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【前がき、及び原体験について



子供の頃、訳もなく「自分は死ぬ、どうしよう」と不安になったことはないだろうか。



僕が6歳くらいの頃、もう冬も終わりかけだっただろうか。僕の実家ではしつこくコタツを出しっぱなしにする怠惰があった。
電源も入れない、まだ少し爪先が冷えるから、少し潜り込むところが欲しいから出している。
褒められた事なんて全くないようなズボラさ加減だ。
その中に潜り込んで、本を読んだり小型の懐中電灯をつけてちょっとしたキャンプ気分を味わったりすることがその時の僕の楽しみでもあった。

今から考えれば贔屓目にしても変な子供だったんだとは思う。

その日も学校から帰ってくるなり電源の入っていないコタツに潜り込んだ。
確か夕方で、カラスもそこそこに鳴いていたことは覚えている

僕の家は母子家庭で母親は働きに出ていたので家に帰ってくるのは遅い、同居していた母方の祖母もパートをしていたので帰ってくるにはもう少しかかる。
完全に家の中には一人。

いつも通りの流れではあったとは思う。
懐中電灯とお気に入りの本を引っ掴んで潜り込む

ひとしきりその日もキャンプ気分を楽しんだ後、
ふといつもとは違うことをしたくなった。

懐中電灯をカチリと消してみる。
時間帯が夕方というのも手伝って、ほぼ自分の周りは完全な闇になった。

そこからどれくらい経っただろうか
暗闇になると時間感覚が曖昧になってくる。

言いようの無いなにか不快な感情がジリジリと襲ってくる。

訳が分からなかった。
ジリジリジリジリジリジリと不快感が増してゆく。
今から思えばすぐにコタツから出ればよかっただけなのに、その当時の僕にはその選択肢が無かった。
ジリジリジリジリジリジリジリと心臓がゆっくりと早く動いていく感覚が今でも薄い胸板に残っている。


「このまま死んだらどうしよう」
怖かった。



コタツ布団を押し上げてすぐに出ればいいだけなのに。
全く出る事はできなかった。
誰かに出るなと言われたわけでもコタツ布団を押さえられているわけでもない。
頭のなかでダラダラと脂汗が滲み出ている感覚が止まらない。




「アンタ何してるの?」
母だった。







その後、僕はコタツ布団を押し上げられて話しかけられた事に気づいた。
母親に抱きついてワンワン泣いていた。


この出来事から二十数年、僕は勿論死ぬこともなく生き抜いた。
それなりに少年から青年になり、それなりに社会に出た。

ただひとつ「それなり」ではない事とすれば
この出来事以降、僕は「怖い話」を集めてしまうようになったこと。
怖い話、恐怖体験、心霊スポット、都市伝説・・
最初は学校の七不思議や怪談、都市伝説から始まり、歳を重ねていくにつれ所謂「心霊スポット」を周れるだけまわり、SNSなどに恐怖体験などをあげている人が居ればアポを取ってインタビューの様なものをした事もあった。
酷ければ長期休暇などを使って他県にまで行った事もある。

なぜ、二十数年「恐怖」「怖い話」を集めているのか
なぜ、それは続いているのか

今を持ってしても詳しくは自分でも分かっていない。
ただ、「恐怖」が蓄積されていくだけである。




ここには覚えている話、またこれから集まるであろう話を書き留めていこうと思う。
これを最後まで読んでくれている危篤な人がいるとすれば、嘘か誠かどちらでも良い、という酔狂な人がいるとすれば

面白がっていってくれば幸いである。

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