シェア
もも
2020年1月2日 21:21
第9話『輪を掛ける』 ばあちゃんが亡くなったのは、昨年の初夏で、過ごしやすいときだった。梅雨でもなく、暑すぎず、ほどよい風の吹く季節だった。 じいちゃんはとっくに亡くなっていて、約30年後くらいに、ばあちゃんが後を追う形で、鬼籍に入った。 晩年は足腰を痛めていたものの、大きい病気もしておらず、通院することもなく、元気にデイサービスや地元の老人クラブ(本人は老人クラブじゃないと言い張って
2019年12月31日 13:58
第8話『石が流れて木の葉が沈む』 妹からのLINE。 もちろん未読無視だ。見る必要がない。ブロックするのを忘れていた。 そのそばから電話。これも、妹。 出たくない。出たくない。出たくない。 無視を決め込んだ私に、母から電話。こういう手を使うのは予測の範囲内。 はい? 「もしもしお姉ちゃん、お母さんだけど。」 はい。で? 何ですか? 「何ですかって、もう、何で
2019年12月29日 15:04
第7話 『雨の降る日は天気が悪い』 仕事を辞めた。 寿退社でもヘッドハンティングでもなく、ただ、辞めた。辞めたくて辞めた。 意地になって、やめるもんかって思って、今の仕事を続ける気持ちはなかった。そこまで仕事に縛られる必要はないと思うし、私の代わりはいくらでもいる。 しばらくは失業保険をもらいながら生活することにして...と考えている。 自宅暮らしだから、家賃や光熱水費は困らな