぶちこんだばっかりで金がないんだ(前の記事参照
 もちろんこんなセコセコ電卓叩かずとも、えいやっと赤字本出すっていう選択肢もあると思うんだけど、同人活動は無理なく楽しみたいですからね。
 あと、やっぱり価格表見て「高いな…」って思うのがひとつのハードルだと思うので。敢えて具体例で、安価に絞る方法を書いてみました。

 というわけで、前置きが長くなりましたが、ここから実際に発注してみたレポートをしていきたいと思います。

わくドキ発注書を書こう

 原稿製作段階の話はすっ飛ばします。えー、ここにA5サイズで50ページの原稿があります。ずっと40ページで計算してたのに50ページになってるあたり小説同人女って感じがしますね。すみません。こいつをまず、入稿します。入稿するとわくドキ発注書なるものを記入する画面が出てきます。……書いてみたのがこんな感じ。

 カップリングとか本のタイトルについては割愛しましたが、希望のテキストを表紙に入れて貰うことができます。たとえば私はジャンル名とナンバリング(何冊目の本か)というのを表紙に入れたい派なのですが、そういう要望も聞いてもらえます。
 内容については、記事の主題が主題なので公開しましたが、正直「お前なんでそんな話書いたの?」って感じのトンチキコンセプトなので、できれば薄目で見て頂きたい。
 正直わたしは、「この話の見どころはこのシーンで!」「キーアイテムはこれで!」みたいなのを語るのが得意ではないです。だからって二行目からネットフリックスとか言ってるけどこれ大丈夫か?

 元ネタはこの番組。パワフルな英国淑女のおばあちゃんデザイナーがいろんな意味で大暴走する作品で、めちゃくちゃ面白いからおススメです。
 同人誌なのでまあ、二次創作だったりとか、既存の作品にインスパイアを受けてることは許されるだろう……多分……。要するにアメリカのリアリティ番組っぽい構成なんだなっていうことが伝わればいいかな。

 で、……恋愛メイン……BLで……舞台設定は国籍不明都市……一応現代ものっぽい……? ふやふやすぎる。書き手としてはストーリーより軽快なテンポとかセリフ回しとかを喜劇的に楽しむ、っていうコンセプトがあったので、言い訳くさいけどそういうことを盛り込んでみました。

 そして、キーアイテム。
 家具、インテリア、部屋の扉 など
 ふざけてません、私は真面目です。三回読み返したけど、正直なんもなかったのでムリヤリ捻り出した。話が割と軽快に移ろっていく感じなので一貫したテーマがなかった。しいて言うなら主人公達がくっつくかどうかを、端役の男達がドーナツ1ダース賭けてやいのやいのしてるので中盤からラストまでずっとドーナツが出てくるが、まかり間違ってもキーアイテムではない。ちなみに本文中で一番インパクトを残すアイテムは絶対「ゲーミングデバイスみたいに七色に光るSMグッズ」なんだけど、完全に一発ギャグだし何のキーにもなってない。

 で、NG。
 自然。ドーナツ。
 なんやそれって感じだけど、都市でインテリアデザイナーが部屋を作る話なので、人工的な雰囲気の方がいいなっていうどえらく雑な要望です。海とか花とか星空とか、そういうアレじゃないなっていう。にしても、自然って書いちゃうと範囲がでかすぎないか? 大丈夫か?
 ドーナツは、前述の理由で「やけに存在感があるアイテムなんだけどこれはメインではない」と思ったので念のため入れておいただけです。

 さて………この発注書が……どうなる!?

 今回、最速早割をキメたので、納期は1ヶ月。2/22〆切の、3/24納品(3/25開催のwebオンリーあわせ)というスケジュールです。
 ちなみにポイントも併用して端数を切り捨て、50ページ35冊で支払いはジャスト2万円にしてみました。
 入稿した日に「hey, なんか原稿サイズA4になってるから修正してちょ!」と言われるという不備がありましたが、翌日には無事に再入稿が受理されました。
 で、3日後にはそわそわしている。1ヶ月納期だもん、いつプリオンさんからデザインできたとか連絡があるかもわからないし。デザインが完成してもどういう装丁になってるかハッキリするのは納品時。

 ハァーーーッ
 わくわくドキドキする!

 これ、ちょっと想定以上にわくわくドキドキします。
 え!? すごくない!? たったの2万円ぽっきりでこんなにわくわくドキドキさせてもらっていいんですか!?
 コスト計算の時にしれっと書きましたけど、同人誌の装丁、外注したら1~2万くらい余裕でかかるんですよ。もちろん打ち合わせとかリテイクとかさせてもらうことが多いけど。
 予算が10万くらいあればそのうち1~2万を装丁の外注に回すことはできるけど、もとが1~2万円の本で外注するのってほぼ無理筋です。

 わくドキコスパ最強では!?(手のひらクルー)
 一発勝負っていうのがまた、いいですね。わくドキ感倍増。テンション上がりまくり。毎日メールチェックするのが楽しくなる。

まさかの高速納品

 さて、わくわくドキドキし続けること約3.5営業日7日……。この間、私は呑気にpixivに載せる短編小説を書いていた、の、です、が。

 突然 >本ができたから発送したよ< メールが届く。

 え!?

 そう、今回はイベント会場納品ではなく自宅納品。
 そして入稿が2/21という、春コミ前のいわゆる閑散期……たぶんもうしばらくすると春コミあわせの原稿がどさどさっと入稿される時期。
 プリオンさん側も、忙しくなる前に終わらせたかったのかも。

 でも早割なのに、通常納期より早く届くって……そんなことある?
 もしかしてPP加工とかされない感じ(特殊紙表紙)かな?
 いやそれにしても早くない?
 通常納期5日の印刷所ですよ?
 それにデザインする時間が必要なはずだよね???
 何? 何をどうしたらこんな高速で納品される展開になるの????

 しかも、高速納品だからなのか手違いなのか、見本画像が届いてない。
 いや、え、え???
 何が届くか完全に、一切わからないまま発送される事案発生。

 ……まさか表紙に何も印刷されてない、のでは?
 あまりにも納期が早すぎて、疑心暗鬼になる私。
 わくわくドキドキセットの醍醐味である。

 いやね、自宅納品で早割利用するとたま~にこういうこともあるのですが、それにしてもこんな早いことある!? 特急印刷か??? 割増料金払わなくてもいいの? ってくらい早かったです。正直私の同人人生史上最速です。びっくりした。
(※今回はたまたま偶然こうなっただけで、自宅納品は必ず短納期になるなんてことはありませんので、ご注意くださいね。)

そして現品が家に届く

 トドイチャッタ……。
 正直、もうちょっとわくわくドキドキしたい。でも中身が気になる。
 どうしよう。

 よし! ライブ配信しよう!
 というわけで、twitterのスペース機能をつかってトークショーのネタにしながらリアルタイム開封の儀を行いました。装丁についてお喋りしながら、フォロワーとわくわくドキドキしようと思って。
 わくドキセットで一番楽しいのは作者(私)なのでね……。

 なお、ライブ配信を決めてから、プリオンさんから「表紙画像のサムネです☆」っていう順番前後したメールが来たんですが、こうなったら何も知らないまま配信した方が面白いと思ったので見ませんでした。

箱を開封するとでっかい「?」が

 小さな字で表紙はコートカード、そしてマットPPと書いてある……どうやら印刷はされているらしい……。納期短いから特殊紙表紙かと思ったらマットPP……。

 待って、しかもエンボスニス???
 この短納期で????

 そわそわしながら包み紙を剥がす。

 ぺりぺり……。びりびり……。

 わー!
 えっ オシャレ!!!
 ルミネの広告みたい!!!!(褒め言葉の語彙がダメ)

 エンボスニス加工で、タイトルのところがツヤツヤになっていました。

仕上がりがこちら!

プリオンさんから届いたサムネ画像
  • 表紙:コートカード180kg

  • PP加工:マットPP

  • 本文用紙:淡クリームキンマリ72.5kg

  • 遊び紙前:ミランダばら

  • 加工:エンボスニス

 なんと、カラーリングが…推しカプです…。
 イメージカラーの欄に推しカプのカラーリングを記載したりはしてないので、デザイナーさんの方で調べてくださったのだろうか…?
 その上で、キーアイテム:インテリアというよくわからない指示を的確に汲み取って頂けた。コーヒーカップもね、作中にちょっと出てくるモチーフです。

 読んだんか?
 この短期間で??

 ちょっと色々気になるところですが、真相は不明。

 とりあえず、楽しい。
 ニヤニヤしながら数日間本の表紙を眺め続ける私。
 本文にどえらいミス(冒頭で晩夏って書いてあって、1~2か月しか経っていないはずなので、途中で春先云々って言ってる部分があった)でずっこけたけど、それはそれ、これはこれ。

総括と感想

 さて、もともと私は同人誌をデザイナーさんに外注(馴染みのお友達にお世話になる率90%くらい)することが多い……と冒頭にちらっと書きました。その中で、デザイナーさんに用紙見本やインク見本まで送りつけて総合的なプロデュースをお願いしたこともあります。
 それでもわくドキセットは、その時の比じゃなく、ものすご~くわくわくドキドキしました。
 何故なら、外注するにしても、「デザイナーさんを選ぶ」「使うオプションなどは提案してもらうこともあるものの、事前に決めて打ち合わせ済み」という状況からスタートしているから。
 馴染みのデザイナーさんなら、どんな作風かある程度はわかっているし、「あなたの水彩画が好きだからポートフォリオのこのへんイメージの水彩画でください」とかそれくらいの指示は、してるんですよね。
 あと、ラフ貰ったりもするし……。

 しかし、わくドキセットは、どんなデザイナーさんがどんな雰囲気で表紙を作成してくださるのか、一切ブラックボックスのまま現品が届くまで何もわからない。
 今回、現品みて開口一番の感想が「ルミネの広告みたい」っていうアホっぷりだったのですが、私は自分の本をルミネの広告みたいにしたいと思ったことないです(笑)ネガティブな意味じゃなくて、「想像もしなかった」っていう方向で。
 だから、デザイナーさんに「ルミネの広告みたいな雰囲気でお願いします」とは絶対言わない。っていうかルミネの広告に似合う文章って、最果タヒの詩とかそういうオシャレな美文だけだと思ってたし……。
 ノー打ち合わせ、ノー原稿チェックだからこそ出来上がった表紙です。

 そんな経験は、他ではできないです。
 やってよかった……。
 めちゃくちゃ楽しかったです……。楽しい……いやほんと楽しい……。

 楽しいしか言えないんですよ。

 ちなみに、わくドキデザインセットは自作の画像・イラストを1カットまでであれば取り入れて頂けるそうなので、画像が用意できない人はもちろん、是非絵師さんにもチャレンジして頂きたいなって思いました。

 長くなりましたが、ちょっとでも楽しさが伝わったなら幸いです。
 みんなもやろうぜ、わくわくドキドキデザインセット!

 おしまい


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