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D&Iとインプロの新たな可能性ーなぜフィアレスはD&Iワークショップを行うのかー

こんにちは、フィアレスCEOの内海です。フィアレスは現在、D&I(Diversity & Inclusion)のためのワークショップを開発しています。それにあたり、なぜフィアレスはD&Iワークショップを行うのかを書いておこうと思います。

そもそもフィアレスとは?

株式会社フィアレスは、「人や組織の恐れを取り除き、誰もが創造性を発揮できる場をつくる」をミッションに活動しています。人間関係の中には、さまざまな恐れがあります。表現することへの恐れ、コミュニケーションへの恐れ、失敗への恐れ――これらの恐れを、私たちの専門であるインプロ(即興演劇)の手法を用いて取り除いていきます。その結果、誰もが創造性を発揮できる場をつくっていきます。(詳細は株式会社フィアレスHPへ)

D&Iワークショップのきっかけ

なぜフィアレスがD&Iワークショップを行うようになったかというと、きっかけは「インプロを用いて、D&Iに関する体験型ワークショップができませんか?」というお問い合わせからでした。「D&Iについて頭で理解するだけでは行動は変わらない。体験的に理解することで、行動変容を促したい」そんな声を頂いて、私はインプロを用いたD&Iのワークショップについて考え始めました。

正直に言えば、始めのうち私は「インプロとD&Iに関係はあるか……?」と疑問に思っていました。しかし、実際にワークショップを考えてみると、その近さが明らかになってきました。ここからは、以前行ったインプロ×D&Iの体験ワークショップの内容をもとに、インプロとD&Iの関係について紹介していきます。

インプロもD&Iも「未知」への振る舞いを学ぶもの

即興を意味する「Improvisation」の語源は、「Im(~しない)+pro(前もって)+visation(見ること)」です。「前もって見ることをしない」すなわち「未知へと飛び込む」ことを意味します。だからインプロを学ぶことは、「未知」に対する振る舞いを学ぶことと言えます。

そして人は未知に出会ったとき、次のような反応をします。

まず第一には「驚き」です。人は未知に出会うと、まずは生理的な反応として驚きを感じます。そして次は大きく2つのルートに分かれます。ひとつは「好奇心」を抱いて、未知に対して関わっていくというルートです。もうひとつは「恐れ」を抱いて、未知を拒絶するというルートです。

インプロでは、未知に対して恐れを抱くのではなく、好奇心を抱いて関われるようになることを目指します。また、そのような自分になるためのさまざまなゲーム(インプロゲーム)があります。

そして他者は本質的に未知です。特に自分と違う文化を持っている人ほど、未知として目の前に現れます。そのときに好奇心を抱いて関わっていけるか、恐れを抱いて拒絶してしまうか――そんなところにインプロとD&Iの近さを感じています。

同時に、このような態度は心理的安全性にも関わっています。最近の研究ではD&Iと心理的安全性はセットで語られることが増えていますが、インプロワークショップはこれらについて包括的に扱えること、それも頭で理解するだけではなく体験を通して理解できることに特長があると考えています。

アンコンシャスバイアスで「遊ぶ」

インプロとD&Iの基本的な関連性は「未知への振る舞い」にありますが、インプロはD&Iの大きな課題である「アンコンシャスバイアス」についても有効なものだと感じています。

多くのアンコンシャスバイアス研修では「アンコンシャスバイアスに気づいて、取り除いていこう」というアプローチを取っています。しかしアンコンシャスバイアスは無限に存在するものです。したがって、このようなアプローチは常に「自分は間違っているのではないか」という恐れを植え付けてしまう可能性があります。このような恐れは偏見を抑制することにもつながりますが、同時に人が本来持っている創造性を抑制してしまう可能性もあります。(もちろん、実施する側にはそのような願いはありませんが、構造的にそうなりやすいと思います。)

それに対して、インプロワークショップでは「アンコンシャスバイアスを積極的に使っていく」というアプローチを取っています。演劇の世界ではキャラクターや関係性を演じるために、「相手の見方を変える」というテクニックを使います。例えば恋愛シーンを演じるためには、相手のことを「好きな人」として見る必要があります。それをせずに演じると、恋愛シーンにしては余裕がありすぎる(嘘っぽい)演技になってしまうからです。演劇の世界ではこれを「エンダウメント」や「ポイント・オブ・ビュー」と呼びますが、その実態はアンコンシャスバイアスと同様のものです。

私はこれを「メガネをかけかえる」と呼んでいます。例えば「目の前の人は自分の味方である」というメガネをかければ、自然と相手に関わっていくようになります。反対に、「目の前の人は自分の敵である」というメガネをかけると、自然と相手を拒否していくようになります。そのほかにも「目の前の人は天才である」「目の前の人は自分に好意を持っている」「目の前の人はキレると怖い」など、さまざまなメガネをかけることで、自分の振る舞いや関係性を変えていくことができます。

ワークショップでは、さまざまなメガネをかけかえることで、自分が普段かけているメガネに気づいたり、それを変えるきっかけをつくっていきます。そしてそれを「義務」ではなく「遊び」としてできるのがインプロワークショップの良さだと感じています。

ワークショップ参加者の感想

フィアレスではこのような考えからインプロ×D&Iの体験ワークショップを行いました。多くの参加者はインプロが初体験でしたが、みなさん満足していただけました(平均満足度は5段階中で4.6)。また、D&Iを「自分ごと」として体験している点が印象的でした。以下、掲載許可を頂いている感想をいくつかご紹介します。

クリエイティブで、ユニークなワークでした!普段の業務だけだと頭が固くなり、そして情報が多い時代には、見え方に偏りが出てしまうので重要な気づきを得られた気がします。

体験内容の充実度、ファシリテーションのスムーズさ、安心安全な空気感、どれも最高でした!ありがとうございました。

バイアスのインプロが非常に面白かった。自分が基本的に苦手な人と「会話をそもそもしない」ということに気づきました。それを完全に変えたいかというとそこまでの気持ちにはなっていないですが、そういう自分がいるという気づき自体がよかったです。

身体を使うことで、頭でわかっていることと実際の行動に移すことのハードルをさげていくことができるので、研修にとても有効だと思いました。

ワーク中心で、頭ではなく、心で感じることができました。こういうアハ体験みたいなものが自分のパラダイムをシフトさせることにつながるのだと思いました。多くの気づきをいただきありがとうございました。

楽しみながら、気付きがありました。心理的安全性の高い場で、初回でも安心して参加できました。

自分次第で見え方が変わってくると言うことを体感できました。苦手な人、と絶対的なものはなく、自分で創っているんだとつくづく思いました。多様性はいいこと、いろんなことを否定してはいけない、パワハラになるので、思ったことを言ってはいけない、、と今の社会、組織では、べからず集が多く、かえって個性が出しづらい雰囲気なのではないかと思います。受け止め方も色々あっていい、もっと心から自分の声を出していい、そんな経験を重ねていくことで、若い世代の方も集団の中でマイノリティの立場に置かれる人も自信を持って、生きていくことができると思います。

改めて、なぜフィアレスはD&Iワークショップを行うのか?

私がフィアレスを立ち上げた理由は、「働く場をインプロの場のようにしたい」という想いからでした。

インプロワークショップの参加者からよく聞く言葉に、「うちの会社もこういう場であればいいのに……」というものがあります。インプロの場では失敗を恐れずチャレンジでき、自分を表現でき、他者に貢献する喜びも感じられる。しかし、会社ではそうはいかない……。そのことに悩んだり、中には仕事を辞めてしまう人もたくさん見てきました。

「それなら会社もそういう場にしてしまおう!」そんな思いでフィアレスはスタートしました。インプロの手法を用いて、会社をより安心で、楽しく、創造的な場にすること。それは会社で働く人を幸せにすることであり、会社のお客さんを幸せにすることでもあり、社会をよりよくすることだと信じています。

そしてD&Iについて学んだりワークショップを行う中で、それはD&Iや心理的安全性の思想にとても近いものだと気づきました。ありのままの自分でいること、他者と積極的に関わっていくこと、そのことによって新たなものを創造していくこと――そんなところにインプロとの親和性を感じました。

心理的安全性に対する誤解の記事でも書きましたが、それはただ優しいだけの場ではありません。D&Iは「Diversity & Inclusion」ですが、同時に「Diversity & Innovation」でもあると私は考えています。

私たちはインプロ×D&Iワークショップを行うことで、D&Iを義務(恐れ)ではなく、喜び(好奇心)として推進していくお手伝いをしたいと思っています。そしてそのことによって、社会をより安心で、楽しく、創造的な場にしていきます。

インプロ×D&Iワークショップの今後

この記事では主に「未知への振る舞い」「心理的安全性」「アンコンシャスバイアス」に触れましたが、インプロ×D&Iワークショップにはさらなる可能性があると感じています。例えば、以下のようなテーマです。

  • 権力関係を可視化する

  • ひとりの人の多面的を見る

  • 正直にフィードバックできる関係になる

とはいえ、今後ワークショップを開発していくにあたっては、企業の実際のD&I課題について学ぶ必要があると考えています。そこで、フィアレスでは現在企業のD&I担当の方、もしくは今後D&Iを推進していきたいと考えている役員・人事の方々にインタビューを行っています。この記事を読んだ方の中でご協力いただけます方は、下記フォームよりご連絡いただけますと幸いです。

▼D&Iインタビューご協力者様用フォーム
https://forms.gle/B8BW219JSMSnzbVJ8

また、インタビュー実施後には、それらの声をふまえて再びインプロ×D&Iの体験ワークショップを行う予定です。こちらにご興味のある方は、下記フォームよりご登録ください。体験ワークショップの準備ができ次第、ご連絡いたします。また、「心理的安全性」や「アンコンシャスバイアス」に関しては既にプログラムがありますので、社内研修・ワークショップとしてのご提供も可能です。こちらにご興味がある方も下記フォームよりご連絡ください。

▼D&Iワークショップ体験・依頼フォーム
https://forms.gle/3tGrLbyQ2wPqfdQp8

みなさまと出会えることを楽しみにしています。どうぞよろしくお願いいたします!

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