マガジンのカバー画像

感 搖 句。

11
感じる。揺れる。ことば。
運営しているクリエイター

#慣用句

感 揺 句。

感 揺 句。

第9話『輪を掛ける』

 ばあちゃんが亡くなったのは、昨年の初夏で、過ごしやすいときだった。梅雨でもなく、暑すぎず、ほどよい風の吹く季節だった。

 じいちゃんはとっくに亡くなっていて、約30年後くらいに、ばあちゃんが後を追う形で、鬼籍に入った。

 晩年は足腰を痛めていたものの、大きい病気もしておらず、通院することもなく、元気にデイサービスや地元の老人クラブ(本人は老人クラブじゃないと言い張って

もっとみる
感 揺 句。

感 揺 句。

第8話『石が流れて木の葉が沈む』

 妹からのLINE。

 もちろん未読無視だ。見る必要がない。ブロックするのを忘れていた。

 そのそばから電話。これも、妹。

 出たくない。出たくない。出たくない。

 無視を決め込んだ私に、母から電話。こういう手を使うのは予測の範囲内。

  はい?

 「もしもしお姉ちゃん、お母さんだけど。」

  はい。で? 何ですか?

 「何ですかって、もう、何で

もっとみる
感 揺 句。

感 揺 句。

第7話 『雨の降る日は天気が悪い』

 仕事を辞めた。

 寿退社でもヘッドハンティングでもなく、ただ、辞めた。辞めたくて辞めた。

 意地になって、やめるもんかって思って、今の仕事を続ける気持ちはなかった。そこまで仕事に縛られる必要はないと思うし、私の代わりはいくらでもいる。

 しばらくは失業保険をもらいながら生活することにして...と考えている。

 自宅暮らしだから、家賃や光熱水費は困らな

もっとみる