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生命縦断。料理人の写真展、始まる。

Sep.13 2019

日々の台所で、動物であれ植物であれ、食材の絶たれる命について常に意識する人は、あまりいないかもしれない。わたしなら、蜆や浅蜊を調理するときくらいだ(なぜなら目に見えて生きているとわかるものを自らの手で死なせてしまうから)。

お客として訪れるレストランのテーブルでは、一皿一皿に感心し、五感を愉しませるばかりで、料理のつくり手や食材の生産者に感謝することはあっても、犠牲となった命の恩恵ついて考えを巡らせることは稀だ。

レストランの厨房はわたしの小さな台所とは異なり、肉も魚もよりいっそう、生前の形状を留めている。料理人は日々、生死の現実と向き合うことだろう。

ESqUISSEのエグゼクティブシェフ、Lionel Beccat(リオネル・ベカ)さんの写真展「TRANSVERSALITÉ(生命縦断)」が大正大学のESPACE KUU 空で始まった。

フランス語の’Bon appetit!’や英語の’Enjoy’とは異なる「いただきます」という言葉が日本語にはある。日本人が一日に平均3回、一生を通して多用する言葉のひとつだ。それはつくり手に対してばかりでなく、生命の恩恵に感謝する心をも表す。

敬意と追悼を宿したシェフのまなざしは、ファインダー越しの食材に、向けられている。
「いただきます」の言葉に感銘を受けたという彼は、その気持ちを写真に焼き付ける。

会場ではカラーとモノクロの写真が並んで展示されている。カラーは現実を、モノクロは心象風景を表すという。活気のある厨房でとらえられた一瞬の静けさ、厳かに横たわる死。それはやがて美しい一皿へ、新しい命の糧に昇華される。

TRANSVERSALITÉ
生命縦断

Lionel Beccat リオネル・ベカ

会期: 2019年9月13日(金)~ 12月22日(日)
開場時間: 10:00 - 19:00
会場: ESPACE KUU 空 (エスパス空)
大正大学5号館1階
東京都豊島区西巣鴨 3-20-1
入場料: 無料




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東京生まれ。ライター、ブレッドジャーナリスト。伝統文化、職人仕事に興味があります。きものと本と犬好き。著書に『月の本棚』(書肆梓)、『BAKERS おいしいパンの向こう側』(実業之日本社)、『日々のパン手帖パンを愉しむsomething good』(メディアファクトリー)他。
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