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ハッチング ー孵化ー

モイモイ!フィンランド発のスリラーみてきました。原題:Pahanhautoja

丸の内TOEIで鑑賞。

予告はこちら、海外版よりはネタバレ控え気味でありがたい。

*動物好きなひとは閲覧注意。鳥も犬も死ぬのでつらかった。犬においては頭からパックリやられるし死骸は2回もでてくる、しかもアップ…ウッウッ

――――以下ネタバレ感想----

フィンランドの幸せを絵に描いたような家族と、思春期の女の子によるその崩壊について。

開始5分でもう不穏。家に飛び込んできた鳥を母親がくびり殺したと思ったら娘が死にぞこないを石で念入りに撲殺すると言うシーン。え、いきなりそんな感じ?ちょまてよ…

フィンランド語、とくに主人公のおさない喋り方や発音がとんでもなく可愛いのでギャップがすごい、音声だけ聞いてたら「ママ、このパンケーキすごく美味しい」「あらありがとう、裏庭でとれた木苺をジャムにしてみたの」とか言ってそうなのに。

真夜中の森でぶっ殺した鳥の死骸をみつめる少女、小さい卵を見つけて持ち帰るんですけどこれが日に日にでかくなって最終的に鳥の赤ちゃんが生まれます=タイトルの孵化ですね。

この鳥ちゃんの造形がまたグロくて、FX designer の Gustav Hoegenはスターウォーズやジュラシックワールドで宇宙人や恐竜制作した経歴があるので、とても出来が良くみてるうちにだんだん愛おしくなってくるという罠。鳥ちゃんは少女の内に溜め込んだ不満ストレスをなくすために勝手に動き、体操チームのライバルやうるさい犬(…)、をことごとく消していきます、弟も危なかったな〜

もうひとり本作の主人公ともいえる少女の母親がまたくせもの。娘に無理やり体操を習わせ大会で優勝させようと必死、自宅での華やかな生活を動画配信しており、しかも愛人もいて浮気を娘にみられても「オンナ同士の秘密よ〜」とかほざく、いわゆる毒親まっしぐら。ブラックスワン思い出した方いるんじゃないでしょうか。

「美しく賢い娘を誇りに思います」「こんな幸せをくれた家族に感謝」と動画ではいうくせに娘に向かって言わないんですよ、いつだって、体裁が一番大事。自宅のけったいな装飾、派手なシャンデリア、大量の飾りグラス、金色の木、ケバケバしい壁紙、ミロのヴィーナスもきっと母親の趣味でしょう。ちぐはぐで上っ面だけ飾りたてた感が滲み出ている。

優しい夫は奔放な妻に振り回されてなにもいえないし、趣味のギターを弄ってる部屋にあったのはシングルベッド。逆に母親は広い天蓋付きベットに寝てるのも面白い。メタファーもありますが、あの家、男と女の役割がキッパリ分かれてるんですよね。

後半、暴走した鳥ちゃんに立ち向かうのは母親と娘で、男子の活躍は意図的に削られています。へレディタリーも父親は心優しい常識人モブでしたね、似てる〜!

母親の愛人はサイモン・ペッグをマッチョにした感じの素敵な兄さん(Reino Nordin)ただの不埒な大工野郎かと思いきや乳飲み子かかえた苦労人ぽかったねごめん(ただし女の趣味は悪いぞ)

他に気になった点としては生ごみ捨て場が蓋開けたらウジハエてんこ盛りだったところ。北欧ってコンポストがメジャーなんだっけ?フィンランド在住者の記事を調べたら生ごみ回収はなんと4週間に一度、240Lのゴミ箱用意して、回収日に自宅から100m先の道路まで持って行くとかあるらしく、そりゃ満杯になるまで溜めるわなと軽く絶望感…

最後のオチ、母親の呪縛からやっと娘は逃げられたのか、いつか母親もさらなる地獄を見させられるのか、どっちかな〜と想像させるのが上手いですね。幸福度ぶっちぎりで高いフィンランドで家族の闇を描く作品、最高に皮肉で同時にこれ他人事じゃないかもね、と思える怖さ。

もし母親が疾患とか障害がみこめる子どもを意図的に流産してて、それが卵から生まれた鳥ちゃんだったら…という個人的な妄想もありました。母親は完璧なものにしか興味がない(大怪我した友人の見舞いに娘ひとりで行かせるかフツー?)と裏打ちされているあたり、抹殺されたもうひとりの娘の復讐劇、なんてのもありかなーなんて。

北欧ホラーにこれからも期待です!

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