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レポート:宗教者のための当事者ミーティング - 過疎寺院編 -

未来の住職塾の遠藤卓也です。
5/20(水)、未来の住職塾NEXT R-2オンライン化連動企画として「宗教者のための当事者ミーティング(過疎寺院編)」をオンラインで開催しました。

コロナ以降の過疎寺院をとりまく現況

今回のテーマは「過疎寺院」ということで、冒頭に未来の住職塾塾長 松本紹圭さんから寺院の過疎問題をとりまく現在の状況について話しがありました。

過疎という言葉にはこれまで「問題」という言葉がつきまとっていましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により転換期を迎えているようにみえます。以前は都市部に人が集中し社会的にも経済的にも濃密なコミュニケーションが良しとされてきました。地域に人の少ないことは「問題」だったわけです。しかし、現在はどうでしょうか?あるアンケートで東京に住む人の約半数が地方に移住したがっているという結果もあったように、過疎は「問題」ではなく「素晴らしいこと」であるという価値観の転換が起きています。
ここに過疎の村のコミュニティの中心として続いてきたお寺のポテンシャルが見えてきます。ゆとりのある土地に長年根ざしてきたお寺が果たせる役割は多様にあるはずですし、そこに自覚をもってやっていくことが、これからの宗教者の社会的責任でもあると言えるかもしれません。
だからといってこれまで「問題」とされてきた、経済面の課題などが一気に解決するというわけでは勿論ありません。引き続き色々な論点をはらんでいると思います。
しかし今回のミーティングは過疎寺院の当事者たちが集っています。「この転換点において各自が今どんな景色を見ているのか?可能性の芽として感じていることなどを素直にどんどんシェアすることで、複数の寺院で協力しあえるようなアイデアが生まれたり、各自のネクストステップに繋げられれば」という開催主旨が、松本さんより語られました。

当事者発表 - 共通する悩みは「伽藍の維持」

まず最初に3名の方から、寺院のおかれた環境や課題等についてお話しいただきました。

・広島にほど近い島(江田島市)のお寺(市の人口が22,000人程度)
・福島県耶麻郡、猪苗代町のお寺(町の人口が14,000人程度)
・山口県萩市沖合45kmの離島にあるお寺(島の人口は実質500人程度)

どのお寺も規模感に差はありながらも、共通する悩みとしては「伽藍の維持」があります。そこには収入の確保は勿論のこと、次世代にどう繋ぐことができるか?という問題もあります。
新型コロナウイルス感染症の影響下では、都市部の人たちが別荘地等に「疎開」していたという状況があったり、これを機会に「田舎が見直されているのではないか?」という実感もあるとのこと。確かにコロナ以前からも都市生活者の中に「二拠点生活」をする人が増えています。
例えば、悩める都市生活者の居場所としてのお寺が求められるかもしれません。「田舎と仏教の組み合わせは良い」という意見もあり、生きるための修行道場としての魅力をどう見せていくか?という課題意識を持っている方もありました。

今と昔では人口が違うので、それほど大きな伽藍が必要でなくなってきているということも考えられます。建物のみならず、あらゆる面でのサイズ感の最適化は検討していきたいところです。

また、信仰心が篤い地域においては未だ「お寺はみんなのもの」という考えが定着しており、みんなでなんとか出し合って維持しているという話もありました。今はそれで良いのですが、いつかもっと人が少なくなってしまった時のことも想定して動いていかねばなりません。

以上。当事者から課題が共有され、続くトークセッションでは未来の住職塾講師 木村共宏さんに口火をきっていただきました。

トークセッション - お寺は誰のもの?

木村さんは、地域おこし協力隊として福井県の鯖江市に関わったご縁から、現在は東京と鯖江の二拠点生活を実践しています。「地域活性」というテーマにもかなり取り組んでこられた木村さんは、この転換期をどう捉えているのでしょうか?2つの観点からお話しがありました。

ひとつは、お寺はみんなのものか、住職家族のものか?という観点。当事者発表で共有があったように、「みなさんのお寺」ならみんなで支え合えますが、住職一家の寺だとすれば住職が経済面も含めなんとか維持しないといけません。もし住職一家の寺となっているのであれば、「みなさんのお寺」に戻していくことが本質的だといえます。

「みなさんのお寺」に戻すと言っても、すぐに変えられるものではありません。「みなさん」側の意識が変わらるためには、何をどうやっていくのか?を考えていく必要があります。

ふたつめは、どんなに手を尽くしても維持できないものは維持できないという現実も認識し、覚悟しておくということ。お寺は昔からお金を持っている人が寄進することで成り立ってきた歴史があると思います。イオンやソニーなどのお金がある企業が銀行をつくるように、お金のある地元の名士が資金面でお寺を支えてきました。そういった謂わばパトロン、スポンサーが少なくなっていくようであれば、状況は簡単ではありません。

だから悲観するということではなく、冷静に現実をみて受け入れ、その上で前向きにものを考えていきましょうというお話でした。

木村さんの意見を受けて松本さんから、本来、布施は喜びのはず。布施であれ寄進であれ、もし渋々行なっている状況があるとしたら、何かがおかしいと考えるべきという指摘。布施が苦をうむようになってはいけないので、よろこびであるように維持することを考えていかねばなりません。

今は経済全体が沈んでいるので、お寺だけではなく社会システムが全体的にそのままの維持ができない状況がやってきています。その中でお寺はどの機能を残して、継続していくのか?ダウンサイジングしていく形も考えていく必要が出てくるだろうとのこと。

また、家庭ごとの経済格差が大きくなっている中で、みんなを平等に扱わなければいけないお寺において、みんなを平等にあつかうことで生まれる不平等があるいう話も。一万円の価値が人によって全然違ってくるわけです。お寺の中から見ていると見えにくい課題かもしれませんが、そこもひとつの論点になっていくでしょう。

などなど、トークセッションでも多様な角度から意見がかわされました。

当事者だらけのブレイクアウトセッション

最後は、参加者全員をランダムなメンバーの部屋に分けての「ブレイクアウトセッション」を行ないました。当事者同士だからこそ、安心して話せることや、色々な気付きがあったかと思います。

「過疎寺院をどうするか?」という話はこれまで各所でおこなわれてきたかと思います。正直なところ煮詰まっている感じがあった中、コロナの影響もあってまた違った角度の光が見えてきたように感じます。その光に沿って歩けば全てがうまくいくというわけではありませんが、過疎寺院のこれからについて話をするステージが少し変わったと感じられるミーティングとなりました。

この「当事者ミーティング」シリーズは今後も続けていきたいと考えています。テーマも多方面に広げられそうですので、ご興味のある回にはご参加いただければ幸いです。
ご参加くださった皆さま、発表してくださったお三方、ありがとうございました!

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