サステナビリティを意識した生活
日本では、サステナビリティに対する意識の高さと、社会的・環境的インパクトを生む行動をする余地がある事との間に相関関係があります。これを表す日本の概念として、「余裕」という言葉が当てはまります。
サステナビリティに対する意識で指標を上回る層は多様ですが概して「余裕」が感じられます。
世代としては、ベビーブーム世代(1953-1964年生まれ)
大企業勤務者
高所得者層
自身を女性であると認識している人
多くの働いていない人
また、サステナビリティへの意識とアクティブなライフスタイルの間にも関連があります。サステナビリティの意識が高い層(44%)とミディアム層(35%)には、運動やスポーツ、健康が好きな人が多数見られます。他の分野でも同様で、サステナビリティの意識が高い人は、社会活動やパーソナルケア、音楽、映画、本などにも力を注いでいいるのです。
こうした余裕を持つ能力は、一種の特権であるとも言えます。意識が高い層は、多くの場合、サステナビリティを意識し、情報を得るための時間や資源を持つ余裕がある人々となっています。
意識は高いが、アクティビストではない
欧米のサステナビリティ意識が高い消費者像はアクティビスト的ですが、日本のサステナビリティ意識が高い消費者は、欧米とは違い、よく考えてから行動に移し、積極的に情報を集め、気になるブランドとはカテゴリーを問わず、深い関係を持つ様な消費者と定義することができます。
こうした消費者は、強い影響力を持つ大切な顧客として、企業にイノベーションを起こすことを求め、サステナブルな価値を提案するように働きかけています。
日本では、社会問題や環境問題に対する意識から企業のボイコットを行ったことがある人は多くありません(17%)。ミディアム層(20%)と意識が高い層(34%)では増加しますが、これらのグループが取る他の行動と比べると、やはり割合は少ないと言えます。
この事実は、社会・環境問題の背景にある構造を理解し、行動を起こし、サステナブルな未来に向けて企業を消費者として支えているという、意識の高い日本の消費者のイメージそのものであると言えます。
意識の低い層(15%)とライト層(14%)もブランドをボイコットしていますが、意識レベルの割には高い数値となっています。この結果は、日本においてサステナブルな社会通念に従わない企業は、スキャンダルやメディアによる批判、信用喪失のリスクを抱えていることを示しています。
2022年に生じた、吉野家の女性差別的な役員の対応に対する反発はその一例です。2020年東京五輪組織委員会会長も女性差別的発言で辞任しており、日本の男女平等問題の根深さを浮き彫りにしています。
こうしたスキャンダルを受けて、その企業の製品をボイコットする消費者もいますが、大多数の消費者はまだ根本的なサステナビリティの問題と結びつけては考えておらず、男女間の不公平な賃金格差を理由に信頼する企業を変更するといった行動には及んでいません。
日本には戦後の政治的活動の歴史があり、鋭い批判を繰り広げる集団は今日でも少なからず存在します。しかし、これは意識の高い消費者行動を形成するマインドセットとは無関係なものです。
日本におけるサステナビリティに対する意識の高さとは、ブランドをボイコットしたり拒絶したりするのではなく、消費者が企業のサステナブルな提案に賛同し、個人の価値観やアイデンティティに合致すると考える品質を持つ製品を、十分な情報に基づいて選択することにつながっているようです。
コミュニケーションチャンネル
消費者のサステナブルな意識に変化をもたらすチャンネルやイベントは、テレビメディアからプラスチック使用に関する政策変更の情報に至るまで、様々なレベルで多岐に渡り存在します。
意識が高い層(54%)とミディアム層(45%)は、テレビとラジオを最も高く評価しています。これは、彼らが各種メディアに触れており、こうした伝統的なメディアが、サステナビリティに関する信頼性が高く確立された情報源であるという事実を反映しています。意識が高い層は環境保護団体(33%)を企業(26%)や家族・友人(26%)より高く評価し、ミディアム層とその他のグループは、家族・友人を 2 位、企業を 3 位としています。
企業は、サステナビリティに関する情報源として比較的高い信頼を得ており、企業の投資が肯定的に受け止められていることが伺えます。この結果は、日本の消費者がブランドコミュニケーションに関与する速度と頻度が大きいこと、そして企業が全体として高い信頼を得ている事実と合致します。
サステナビリティは他の新しい価値提案と同様に受け取られるため、企業は消費者をしっかり教育し、魅力的なサステナビリティに関する価値を示す必要があります。
意識の高い消費者に働きかける
サステナビリティに関する情報源としては、SNSはインフルエンサーや有名人に対する不信感が見られるため、メディアとしては期待されていません。ファッションやライフスタイル関連業界など、インフルエンサーマーケティングに多くを依存しているブランドにとっては課題となっています。インフルエンサーやタレントは、意識が高い層(13%)からその他すべての層(7%)に至るまで、すべての集団からサステナビリティの情報源として不十分であると考えられています。
ファッションやライフスタイルブランドの標準的な手法は、サステナブルな提案には通用しそうにありません。
欧米では、サステナビリティの成果について語ることができる知識と影響力を持つインフルエンサーが存在し、あるブランドを支持したり、成果の低いブランドを批判したりしています。
日本では、サステナブルなコンテンツをシェアするインフルエンサーの存在は確認されるものの、彼らは通常、インパクトや取組みが弱く、サステナビリティに関する大きなムーブメントに発展させるパワーはありません。また、日本では、体制に異議を唱えることを嫌う社会的風潮があり、公の場で支持を集めることによってかえって評判を落としてしまうリスクがあるため、自粛する傾向があります。
サステイナビリティに関して最も発言頻度が高いのは、専門家、学者、政府や非営利団体のリーダーなど、専門的なレベルでネットワークを構築しうる専門家ですが、彼らは大多数の人々に対して文化的な影響力を持つわけではありません。
広告の受入れ
意識が高い集団ほど、関心を有する製品の広告に抵抗感を示しません。これは、意識が高い層(82%)、ミディアム層(79%)、その他の層(51%)においても一貫して見られる傾向です。
この結果は意外に思われるかもしれませんが、彼らはこれはすべての広告に当てはまるわけではなく、サステナビリティや健康などを含み、彼らは関心を持っている製品とは積極的に関わりを持つことを示しています。
広告を見ないことを望む人々の割合は、意識が高い層(8%)とミディアム層(7%)では低い数字となっていますが、他のすべての層(23%)では、より高い数値となっています。
つまり、意識の高い消費者は、サステナブルな製品に関するストーリーテリングに対し積極的に耳を傾け、あらゆるコンテンツに高い関心を示す可能性が高いといえます。
これはブランドにとって重要なインサイトであり、意識が高い消費者はアクティブで情報に詳しく、業界を問わず、気に入ったブランドと深い関係を築くことに前向きであるという事実を反映したものです。