第六章 忠誠

ムーア視点

大臣たちを評議会会場、地下政治犯収容所に連れて行った後、(ゴォォォ!)という評議会全体を震わすような振動が体に伝わる。

(ついに始まったか。)

歩みを早め、地上に向かう時に丁度、2発の銃声が耳に入った。

足早に階段に駆け上がり、会見台が一望出来る窓に駆け寄る。悲鳴を上げながら、蜘蛛の子を散らすように逃げ回る記者たち。

そしてレッドカーテンから姿を現すノーヴェス。

まだ回っているカメラを拾い上げ、会見台の方に向け、自ら会見台に登り、誰もいない報道陣に、いや、カメラ越しの聴衆に向かって演説を始める。

ムーアはそんな彼女を見ながら彼女の経歴を思い出す。

ミリヤ.ノーヴェス。
年齢25歳。

国家安全最高軍事司令官というにしては若すぎる年齢だ。

出生時は連合結成前でもあり、地方的には連合南部、最も貧富のが激しく、身分制度が色濃く残る地方で産まれた。

彼女が、どの位の地位だったのか、どんな幼少期を過ごしたのか、

彼女は自らの過去を多く語ろうとはしない。

だが、産まれながらにして白髪、そして女性。さぞかし苦労したに違いない。

そして、彼女が15歳の時に転機が訪れる。

”元”書記長が東西南北バラバラだった諸国をまとめ上げ、グルント連合建国を宣言。男女関係無く実力主義にし、軍隊入隊年齢を20歳から18歳に引き下げ。強い国を作ろうとした。
話を彼女に戻そう。

18歳で軍に入隊、わずか2年で上級将校になり、当時の大元帥からの強い推薦により、わずか20歳で国家安全最高軍事司令官補佐へ。

当時、中央諜報局のいわば捨て駒だった私に、彼女から
中央諜報局最高統率官に推薦する代わりに
”当時の国家安全最高軍事司令官を失脚させるように”
と持ち掛けてきた。

何故、当時捨て駒の私に接触してきたのかは分からない。だが、私はこの提案に乗り、彼女は国家安全最高軍事司令官に。私は中央諜報局最高統率官になったのだ。

彼女が居なければ、今の私は居ない。

私は彼女に付いていかなければならない。

それが、私なりの彼女に対する恩返しであり、忠誠なのだ。

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