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2020年6月~7月 映画感想 サンクス・シアターなど


最近みた映画の備忘録。ネタバレ注意!

タッチ・ミー・ノット ローラと秘密のカウンセリング

仮設の映画館」にてストリーミング鑑賞。1,800円也。DL映画館はシアターイメージフォーラムを選択、購入から24時間鑑賞可能というシステム。このアホみたいな副題はなんなんだ(タリ―と私の秘密の時間か?)と思っていた。これくらい情報をいれないと観客の気をひけないのだろう…と想像してやや悲しくなったが、それはまた別の話。

あらすじ:ローラは、寝たきりの父親の介護で通院する日々を送っているが、彼女自身も人に触れられることに拒否反応をおこす精神的な障がいを抱えていた。ある日、ローラは病院で患者同士がカウンセリングする不思議な療養を目撃する。病により全身の毛がないトーマス、自由に四肢を動かせない車椅子のクリスチャンなど様々な症状を抱える人たちが、互いの身体に触れ合うことで自分を見つめていく。公式サイトより

2018年製作、第68回ベルリン国際映画祭で金熊賞を獲得した作品。R18指定。監督はルーマニア出身のアディナ・ピンティリエ(可愛い)

本作に興味をもったのは【肉体的な接触にアレルギーを持つ女性】という一文から。私は自分の身体は好きだしそれなりに適用しているが、ザ・恋人の距離で触られるのは正直得意ではない。行きはよいよい帰りは怖い、というタイプで、付き合う相手からすれば非常に面倒くさい。感覚が主人公のローラに近いので途中まで渋い顔で映画を眺めていた。

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LGBTQや精神疾患、身体障がい者の性を映す ー Instagramより

主人公ローラの受けるいくつかのセラピーのゆくえはまったく読めないし、彼女が共感するトーマスにはそこまで相手にされないし、トーマスは車いすのクリスチャン相手のほうがよほど心を開いているのでは?と様々な疑問符を掲げながら、最後に感じたのは「自分の身体、愛してぇな~」ということだった。たぶんそれができていないから、大事なひとにふれられるのが苦手なままきている(逆にザ・恋人以外にふれられるのは何ともない)ローラが身体的接触を好まず、男性にマスターベーションをみせてもらい性的欲求(探求心?)をカバーする場面はなぜか腑に落ちた。普遍的なセックスになじめない、それを認めるのは苦痛ではないけれど、足の裏にこびりついた米粒のようでふとした瞬間に思い起こされる。ローラが叫びまくったセラピーのように、自分の身体を解放できればどれほど楽だろうか。いまじゃない、そう遠くない未来に願っている。

牧村朝子さんのnoteがとてもよかったのでリンクを貼っておく


サンクス・シアター

ミニシアター・エイド基金のクラウドファンディングに協力したので、リターンが届いた。

【未来チケットコース】 30,000円
・発起人と参加団体代表者からの感謝メッセージ
・希望する映画館の未来チケット6枚 (2022年内有効)
・サンクス・シアターの映画作品リストから選んで、24本分をストリーミング再生(1年間)
・参加映画館が、予告上映時に上映する感謝映像に「30,000円サポーター」としてクレジット

24本のコンテンツが鑑賞可能とは結構太っ腹だと思う。インディペンデンス系邦画を見る機会はなかなかないため、これを機に申し込んでみた。200本近い作品から選べるので、まだみぬ映画との一期一会感が楽しい。一覧リストはこちら

待つには遠すぎた初恋

サンクス・シアター1本目。四本研祥監督、2018年製作。15分ほどの短編で高校生の甘酸っぱい恋心を描いた、普遍的なコミュニケーションにまつわる物語。親友と留学生の間を英語でとりもつ主人公カレン、私じゃないですか~やだ~とわかりみがすぎる作品だった。


TUESDAY GIRL

サンクス・シアター2本目。「愛がなんだ」「his」でおなじみ今泉力哉監督、2011年製作。45分。今泉監督は本プロジェクトに10本ほど寄与してるようで、今回はその中から中編を鑑賞。結婚を決めた男女、それにつられるもう一組のカップル。好きとは、幸せとは?今泉監督作品における「愛」はいつでも壊れるぞ!メッセージをガンガン感じた笑。結婚を決める時、決めた時ってこうなるのか、と思わせられるのがえぐい。なんとなく一緒にいる、居心地悪くない、の延長線上で形にするのが私にはひっじょーにあわず、なので申し訳ないが途中の展開がスカッとした。みたあとは「あー恋愛っていや!やってられない!ひとりにしてくれ!」という思いが駆け巡る。ちなみにロン毛の彼女さんがベリーショート飴色に変身したとき「ぎゃー!2丁目でもてるー!」と心の中で叫んでしまい、深く反省(でもあれはモテるよ…)愚かさとギアのかけ方は男女同じなのに、全体的に女子がなんとなーく、賢く見えるの欲目でずるいな。


おやすみ、また向こう岸で

サンクス・シアター3本目。山中瑶子監督作品。2019年製作、30分くらいの短編。監督は1997年生まれですって。お若い!

「セックスなしでも友達じゃなく恋人でいれたらいいのに」
主人公ナツキは、ある違和感を抱えながら恋人のヒロキと同棲中。そんなとき、高校の同級生・カナコと再会し、ヒロキに明かせないままでいた本当の気持ちを吐露する。

撮り方、セリフ回し、インテリア、小道具、登場人物3人、声のトーン、全部が好き。セクシャリティ迷子を肯定したい話なのか…?と思いきや後半の展開でゾワッッッッッとした。怖い。

ナツキ:三浦透子 どこか小池栄子みがある。検索して、「天気の子」のグランドエスケープ 歌ってるひとじゃん!!!!と気づいて叫びそうになった

カナコ:古川琴音 ベランダでナツキと話してるときの白ノースリ+黒ワンピ、神じゃない…?声色がちょうかわいい。

ヒロキ:中尾暢樹 辻井伸行と共演してた大和証券のCMが好きです



~ここからは映画館鑑賞~

アングスト/不安

「犬は無事です」という公式の動画をみて終始笑顔で鑑賞。

ジェラルド・カーグル監督、1983年製作。上映館はシネマート。
ええ、問題作です。

実在の殺人鬼、ヴェルナー・クニーセクが起こした一家惨殺事件を映画化した衝撃作。1980年にオーストリアで実際にあった事件を基に、刑務所出所後に凶行に及んだ主人公の行動に肉薄する。公開当時、あまりにも衝撃的な内容のため本国では1週間で上映打ち切りになった。

シネマート、相変わらずマニアック映画の発掘力がすごい。昨年同じく旧作掘り出し公開された「ザ・バニシング 消失」をみていると、バニシングおじさんの緻密さとアングスト兄さんの行き当たりばったりっぷりが対比してて面白さ2倍!流血も2倍!ワンちゃんは可愛い。

鑑賞後、フランクフルトを食べながら(黒手袋はしてません)この手の快楽殺人犯に男性が多いのは何故か、という話をした。殺すことでオーガズムに紐づくので射精ができる身体向き説(EDの場合も適用可)焦燥にかられて殺人を犯すのは圧倒的に男性脳?なのか、オーガズムが難しい女性はこのバグ(殺人が気持ちいい)が出にくいのか、ネクロフィリア=屍姦をする男性は多いが、女性の殺人犯は阿部定事件以外にあるのか、などなど話題が物騒すぎてオーダー取りに来るギャルソンの女性が若干引いていた。申し訳ない。ちなみに鬼才ギャスパー・ノエは本作を50回以上見ているらしい。大丈夫か。


バニシングおじさんの感想はこちら


アングスト、疲れるのでやっぱり殺人なんてするもんじゃないなと思わせてくれるあたり教育的な映画である、という至極まっとうな感想をよんでしまい、感動した(適当)


サンダーロード

B.スプリングスティーン案件ということで鑑賞。2018年製作、92分。
監督・脚本・編集・音楽・主演と一人5役やってるぶっとんだジム・カミングス。若いころのトム・クローズみがある。2枚目も3枚目もやれそう。

①12分の短編ver  2016年サンダンス映画祭グランプリ
②92分の長編ver 今回の映画 2018年SXSWグランプリ

①はこちらから見れます。おい、曲かかっとるやんけ!笑

愛する母の葬儀で悲しみに暮れるテキサス州の警察官ジムは、娘のピンクのラジカセで、母が敬愛したブルース・スプリングスティーンの「涙のサンダー・ロード」を流そうとするが…。妻とは別居中、仕事も空回り、トラブルばかりの日常の中で、ジムは親権争いの渦中にいる幼い娘クリスタルとの距離感に苦しみながらも、親子の関係を築いていく。公式より

B.スプリングスティーンは「バッドランド」が一番好きだけど「涙のサンダーロード」も名曲。ボスのいう”tonight”は魔法だし、"promised land"は必ずくる夜明け。すぐ逃避行するけど、希望に満ちた歌詞が多い。

母を見送る葬式の踊りも、娘クリスタルと手に手をとって街を出るか?のくだりで「畜生、あの歌詞みたいだ」とつぶやくところも、サンダーロードすぎて涙が出た。最後に親子でバレエみるとこもいいですよね。亡き母親がスプリングスティーンに受けた衝撃を、クリスタルは白鳥の湖で受け取る。ジムはその目撃者になれたわけで。ジム・カミングスおそるべし。

Come take my hand
We are riding out tonight
To case the promised land
Oh thunder road



同じくスプリングスティーン案件の「カセットテープ・ダイアリー」も見に行かなきゃ。

以上です!






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