「応援」をする理由
Twitterでバズっていたこの記事。
とある山雅サポーターの方が書いていたこのnote。2017年から応援し始め、J1も見て、その後に迎えた惨状、その中で生まれた感情を言語化していた。
この言葉を読んで、ふと思い浮かんだのが、
「自分がチームを応援する理由は一体何か」
この疑問だった。
私は松本育ち、「全ての現Jクラブと対戦した」素晴らしい実績を持つ松本山雅を応援している。
その他のスポーツにも贔屓チームはあるが、最も自分の人生を注いでいるのは松本山雅だと思う。
では自分が「応援しはじめたきっかけ」は何か?
覚えているのは、2009の全社決勝最終節。
アルウィンで開催された試合をメインスタンドから見ていた記憶がある。もしかしたらそれ以前にも見ているかもしれないし、なんならこの全社も試合自体は覚えていないけれど、
「第1試合の結果で山雅の昇格が決まった」
「その第1試合はなんかPK戦やってた」
という僅かな記憶と、wikiに載ってる試合結果が一致しているので恐らくこの日はアルウィンにいたのだろう。まだ幼い頃だ。
それから家族で緩やかにJFLで戦う松本山雅を応援するようになった。
「母親のガラケーでJFLの試合結果を調べた」という記憶もあるし、
「後半ATで先制したのにすぐ追いつかれて引き分け」とかいう「もう忘れてやれよ大賞ノミネート試合」をテレビで見ていた記憶もあるし、
「松田直樹の突然の死」も、
「その直後のSAGAWA SHIGA戦で涙のような大雨が降って試合が遅れ、アウェイ席では若い男性達が雨の中踊ってスタジアムを盛り上げていた(この試合自体は負けた)」記憶もある。
2011年、J2昇格を決めた後の最終節、東日本大震災の影響でチャリティーマッチとなったソニー仙台戦が0-3の惨状で「しっかりしろ!」と子供ながらに叫びたくなっていた覚えもある。(確かゴール裏の端にいて、試合後のグリーンシャワーもしていたはず)
ここまで書いているとまるで昔を懐かしむおじいちゃんみたいな感じがするが、正直この時は、今のように「ゴール裏で熱狂的に跳ねて応援している」ということはなかった。もちろんまだ小さかったからというのもあるが。
そういえば、いつからゴール裏の中心に行くようになったのかは覚えていない。
2012年からは少しずつアウェイにも行くようになった。富山とか、群馬とか。まだ本城だった頃の北九州にも行った。あとはどこ行ったっけ。
そんなJ2に昇格してからの記憶といえば、「2014年のアウェイ福岡」がもう最大である。
行かなくてもまあ良い行事を休み、遠路はるばる福岡へ。試合日は誕生日の前日の11月1日。
ゴール裏の端っこの方の最前列で見ていた。最後1点差になり心臓が口から飛び出そうな思いで見ていた。もしかしたら試合終了前から泣いていたかもしれない。感情が昂ぶりすぎて記憶が逆に残っていない。
それでも「現地で見て最も良かった試合は」と聞かれれば、この試合を即答する。
(ちなみにBS1とスカパー両方で映像に写り、無事知り合いに福岡に行っていたのがバレた。しかもどアップソロで抜かれていた。確かにカメラが目の前にいて撮影してるなぁとは思ったけど。)
そんなこんなでJ1に昇格した。ホーム開幕戦の広島戦は抽選番号でめちゃくちゃ前の方を引いていた覚えがある。
この時の自分は、J1というカテゴリーで戦うことをもはや夢と思っていた節がある。もしJ1で好成績を残せば次はアジア、そんな舞台に「松本山雅」がいる。
現実はそんな甘いわけがなく、16位で降格。そういえばこの年は仙台にリーグと天皇杯で2回行った。他のアウェイに行けば良いものを何故に同じ場所へ行ったのか、今思えばなかなかに狂っている話である。
2016年。この年で昇格できると信じていた。
結果的に残留の決定打になった誤審をされたアウェイ町田戦はPVで見ていた。POの岡山戦は雨の中、今とは逆側にあったアウェイスタンドから立ち上る湯気を見て、シーズン終了セレモニーまで雨に打たれ続けていた。
2017年。対戦カードの綾で自力PO出場もあったなか京都に負け、シーズン終了。
2018年、甲府で迎えたホーム開幕戦は体調が最悪の中バックスタンドで見て、帰りの車ではもう高熱でぶっ倒れていた。(インフルだった)
スタートで派手に転び、初勝利もホーム大宮戦で3-0から3-2まで追いつかれてのギリギリ。次節の確か讃岐戦では元通り。
この時は昇格出来るとは一切思っていなかったが、フットボールとはやはり分からないもので、最終節までもつれた優勝争いを制した。
J2優勝。J1昇格。優勝パレード。
応援のきっかけを辿るなら、こんな冗長な思い出話はもうこの辺で十分だろう。2019年は本当にしんどかった。土壇場で何故勝てないのか、そんな事をただひたすら悩んでいた。
考えてみれば、「いつから」応援をしはじめたと明確には言えないのかもしれない。
最初は地元でやっているからと両親に連れて行かれ(子供の自分が行きたいと言ったのかもしれないが)、徐々に結果を追うようになり、アルウィンに毎試合行くどころかアウェイまで行くようになり。週末の予定は山雅に合わせるようになり。今思えば、この優先具合が周りの人との信頼関係にも傷をつけていた気がする(ダメな人間だ)。
2020年、そんな状況が変わった。なにも特別なことではない。東京に生活の場を移した。地元を出たかったからというより、東京に憧れて上京した、普通の田舎民のムーブ。
そもそもサッカーすら見られない期間が来るとは思わなかったが、それでも、「ホームゲームには予定と被らない限り毎回行く」という今まで当たり前だったことが出来なくなった。
私がアルウィンに行くには、「帰省」というイベントを伴う必要がある。もちろん実際にアルウィンに行く回数も減った。
アルウィンの試合をDAZNで生観戦する。
いささか奇妙な事のように思われた。もちろんそれまでも無かったことはないが、ホームゲームにいけない時というのは大抵試合時間の時に拘束されているからであり、必然的にDAZNで生観戦することも叶わない時だったから。
何も予定が無い暇な日に、晴天のアルウィンをテレビを通じて見るというのは、それこそJFLとか、J2初年度とか、まだ応援にそこまでお熱ではなかったその辺まで遡らねばならないのかもしれない。
それでも、週末は出来る限り、山雅の試合日はその時間だけでも空けてDAZNを見れるようにした。ご時世的に外出がダメだったからというのもあったが。
そしてもう一つ、大きな変化があった。
「山雅の試合がつまらなくなった」のだ。
端的に理由を言えば、クソ試合を何度もして、改善される様子も見えないからなのだが、今までの反町サッカーよりはるかに落ちたクオリティに魅力、その没落に耐えられなかった。
松本山雅のサッカーはそうではないだろう。
少なくとも相手に「意地」で負けてはいけないだろう。
言うなれば「バルセロナ・スタイル」のような、それが今まで松本山雅が培ってきた「クラブのアイデンティティ」ではないのか。
さらなる飛躍のために、スタミナ勝負のサッカーから変化が必要だとしても、
一緒に捨ててはいけないものまでゴミ箱に投げ入れているのではないか。
そんな怒りを試合を見て感じるようになった。
それでもなお試合日にはスタメンを見て今日の勝ちを信じてしまうのだから、サポーターというのはまさしく愚かな生き物だ。
「なんでこんな弱いのにまだ応援するの?」
「うるせ〜〜〜〜〜!ばーかばーか!」
どう考えても狂っている。そんな狂人を億単位で生んでしまうサッカーというスポーツが、未だに世界中でこよなく愛されているあたり、人間という生き物に進化論は一部当てはまっていないことがよく分かる。まだ狂人が争う舞台を戦争からスポーツに移せただけ成長しているのか。1888年にイングランドでフットボールリーグが始まって以降、今日も狂人を排出し続けている。
話が反れた。
2020年夏にはホームで琉球に1-6で惨殺される試合を生観戦していた。大敗は、現地で見ているともはや笑いしか起きないのはサポーターあるあるだろう。着席観戦、ソーシャルディスタンスが確保されたゴール裏。Twitterで大敗をネタにする事以外やることがない。
結局この後布監督は更迭、柴田政権下で調子を取り戻し、なんとか降格組の面子を保った。
翌年、普通に降格した。弱かった。それだけ。
Jリーグの「地域密着」を具現化したお手本クラブとして、一地方小都市のクラブとして、様々な地方クラブに憧れられていた「松本山雅」の輝かしい姿はもうそこにはなかった。
2022年、絶対昇格を掲げて臨んだはずのシーズンにも変化は見られなかった。ただカテゴリーが下がったから降格組として勝てていただけだ。
アウェイゴール裏に大挙して訪れ、ホームサポーターの総数すら上回ったところで勝てなければただの観光客と同じだ。やったね収入が増えたよ。
目標的にもチーム規模的にも優勝昇格がマストだった昨年は結局、何も成し遂げられなかった。サッカーも全く面白くなかった。
正直な話、松本山雅の規模を考えればJ3は圧倒しなければならないのだ。それを期待していた。現実は非情だ。圧倒どころかJ3の恐ろしさを叩き込まれた。
もっと言えば、「泥臭く」というある種松本山雅のアイデンティティだったはずのサッカーが、当の山雅には見られずに、むしろ相手チームがそのサッカーをしていた。
その事に絶えられない自分がいた。どうして走れない。上手さすら突出していないのに走ることさえしなければ、勝てる試合すら勝てないのは当たり前だ。
そんな事すら一向に分からず同じ醜態を晒し続けるチーム。
どれだけ下手だろうが相手より何倍も走り、ボールを追いかけ、自らもネットに飛び込む勢いでゴールを奪う。「松本山雅」はこれで今まで成り上がってきたのではないか。
そのスタイルは、いまや相手のものになった。我々はそのスタイルに食われる、「ごく普通」のクラブに成り下がった。
次第に、「山雅の試合あるけどまあしょうがないか」と予定を入れる事が増えた。
徐々に山雅を見なくなった―――
そうはならなかった。
おかしい。見れば不甲斐ない試合を見せられ、怒りに震え、やる事を放り投げて布団に入ることがわかっているのに、試合日にはスーパーで安酒を2本買い、DAZNの放送開始を今か今かと待ちわびている。おかしい。
負ければアルコールが誘う睡魔に任せてふて寝し、勝てば祝杯と称して3缶目に突入する。
もはや中毒なのだ。やめると言って一向に止めない飲酒のようだと最近気づいた。どんなに酷い負け方をしても、次節にはまたお行儀よくテレビの前に座り、餌を与えられた子犬のように松本山雅の試合を見ている。
冒頭で引用したnoteの一節。
まさしく言い得て妙だと感じた。
そうだ、私は恋をしているのだ。10年以上。それも叶うことのほうが遥かに少ない片思い。
好きになった理由だって、最初は「近くにいたから」に他ならない。
これは幼馴染とのラブストーリーだ。
いや少し違うか。
もし簡単に禁酒禁煙が出来るような人間ならば、おそらく早くにこんな恋も捨てられて、新しい場所へと旅立てるのだろう。
しかし私はそんなできた人間ではない。禁酒には100回成功している。ストゼロ×アイスボックスの組み合わせを広めようと活動している。
こんな人間が、幼い頃から抱いている恋を簡単に捨てられるわけがないのだ。アルコールで脳がやられるように、恋で脳がやられている。賢い判断など期待するべきではない。
今年も、変わらずほとんど同じ感情を松本山雅の試合に抱いている。
アウェイ富山ではボコボコにされ、週末弾丸で帰省して見に行った信州ダービーも負け、期間が空いて迎えたはずの鹿児島戦では、もはや空き期間はパワプロの練習でもしていたのではと考えたほうが良いレベルの試合をしていた。
その後も勝ったり負けたり、J3を圧倒する松本山雅の姿は見られそうにない。
それでも私は人生の貴重な2時間を消費して山雅の試合を見ているし、なんなら愛媛まで行った。
狂っている。
ああそうだ、きっと山雅サポーターの多くは、こんな事を毎週毎週思わされながら、それでも7000人がアルウィンに集まり、アウェイにもJ2クラスの人数で押し掛けるのだ。
それは何故か。もう辞められないからだ。
中毒になっている。「禁山雅」が出来ない。
そんな山雅中毒を患った「愛すべき狂人達」は今日も元気にアルウィンを埋める。J3の観客数平均値を優に上回る数値を叩き出す。
考えてみれば山雅の試合を見る時、「義務感」は不思議とそこにはない。見たいから見ている。
実は、更に山雅というアルコールが美味になるスパイスがある。
「故郷」という、大きなアイデンティティ。
松本は、観光都市でもあり、地方都市の中ではかなり上位の都市に入る規模感にあると思う。何か生活に特段困るということもなく、暮らしやすい街だ。
それでも娯楽はほぼ無い。夜になれば駅前大通も街灯が主な灯りになる。
そんな街に、「松本」の名を背負って戦うチームがある。全国、それも東京大阪横浜…と、普段なら戦うことすら叶わない大都市と正面切って相対するチームがある。我々は松本の誇りを胸に、故郷の名を叫ぶ。
何と楽しいのだろう!
選手もチームも自分も、10年あれば変わる。元の形は跡形も無く消え去っていることもある。
それでも、「故郷」は消えない。増えることはあるのかもしれないが、それでも「生まれ育った」という歴史は変わることはない。
その愛する故郷の名を背負って戦うチームだからこそ、私は熱狂的に叫び続けるのかもしれない。
松本という小さな街が、大都市に勝つ。そこに溢れんばかりの興奮を感じるのだろうし、逆に最低な試合をしたら怒るのも、その時の勝ち負け以上に故郷の誇りを汚されたと暗に思うからなのかもしれない。
松本山雅とは、松本の誇りであり、夢なのだ。
そう信じて、思ってやまないからこそ、
思うのをやめられないからこそ、
また貴重な週末をこのクラブに捧げるのだ。
ああ、馬鹿げている。大馬鹿者だ。
されど、不思議と心が踊っている。
試合が早く来ないかと思っている。
こんなことを、10年はもう続けている。
勢いに任せて書いたら6000文字だった。まあなんと読みにくいこと。しかも何を言いたいのか分からない。私にライターの素質はないらしい。
要するに、松本山雅という存在は私にとってもはや体の一部にまでなってしまっているのだ。
しかもこれから先の人生を、このまま生きていかねばならないらしい。
こうして生きていく間に、もし松本が日本一になる日が来たのなら。恐らくこの苦難の日々は最高の酒の肴になるのだろう。
歴史とは、人生を喰って生まれる物語だ。
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