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【同じ絵が描けていたか?】|チェルシー×マンチェスター・シティ|23/24プレミアリーグ第12節|マッチレビュー

両チーム合わせて4点ずつのゴールを奪ったあったチェルシー×マンチェスター・シティのビッグマッチ。試合開始からスピーディーな展開で、その強度、テンションは試合終了まで落ちることはなかった。

それでは簡単ではありますがこの試合の振り返りをしていきたいと思います!

↑前節の振り返り。

▪️共通認識のズレ

試合開始からハイテンポ、ハイテンションの攻防が繰り広げられていった。両チームともにボール非保持の局面ではアグレッシブにボールへプレッシング。その為ボール保持局面ではゆっくりボールを動かす時間は少なくなり、自然と攻撃のテンポも速くなっていった。

どちらかのゴール前での攻防が多くなり、ゴールの匂いがプンプン漂うような、非常に見応えがあるゲーム展開が開始直後から観られる展開となった。

それではまずはシティのボール保持局面を中心に解説しながら、チェルシーのボール非保持局面の解説も合わせてしていこうと思う。

シティはボールを保持すると左CBに入ったアカンジが中盤に入る偽CBを発動。アンカーのロドリと共に中盤の底を担い、後方を3バックに。ビルドアップの屋台骨を[3-2]に形成し、チェルシーのファーストプレスを剥がし、集め、前線で待つ選手たちにボールを供給する準備を整えた。

これに対してチェルシーは 中盤のギャラガーを一列前に押し出し[4-4-2]の陣形でブロックを形成。中央をしっかり封鎖しシティのボールを外へ外へ循環させる狙いを見せた。

シティの[3-2-2-3]陣形のビルドアップとチェルシーの[4-4-2]ブロックの配置を噛み合わせると、シティが中盤に数的優位を作り出してボールを前進できるような構造だった。

そんな構造通りの優位性を活かしてシティがチェルシーの2トップを最終ラインに引きつけ、2CHのロドリとアカンジをフリーに。そこから幅をとるWGへパスを供給して斜めにチェルシーのゴールへ迫るシーンも何度か作り出した。

しかしそれと同じくらいシティはチェルシーのプレスの網にかかりショートカウンターを受けるシーンもあった。

チェルシーは2トップのギャラガーとジャクソンがシティのCHロドリとアカンジのパスコースを背中で決していった。

シティの可変した3バックの右のウォーカーにはスターリングが。左のグバルディオラにはパーマーが直線的にプレッシング。これにより構造的に生まれるシティの中盤の数的優位を消し去ったチェルシー。ギャラガーの機動力と強度も生かして、フリーとなるCBルベン・ディアスへプレスに出てボールの出所を封鎖することも成功。

このチェルシーの中央を封鎖した[4-4-2]ブロック。2トップが中盤を背中で消しながらプレスに出る[4-4-2]に対してのシティの一手は?

①つ目がルベン・ディアスがギャラガーを引きつけて、中盤のロドリへボールを供給することだった。もしかしたらチェルシーが一番やられたくなかった形はこれだっかかもしれない。

ルベンがボールを持つと、ギャラガーの背中からサッとロドリが顔を出して縦パスを受ける。この瞬間チェルシーの[4-4-2]ブロックは一気に崩れる。中盤のエンソ・フェルナンデスはマークにつくアルバレスが気になって判断に迷う。前を向いたロドリは右の幅をとるフォーデンへパスを展開。この試合キレキレだったフォーデンはそこから独断で突破することも。

また幅をとるフォーデンにパスが出た瞬間にIHのアルバレスがチェンネル(SBとCBの間のスペース)、ポケットへランニング。フォーデンからアルべレスのポケット侵入はこの試合何度も見られた形だった。4バックを崩す上でポケット侵入は効果絶大なので、その形を狙うのは必然だったと言えるだろう。

②つ目が可変した3バックのサイドからのWGへのパス供給。

シティの3バックのサイドにはチェルシーのサイドアタッカーがプレスに出る構造だった。そこで中央からサイドのグバルディオルとウォーカーが利き足でボールを置くと、大外のWGへのパスコースが開門(ボールを受ける立ち位置。外側すぎずに。ハーフレーンあたり。ボールの置き所も大切。プレスがきても届かない場所におく。そんなことが大切になってくるがシティのバックスの選手にはそんな能力が当たり前のように整っているの)。

右サイドではこの形からチェルシーのプレスを剥がしてゴールに迫っていくシーンが見られた。

反対に左サイドからはあまりこの形が見られなかった。それはまた違った方法を用いた揺さぶりを仕掛けていたからだ。

それが③つ目のIHのサイドへ流れるアクションだ。

左IHに入ったベルナルドは後方がボールを持つて、グヴァルディオルと左WGドクの間のスペースにサイドへ流れてボールを受けるアクションを見せる。ベルナルドのマークにつくカイセドについてくるのか?ついてこないのか?という具合で駆け引きしながら、サイドでボールを引き受けるシーンを作り出す。

このように構造的にはシティはチェルシーの[4-4-2]を剥がすような構図を[3-2-2-3]の陣形で作り出すことはできていた。しかしそんな構造的な優位性をシティが最大限に活かしたとは言えなかった。その要因はチェルシーの連動した連続したプレッシングはもちろんだが、シティの選手たちの共通意識のズレが原因でもあった。

同じ絵を描けなかった?

ここで挙げた3つの崩し、せーのでピッチの選手たちが同じ選択。同じ絵を描けなければ効果は半減してしまう。もしくは機能不全に陥ってしまうこともあるだろう。

ボールサイドは①を意識したボール運びをしているのに、逆サイドの選手は③を思い描いている!みたいなシーンが前半は多く見受けられた。

ルベンが右サイドでロドリへのパスコースを探っている時のアカンジやその奥のベルナルドがもっとボールサイドに関わればフリーでパス受けられそう!それに食いつくことで幅をとるドクやフォーデンがもっとフリーになる!

あと1人足りない!もう一つの連動性が足りない!そこを解消できればもっとこの構造を活かした崩しが見られたのかなと。その為に何が足りなかったのか?その一つが共通認識を揃えること。同じ絵を描けていたか?だったんじゃないのかなと私の考察でした。

▪️チェルシーの狙いはWG背後

次はシティのボール非保持(プレッシング)に対してチェルシーがどうプレス回避していったのかの話に移りたいと思う。

シティはチェルシーが自陣でボールを保持するとマンツーマン気味にハイプレスを仕掛けた。

チェルシーはこのシティのハイプレスに対して2つの狙いを持っていた。1つ目がフォーデンとドクのWGの後ろのスペースを利用した前進だ。

チェルシーの左SBに入ったククレジャはボール保持の際にやや内側に立つポジションと、ワイドの高い位置に上がる立ち位置を使い分けていた。

ククレジャは状況に応じてその2つの立ち位置を使い分けた。そしてそんなククレジャのアクションで開くスペースが生まれる。それがチェルシーの左サイドの深い位置だ。それがシティの右WGフォーデンの背後のスペースということになる。

その開いたエリアにCHのエンソ・フェルナンデスやトップ下のギャラガーが列を降りてボールをピックアップ。シティはマンマークでプレスに出たという話を先ほどしたはず。なのでそんな列を降りるエンソやギャラガーにはマークが付いているはずだがそこが駆け引き。

エンソのマーカーはCHロドリ。ギャラガーのマーカーはCBのルベン。シティがプレス時に1番中央に置いておきたい2選手である。その2人をチェルシーの深い位置まで移動させるのか?着いていってあ中央のスペース開いちゃうよ?という駆け引きをしながらエンソとギャラガーがサイド深くに落ちてボールをピックアップ。

特にエンソ・フェルナンデスは僅かなスペースと時間が有れば悠々相手のプレスを交わす達人。この試合でも何度もシティのハイプレスの足を止めて、交わして、シティの自陣に入る扉をこじ開けてみせた。

チェルシーの逆サイドである右サイドからは、右SBのリース・ジェームズが中央のポジションまで入って、シティの左WGドクの右手でボールを受けてプレスを交わす糸口になるシーンも。

右SBのジェームズが高い位置に上がれば右サイドでコンビを組むパーマーが中に入る連動性。ジェームズもしくはパーマーがチェルシーの4人目の中盤となり、シティのハイプレスのズレを少しづつ作っていった。

そしてチェルシーのもう一つのシティのハイプレスを交わす術が、前線の数的同数を生かした後方からのロングボールだった。

マンツーマンとなれば当然あらゆる局面で数的同数が発生する。チェルシーの最前線も当然ながら数的同数に。そこへ目掛けてGKサンチェスから長いボールが送り込まれる。

チェルシーの2点目はそんなロングボールのこぼれ球をいち早く回収して繋がったゴールだった。

▪️シティのBuild-up修正

前半シティがハーランドのPKで先制するもすぐさまチェルシーが試合をひっくり返す。チェルシーの1点リードでハーフタイムへ入ると思いきや、前半ロスタイムにシティがCKからのアカンジのヘディングで同点に。ポチェッティーノが激怒するシーンが映し出され前半は終了した。

後半に入るとペップは窮屈そうだったbuild-upに修正を加えた。

アカンジの偽CBをやめスタートポジションの左CBの位置に彼を留めてベースの[4-3-3]配置でボールを動かすように。チェルシーのプレスは前半と変わらずに[4-4-2]。

シティはボールを保持すると2CBとアンカーのロドリ、そしてGKのエデルソンを加えた菱形を形成しチェルシーの2トップのプレスに迷いを与えていった。2トップが前に出ればアンカーロドリがフリーに。

そこを抑えにチェルシーの2CHが前に出ればIHのベルナルドとアルバレスが列を降りてボールをピックアップ。前半よりもチェルシーのプレスを再現性高く剥がせるシーンが増えていった。

そして後半早々シティが再びリードを奪った。スコアを3-2とこの試合2度目のリードを奪ったシティだったが…

▪️おわり

終わってみれば後半も両チーム前半同様に2得点を奪い合い、最終スコアは4-4のドローで終わったこのビックマッチ。見ているサッカーファンからすれば8ゴールも見れて非常に見応えのあるエキサイティングなゲームとなった。

ペップも試合後「プレミアリーグのいい宣伝になるようなゲームだったね」というコメントを残した。

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この試合は最後まで非常にスピーディーな展開が続いた。それはチェルシーにとっては理想的な形だったかもしれない。反対にペップ・シティからすればらしくなかったとも言える展開だった。

トランジションの局面が多く。カウンター場面もいつも以上に多かった。こういったスピーディーな展開があまり好きではないはずのペップ・グアルディオラだが、この試合はスピードをダウンさせることはなかった。

3回のリードを守れず最終的には勝点1を分け合う形に。いつものペップ・シティだったら、リードを奪い試合終盤になればその攻撃スピードを緩めに緩めて、ボールの保持率を高めて試合をクローズさせるのが彼らのやり方のはずだが、この試合は最後まで殴り合う形をとった。

この試合に負けても首位の座が変わらないことを踏まえてなのか。そんなスピーディーな展開をあえて受け入れて集めたかった材料があったのか?ペップの実験タイム?そんなことも妄想させるようなこの試合のペップ・シティのゲーム展開だった。

そんな中での収穫を挙げるとすればこういうトランジション合戦。スピーディーな展開になると大いに輝きを放ったフォーデンは大きな収穫だったのは間違いないはずだ。そしてグリーリッシュの存在の大きさも感じた。

それにしても本当に面白い殴り合いの試合を見せてくれた両チームに大きな拍手を送りたい。そんな最高の90分だった。

代表ウィークを開けてシティの次節は宿敵リヴァプール。これまたビックビックマッチ。ホームで迎えるリヴァプール戦。またこの試合のように世界最高峰の90分を我々サッカーファンに見せてくれるはずだ。楽しみすぎるね。


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