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AI業界におけるコンパウンド型の新規事業開発 〜業務提携から1年で数億規模のサービスを立ち上げた裏側を公開!〜

初めまして、FastLabel BizDevの塚本です!

FastLabelは、機械学習に欠かせない教師データの作成およびAIデータプラットフォームを提供しています。

昨今、ChatGPTなどの生成AIが取り沙汰されていますが、私たちは“AIインフラを創造し、日本を再び「世界レベル」へ”をパーパスに掲げ、AI企業向けの事業推進を行っています。

今回は、そんなFastLabelにおける事業開発の裏側について公開いたします!(本noteはBizDevチームの共著になります。)

この記事は BtoB事業開発アドカレ 11日目の記事です。前回は ワンメディア株式会社 取締役 余頃さん(@sakiyogoro)による「良いKPIを作るための7つのルール|#BtoB事業開発アドカレ」でした。

この記事でお伝えするのは、当社が1年前に発表した、アマナイメージズ様との共創による機械学習用のデータセット事業の新規立ち上げの裏側です。

まずは、この新規事業の企画〜業務提携の推進を担っていた藤原(FastLabel事業開発責任者)からお届けします!


事業開発の考え方と進め方

FastLabelの藤原と申します!本記事を読んで頂きありがとうございます。

私からは、アマナイメージズ様との取り組みに至るまでの、BizDevの動きについてお話ししたいと思います。


まず初めに、BizDevとして大切にしているのは「顧客生涯価値(LTV)を“非線形”に高める」ことです。

当社はSaaSプロダクトとBPOサービスを提供しており、LTV最大化に向けて要素分解(平均顧客単価、収益率、購買頻度、継続期間)を行い、Salesサイドにて施策立案と実行を行っています。

スタートアップ、とりわけAI業界はトレンドの移り変わりが激しいこともあり、当社では単一プロダクト及びサービスではカバーし切れない領域に対して戦略的に事業開発を進めています。


では、どのように事業を開発すべきか。

昨今のAI領域において、あらゆる事業開発の可能性があることは、みなさまのご想像に難くないことかと思います(例えば、業界特化のChatbotをGPT活用して制作するなど)。

ただし、一個人としてはあれもできる!これもできる!と思い至るものの、私たちBizDevチームはFastLabel社としての事業を考えなければなりません。
当たり前ですが、立ち返るべきは“経営理念”と“経営戦略”だと考えています。


当社は“AIインフラを創造し、日本を再び「世界レベル」へ”を経営理念として掲げ、アノテーション事業を軸としてスタートし、BPOサービスとプロダクト提供の両輪で事業を進めてきました。

コンパウンドスタートアップが注目されていますが、振り返れば当社も、2021年の正式サービス以降、コンパウンド戦略に近しい考えで事業展開をしています。当社の場合、純粋なプロダクトだけではなくBPOサービスを含めているためトリッキーではありますが。

事業開発方針(社外公開するために情報をかなり削ぎ落としております)


コンパウンド戦略においてBizDevとして重要になるのは、市場、ひいてはお客様(=事業領域)をどのように定めるかだと考えています。

業務領域で切るのか、業界で切るのか、バリューチェーンで切るのか。さまざまなアプローチがあるかと思います。


当社の場合、

  • AIインフラの創造を目指しており、ホリゾンタルな事業の優先度が高い

  • AI開発の「データ」領域を主軸としている

という観点から、AI開発のバリューチェーンを整理することにしました。


新規事業の蓋然性を高めるために、以下3点を意識しています。

  • お客様の本当の課題解決に繋がるかどうか

  • 外部環境からの圧力(法規制など)やトレンドが存在するかどうか

  • 引き合い、もしくは近しい案件が過去に発生し、競合が存在するかどうか

細かい分析内容は示すことができないので割愛しますが、市場規模分析・競合分析やお客様へのヒアリングを経て、既存事業の上流工程である「データ収集」と「データ準備」の領域での事業開発を進めることとなりました。


事業を開発する道のり

企画した事業を開発するのはとても地道で、近道はほとんどないと考えています。

事業開発をするには、大きく以下3つのアプローチがあると思います。

①自社リソースで立ち上げる
②パートナー企業と提携して立ち上げる
③当該事業を行う企業をM&Aする

当時のFastLabelはシリーズAのスタートアップであり、「データ収集」と「データ準備」領域で事業を立ち上げるには、②パートナー企業と提携して立ち上げるしか道は残されていませんでした。


では、どのようにパートナー企業を見つけたのか。

草の根活動をした、というほかないと思っています!当社のケイパビリティを棚卸しし、当社が有していないリソース、アセット、コネクションなどを持つ企業をリストアップし、アウトバウンドでメールを送ったり、ネットワーキングイベントに出たりしました。

今回、アマナイメージズ様と業務提携を結ばせて頂きましたが、アマナイメージズ様と出会ったきっかけは、KDDI♾️ラボさんでの名刺交換でした。(KDDI♾️ラボさん、いつも貴重な機会を設けて頂きありがとうございます!)

名刺交換の後、御提案機会を設けて頂き、協業スコープ、レベニューシェア、知的財産など、さまざまな論点について、週次ベースで膝を突き合わせてディスカッションをしました。

当初の提案資料の抜粋
実際の提供サービス画面

最終的には、初回討議から約3ヶ月で業務提携の締結まで至りました。

2022/7 協業討議開始
2022/7-9 協業枠組み整理、テストマーケティング、実案件対応
2023/10 法務手続き、業務提携締結


1→10のGTM戦略・仕組みづくり

締結以降の1→10(GTM戦略・仕組みづくり)は、管掌の塚本で整理します。

ざっくり以下1年間のスケジュールで事業開発を推進し、数億規模の事業へと成長させていきました。

2022/10 業務提携発表(アマナイメージズ × FastLabel)
2022/11 機械学習用データ購入・収集プラットフォーム正式リリース
2023/01 Primary Customer(1番最初の顧客)の獲得
2023/02 初商品企画・プロモーション(感情音声データセット)
 〜 販売推進(1名体制)
2023/07 事業部設立(BizDev→AI Data Generation部門)
 〜 販売推進(3名体制)
2023/08   商品企画・プロモーション加速(日本人人物データセット)
2023/11 組織・役割移管

2022/11にサービスをリリースしてから、Primary Customer(1番最初の顧客)の獲得を最優先に活動を行っていました。「新規事業の実践論」でもその重要性に触れられています。

・Primary Customerは、まさにイノベーター中のイノベーター
・その事業が立ち上がりにいった後の世界において「伝説的なクライアント」として語られる、その事業の歴史に名が残る、何ものにも代えがたい存在
・2nd CustomersはPrimary Customerの存在を見て反応し、購入に至る

新規事業の実践論 (NewsPicksパブリッシング)

今回の新規事業(データセット)は既存事業(アノテーション)との親和性が高く、顧客基盤やコネクションを活用したサービスの磨き込み・仮説検証が可能であったため、比較的スムーズに立ち上げることができたと思います。

Primary Customerからは提供したサービスに感じる価値として「権利クリア・納品スピード・データ品質」とFBを頂き、そのコンセプトを背骨として以降の商品企画・サービス設計へ反映させていくこととなりました。


マーケティングの世界では4Pというフレームワークがありますが、新規事業としてリリースした直後に考慮すべきは3Pだと言われています。

<一般的なマーケティングの4P>
 ・Product(製品)
 ・Price(価格)
 ・Place(流通チャネル)
 ・Promotion(宣伝)

<リリース直後にやるべき3P>
 ・Product(製品)
 ・Price(価格)
 ・Primary Customer Success(一番最初の顧客の成功)

新規事業の実践論 (NewsPicksパブリッシング)

そのため、サービスのリリース直後にマーケティングはしてはいけない、向き合うべきは最初の顧客の成功である、という考えで当初2〜3ヶ月は活動をし、2023年1月にPrimary Customerを獲得することができました。


並行して、顧客ニーズをもとに2023年2月頃から商品企画・プロモーションを行い、新規顧客の獲得にも注力し始め、多くの引き合いや複数の受注実績を積み上げ始めていきました。

それにより、約半年間で、既存事業と比較して無視できない程度の売上規模・成長率(数1000万円規模)となり、2023年7月にはAI Data Generation部門としてBizDev組織から切り出し事業部化するまでに。部門としても3名規模となり、より推進力を持つことになりました(実際はBizDevと兼務する形ですが…)。

営業活動が1名から複数名になったことで、それまで相当に属人的な状況であったことを実感し、オペレーションを整備していきました(とはいえ事業の特性上、一般的なセールスではなく、サービス企画・アセット開発の役割も含む事業開発セールスであるべきなので、ある程度は仕方なかったかなとも振り返ります)。


その後、推進システム構築、パートナー戦略、ターゲットリスト、セールスマテリアル(事例資料)、見積フォーマット等の整備を行っていくと同時に、アセット開発・プロモーション計画に則った営業活動を加速していきました。

このフェーズでは、2nd Customers以降へ販売が広がることで、セールスで語れる事例や顧客のバリエーションが増えてきた実感があります。現在、パートナー様・開発組織・ビジネス組織の多大な支援のもと、データセット事業は1年間で数億規模の売上を創出し、FastLabelに大きく貢献できる事業にまで成長しました。


まとめ

以上、「AI業界におけるコンパウンド型の新規事業開発」でした。

FastLabelは、AI業界という変化が大きい領域で事業展開をしているため、難易度が高いもののその分やり甲斐のある仕事であると感じています。


BizDevの取り組みは中々オープンにしづらいこともあるため、同業種の繋がりを大切に情報交換をしていきたいと考えています。

その他オープンイノベーションや採用などにも注力しているのでまずはざっくばらんにXへ連絡をいただけると幸いです!(藤原:@fujipoyoooo、塚本:@tkmtknicr

左:藤原、右:塚本

乱文で恐縮ですが、noteをお読みいただきありがとうございました!

Special Thanks:
アマナイメージズ 望月様、記事公開にあたって内容確認を頂きありがとうございました!

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