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仕掛けるプレーで沸かせるために、自分らしく一歩ずつ #FC今治でプレーする 桝田凌我

Jリーガーになるという夢をFC今治で実現した今シーズン。長身の桝田凌我選手が「自分の特長」という、スピードに乗ったドリブルは迫力満点です。ピッチを駆ける、そのときのために。桝田選手は謙虚に、ブレることなく鍛え続けています。

今シーズン、日本体育大学からFC今治に加入し、Jリーガーとしてここまでどのようにサッカーに取り組んできたのか。まずは、オファーを受け取ったときの気持ちから聞かせてください。

Jリーガーになるのは小さいころからの夢で、大学4年になってチームを探しているときに、FC今治に練習に参加しないかと声をかけていただきました。それで11月に練習に参加して、オファーをいただき、もちろんとてもうれしかったのですが、実感がわかなかったところもありますね。「本当に、プロになるのかな?」と。

それまでに、FC今治が自分のことを追いかけてくれているという感触はありましたか?

まったくなかったです。練習に参加する1週間ほど前に、スカウトの小原(章吾)さんが大学に来られてお話をいただきましたが、全然、分かりませんでした。リーグ戦でのプレーを、どこかで見ていただいていたのだと思います。

練習参加は3日間でした。今治に行く前に、すでにプロ入りが決まっているチームメイトに言われたのが、『大事なのは、“攻撃的な選手ですが守備もがんばれます”とかじゃなくて、お前が一番、得意なプレーを出すことだから。それができれば、大丈夫だから』ということでした。それを意識していたので、失敗を恐れずにプレーできました。

練習参加でアピールしたのは、どういうプレーですか?

スピードを生かして仕掛けて、相手を抜いてゴール前まで行くことと、そこからのシュート、アシストですね。それから、迫力を持ってプレーすることを意識しました。1人でも打開できるところが自分の強みなので、そこは練習参加で出すことができました。

自分には身長があるので(188㎝)、高さを生かしたヘディングも、求められていると思います。相手に寄せてボールを奪って、素早く攻撃に出て行くスピードだったり、空中戦での高さだったり、身体的な特徴を攻撃でも守備でも生かしていきたいです。

FC今治では現在、サイドハーフとしてのプレーに磨きを掛けています。

もともと自分はウインガータイプで、サイドで仕掛けることが持ち味です。サイドハーフでも、しっかり自分の特徴を出すことを意識しながら取り組んでいます。

毎日のトレーニングでは、大学とプロの違いを痛感します。大学時代に比べると、周りのプレースピードがまるで違う。ひとつひとつのプレーの正確さ、速さがすごいです。

例えばミカさん(三門雄大選手)は、本当にいろいろなことを考えながらサッカーをしているのが、一緒にプレーするとよく分かります。ミカさんとは宮崎キャンプのときに同部屋で、いろいろ話をしてもらいました。ミカさん自身、大学サッカーからJリーガーになったということで、その経験を踏まえてのアドバイスもありましたね。

大卒1年目の選手にとって何が大切か、ミカさんに質問したんです。言われたのは、『即戦力にならなければ、というプレッシャーがあると思うけれど、自分に必要な部分を鍛え続けて、準備することが何より大切だから。そうすれば、それがいつ来るかは分からないけれど、求められるタイミングでしっかり力を発揮できる』ということでした。

今、取り組んでいるのは、ボールを止める、蹴るという基本的なところです。それから、オフザボールのときにどこに走るかしっかり判断するといった、頭を使ってサッカーをすることですね。

考えてサッカーをする部分を鍛えるために、取り組んでいることはありますか?

僕はこれまで、サッカーの試合を見ることがあまりありませんでした。今は、時間があれば海外の試合など見るようにしています。

自分と同じポジションの選手が、どうプレーしているのか。サッカーですから、まったく同じシチュエーションになることは、まずないんですけど、似たような状況というのはたくさんあって。少しでもプレーの幅を広げられるように、イングランド代表のラヒーム・スターリング選手とか、右サイドでボールを受けて仕掛けるのが得意な選手のプレーを見ています。

特にボールを受ける前の動きですね。相手のマークをどれだけ外して、フリーでパスを受けられるか。それ次第で、いざボールを持ったときの余裕は大きく違います。

それから、トラップにも注目します。ボールをピタッと止められれば、相手の動きを止めることにもつながります。相手を止めてしまえば、自分のスピードがより生きる。映像を見ながら、いろいろイメージトレーニングしています。

今シーズン、公式戦では天皇杯予選の愛媛県サッカー選手権大会準決勝、レベニロッソNC戦でメンバー入りしました。この試合で出場はなく、公式戦デビューは大きな目標だと思います。

試合にどんどん絡んでいきたい気持ちは、もちろんあります。でも自分の実力が、まだそのレベルに達していないということも、毎日のトレーニングで肌感覚として理解しています。ただ試合に“出たい、出たい”と思うのではなく、そのために今の自分がやることは何か、考えて、実践して、先につなげていくことが大事です。まあ、少しは焦った方がいいのでしょうが、自分の性格もあるので。一歩ずつ、地道にやっていこうというのが僕の考えです。

日々、トレーニングに打ち込む中で、先輩やコーチングスタッフから、いろいろアドバイスを受けると思います。

「ここができていないよ」ということより、「こうすれば、もっと特徴が生きるよ」というアドバイスが多いですね。「凌我にはスピードがあるんだから、仕掛けたら相手は怖いし、こういう動き、プレーをすれば、もっと味方に信頼されて、どんどんパスが出てくるよ」といったように。

スピードを生かして仕掛けて少しでも前にボールを運べば、それだけ相手のラインを押し下げることができます。相手を押し込めば、その分、僕の後ろの選手はプレーしやすくなります。

でも、仕掛けるチャレンジをせずに簡単にボールを下げてしまうと、逆に相手はプレッシャーに出てくる。僕がどうこうというだけではなく、チームがうまく行くためのプレーに、もっと磨きを掛けていきたいです。

1-1という結果になった9月10日の愛媛FCとのトレーニングマッチ(35分×2本)では、ゴールも決めています。

得意な形で決めることができました。右サイドでボールを受けて、中にドリブルで切れ込んでシュート。これが自分の特長だというところを、プレーでしっかり示せたと思います。

サッカーを離れた時間は、どのように過ごしていますか?

温泉やサウナによく行っていますね。今治は、いい温泉がたくさんあるじゃないですか。それから最近、焚き火台を買ったので、キャンプとまでは行かないですが、焚き火をして炎に癒されています(笑)。

キャンプの動画を、大学のころから好きでよく見ているんです。でも学生時代は車を持っていなかったし、周りに焚き火ができるような場所も少なかったんですね。

今は自分の車があって、近くにキャンプ場もたくさんあります。これから少しずつ、キャンプ道具を揃えていこうと思っています。

クラブ公式HPのプロフィールには、特技が写真とありますね。

書くことが思い浮かばなくて、とりあえず答えたものです(笑)。でも出かけたとき、「あ、これいいな」と思う景色をスマホで撮るのが好きなんですよ。あまり深く考えず、撮りたいように撮っていたら、ちょっとずつ上達してきたのかな、という感じです。自己満足ですが。

オフの日に織田ヶ浜で撮った写真

試合でプレーするチャンスが来たときのために、しっかり準備したいという桝田選手の心を熱くかき立てるモチベーションは何ですか?

ヴァンフォーレ甲府の三浦颯太選手、Y.S.C.C.横浜の冨士田康人は大学時代のチームメートで、2人はすでにたくさん試合に出て、活躍しています。それは、やはり大きな刺激になりますね。

それから、見ていて面白い、楽しいプレーをしたいという思いがあります。FC今治の選手が相手を抜いたり、すごいプレーをすると、今治里山スタジアムがものすごく盛り上がりますよね。自分のプレーでみんなを喜ばせたい。それは、僕が子どものころからずっと持っている思いなんです。

プロサッカー選手ですから、ゴールを決めたりアシストをしたり、結果はとても大事です。同時に、見ている人たちを楽しませることも、すごく価値のあることで、自分の中で大切にしていることです。だからこそ、試合に出るために、もっともっとやんなきゃな、と思います。

取材・構成/大中祐二

以下の動画は、桝田選手がラジオ番組「FC今治のカナイがイカナイト」に出演した際の放送アーカイブです。ぜひご視聴ください。