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町を元気にするプロジェクト【後編】矢野将文 #里山スタジアム誕生へ

当社代表取締役社長の矢野将文に「里山スタジアム」にかける思いを聞きました(全2回)。後編の今回は、現スタジアムと「里山スタジアム」の建設にあたって周囲の反応の違いや、「里山スタジアム」が完成するまでに市民が関われること、味わえる感動について話してもらいました。

Q:夢スタと今回の「里山スタジアム」の建設とでは、周囲からの反応は違いましたか?

想いや活動を知っていただいた上での挑戦なので、反応やご理解は違う

2017年の9月にこけら落としをした「ありがとうサービス.夢スタジアム®」は、2015年の6月に「ここでスタジアムをやるぞ!」と決めてからスタートしたスタジアムです。

当時はJ5相当の四国リーグですし、まだ今治のみなさんの認知も低かったです。「ありがとうサービス」さんが建設費用のほとんどを拠出して、作っていただきました。でも今回は認知度も関係者の数も違う状態でお話を進めていったということもあり、周辺環境が全然違っているという大前提があります。

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また総工費もひとケタ違います。40億円というお金がかかるということは、40億円の事業を受ける人がいるわけです。受ける人は施工者であり、施工者から受注される人。つまり40億円というお金が、地元を含むさまざまな関係企業様に還流するということになる。そういう意味でもとても影響力のある事業だと思っています。

周囲の方々の反応については、2015年に今治で立ち上げた当時は「東京からなんか有名人がやってきたぞ」「野球の町なのになぜサッカー?」とその程度の温度感でした。一方で今回の「里山スタジアム」建設にあたっては「Jリーグチームになると、試合するたびにあれだけ愛媛新聞に載ったり、テレビに出たりするんだ!」とか「サッカーだけの会社じゃないんだ」とか、そういう想いや活動をみなさんがある程度知っていただいた上でのさらなる挑戦ですので、周囲のみなさんの反応やご理解は違っていると感じますね。

今治の経営者の方々の温度感も、当時と比べて変わりつつある

また、ある経営者の方から「今治の人が、今治のものを自慢するようになった」とおっしゃっていただきました。これまでは「今治の美味しいお酒って何?」って聞かれたときにも隣町の有名なお酒を答えたりしていたそうですが、今だと「山丹正宗」と地元の酒を自慢するようになったと。

「これまでは、自分たちのことを卑下するようなところが今治の人たちはあったような気がする。それが変わってきた」とおっしゃっていただいたんです。その方が言うには、焼豚玉子飯がB級グルメで上位になり、バリィさんが有名になり、今治タオルのブランディングに成功し、しまなみ海道の多島美も素晴らしく、サイクリストの聖地となり、「自分たちの街にもいいものがあるんだ」というのがたくさん積み重なってきたときに、FC今治が来たと。全国に向けて先駆的な動きをしているフットボールクラブであるFC今治が最後のきっかけとなって、地元のものを自慢するようになったと言っていただけました。

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それぐらい、今治という名前が全国に向けて発信されていくということに、スポーツの力を感じていただいている経営者の方々も多くなったんじゃないかなと思っています。

Q: 2021年11月の着工から2023年の竣工までの間で「里山スタジアム」に市民が関われることはありますか?

「里山スタジアム」が成長する過程で市民参加型整備をしたい

まさに今、市民参加型整備という話を社内でもしています。重機で作る構造物ではない、たとえば門とか柵のようなものを、みなさんと一緒に作っていただきたいなと思っているんです。私たちは完成時から徐々に古びていってしまうスタジアム施設ではなくて、時間の経過とともに成長していく里山のようなスタジアムエリアにしていきたいと思っているんです。

その成長していく過程には、人の手で「更新」していく作業があったり、植生が増していく途中の段階で「手入れ」をしていくという作業活動も間違いなく必要で、そこを一緒になってやっていただきたいと思っています。苗を植えるのもそうですし、「この草には元気になってほしくないな」と思う植物を引っこ抜くとか(笑)。そういったことを市民のみなさんと一緒にやっていきたいなと思っています。
「里山プラザ」も「里山プロムナード」も「里山ジャルダン」もすべて、手を入れていくことで、みなさんが来たいと思っていただける場所になると思うんです。

たとえば「タオル美術館」さんのガーデンを思い浮かべてほしいのですが、あそこは本当にしっかりとお手入れされているんですよね。だからこそ行きたくなるんです。草ボーボーでお手入れが不十分なところだと「あ、ここはどうでもいい場所だから、ゴミを捨ててもいいんだ」と思ってしまう。でもキレイにしていたら、みんながキレイに使おうと思ってくれるんです。だからこそ「里山スタジアム」は、市民のみなさんとともに、人の手が入った美しい場所にしていきたいと思っています。

人がそこに人工物を作る以上は、日々小まめに手入れをすることで、長い目で見たら手入れが少なくて済む状態まで持っていけたらいいですよね。その作業はうちの会社がやることですけれども、そこに持っていくまでの成長をみなさんにも楽しんでいただきたいので、市民参加型整備を進めていきたいです。

それにたとえば「あの杭は私が打ったの」とか言えたら、自分のものみたいな感じがして楽しいじゃないですか。「私の杭!」みたいな(笑)。そういう関わり合いを持つ人を増やしていきたいなと思っています。

Q :「里山スタジアム」では、どういった感動を市民のみなさんが感じられますか?

家での生活とは違う「生き生きとした平穏」を感じてほしい

サッカースタジアムは年間30日の試合日を除いて、330日は非日常じゃなくて日常なんですよ。なので「里山スタジアム」で感じていただきたい感動は、言ってみれば「生き生きとした平穏」みたいな感じかな。「わ〜!」っていう熱狂とかではなくて、みんなが日常的に集まってきながらも、家での生活とは違う生活や心の豊かさを感じられる場所だと思ってほしいですね。穏やかな場所であるからこそ、いつも行きたくなる。それは冴えない穏やかさじゃなくて、みんなが生き生きとした穏やかさですね。

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330日の中で健康チェックのようなものができたり、キッチンカーが出店していたり。その頻度がどの程度のものになるかは、協業していただく方との相談になりますが。イメージとしては、広場の中でいろんなサービスや事業が提供されるような場です。「里山スタジアム」内で遊んでいる子もいれば、ピクニックをしている家族もいれば、サービスを受けている年配の方もいるような、そんな複合的な場所を目指しています。
そして弊社が作る「里山スタジアム」と、隣接しているスポーツパーク、さらに「イオンモール今治新都市」といった、エリア全体で人が賑わったり循環する場所になればいいですね。

Q: 最後に今治市民のみなさんに向けて、メッセージをお願いします。

ぜひ市民のみなさんと一緒に賑わいの場所を作っていきたい

私たちなりにいろいろ頑張って考え、行動して継続しますけれども、私たちだけで何かやろうとしてもつまらないものになってしまいます。今治市の土地をお借りしてそこに賑わいの拠点を作るという構想ですので、ぜひ市民のみなさんと一緒に賑わいの場所を作っていきたいと考えています。
その賑わいの場所というのは、今治の方が楽しむのはもちろんのこと「一度はあそこに行ってみたい」という観光客のみなさんにも届くものになるといいなと思っています。今治にはいろんな素晴らしい観光名所もあり、コンテンツもある。そこのひとつに「里山スタジアム」というコンテンツが増えることで、全国や世界中の人が「あの瀬戸内に行ってみたい、今治に行ってみたい」と、背中を押すようなスタジアムにしたいと思っているんです。

それを考えると、今治だけじゃなくて上島町や西条や新居浜も四国中央も含めた東予地方やしまなみエリア全体でコンテンツ力を上げていくことも大切です。今治だけだったら東京の人は来ないかもしれないけれど、たとえば「『里山スタジアム』に行ったあとは、東洋のマチュピチュと言われる新居浜の別子銅山跡を見に行こうか?」となったら東京からでも人が来るかもしれない。東予やしまなみや愛媛や四国に旅行してみようかと思う人が増える、大きなきっかけのひとつになるようなスタジアムにしないといけないと思っています。
ですので、ぜひ一緒にこの賑わいの場所をみなさんと作っていければと思っています。

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取材・文/村上亜耶

前編はこちらからご覧ください

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